自律神経失調症(めまい・吐き気)への鍼灸症例
自律神経失調症(めまい・吐き気)への鍼灸治療
自律神経の乱れからのめまい、吐き気といった症状に悩まされる方は少なくありません。
とくに女性は、仕事や家庭、育児など、様々な要因から心身に負担を抱えやすく、これらの症状が現れやすい傾向にあります。
今回は、長年めまいと吐き気に苦しんでいた40代女性の症例です。
鍼灸治療を通して症状が改善しただけでなく、心身ともに健康を取り戻した過程をご報告いたします。
この記事を通して、鍼灸治療の可能性と、当院が患者様一人ひとりに寄り添う姿勢を感じていただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
40代女性。
鍼灸院に来るまでの経緯:
3年前から春(2~3月)になると、めまいと吐き気の症状が現れるようになり、その度に辛い思いをされていました。
しかし、今年は2月から症状が治まることなく、来院までの10ヶ月間、常に不快な症状に悩まされていたとのことでした。
患者様は立ち仕事をされており、疲れると症状が悪化する傾向がありました。
とくに、首から頭にかけてギューッと締め付けられるような感覚とともに、めまいがひどくなるとのことでした。
睡眠など休息をとると一時的に症状は軽減するものの、根本的な解決には至っていませんでした。
これまでに耳鼻科を受診し、「自律神経の乱れ」と診断を受け、漢方薬を処方されていましたが、効果はあまり感じられなかったそうです。
藁にも縋る思いで、鍼灸治療に希望を託し、当院へ来院されました。
問診の中で、お子様の教育についてご夫婦間で意見が合わないことがストレスになっていることを打ち明けてくださいました。
長引く体調不良に加え、家庭内の悩みも抱え、心身ともに疲弊している様子が伺えました。
東洋医学的考察
東洋医学では、心身の不調は「気・血・水(き・けつ・すい)」のバランスの乱れによって引き起こされると考えます。
今回の患者様の症状を東洋医学的に考察すると、疲労とストレスが根本的な原因であることが見えてきました。
まず、「気」の不足、つまり「気虚(ききょ)」の状態が見られました。
これは、疲労やストレスによってエネルギーが不足し、身体の機能が低下している状態です。
めまいは、清陽(せいやん)と呼ばれる澄んだ気が頭部に十分に上がらないことで起こると考えます。
患者様の場合、疲労とストレスによって気が消耗し、頭部への気の巡りが悪くなっていたと考えられます。
また、「気滞(きたい)」の状態も見られました。
これは、気の流れが滞っている状態です。
ストレスや緊張によって気の巡りが悪くなり、首や肩のコリ、頭の締め付け感といった症状が現れます。
患者様の「首から頭がギューッと締め付けられる」という訴えは、まさに気滞の典型的な症状と言えるでしょう。
さらに、問診で伺ったストレスの内容から、「肝(かん)」の機能低下も考慮する必要がありました。
東洋医学では、肝は精神的な活動や感情のコントロールを司ると考えます。
ストレスによって肝の機能が低下すると、気の巡りが悪くなり、様々な不調を引き起こします。
これらのことから、患者様の症状は、疲労とストレスによる気虚と気滞、そして肝の機能低下が複合的に影響して引き起こされていると判断しました。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
気血の補給:
気虚を改善するために、気血を補う治療を行います。
これにより、身体全体のエネルギーを高め、めまいの根本原因にアプローチします。
気滞の解消:
首や肩のコリをほぐし、気の巡りを改善します。
これにより、頭の締め付け感やめまいを緩和します。
肝の機能調整:
ストレスによる肝の機能低下を改善し、精神的な安定を促します。
心身のリラックス:
鍼灸治療を通して心身のリラックスを促し、自律神経のバランスを整えます。
これらの治療方針に基づき、鍼灸治療と温灸、ホットパックなどを組み合わせて施術を行いました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「期門」「合谷」「内関」「陽陵泉」「頭のブヨブヨする部分」に置鍼、「中脘」に棒温灸をしました。
足先にホットパックを施しました。
うつ伏せで、「風池」「天柱」「心兪」「肝兪」「肩コリの局所穴」に鍼と円皮鍼を使用しました。
2回目(1週間後):
この1週間、めまいの調子が少し良いとのことでした。
ただし、お正月休みで仕事がなかった影響もあるかもしれないとのことでした。
前回と同様の施術を行いました。
3・4回目(1週間に1回ペース):
仕事を再開してもめまいは起こらず、調子が良いとのことでした。
前回と同様の施術を行いました。
5回目(2週間後):
調子が良いため、治療間隔を2週間に延ばしました。
仕事の疲れはあるものの、めまいなどの症状は出ていないとのことでした。
同様の施術を行いました。
3回目の施術後には、ほとんどめまいは消失していました。
その後も、間隔をあけながら治療を継続することで、より効果を高めることができました。
使用した主なツボとその代表的な効果
期門(きもん):
肝の機能を調整し、気の巡りを改善する効果があります。
合谷(ごうこく):
全身の気の巡りを整え、鎮痛作用があります。
内関(ないかん):
胸部の不快感や吐き気を緩和する効果があります。
陽陵泉(ようりょうせん):
肝胆の機能を調整し、筋肉の緊張を緩和する効果があります。
中脘(ちゅうかん):
胃腸の機能を整え、消化不良や吐き気を改善する効果があります。
風池(ふうち):
首や肩のコリ、頭痛、めまいなどに効果があります。
天柱(てんちゅう):
首や肩のコリ、頭痛、眼精疲労などに効果があります。
心兪(しんゆ):
精神的な安定を促し、動悸や不眠などに効果があります。
肝兪(かんゆ):
肝の機能を調整し、イライラや目の疲れなどに効果があります。
これらのツボを組み合わせて使用することで、患者様の症状に合わせた効果的な治療を行うことができました。
まとめ
今回の症例を通して、鍼灸治療が自律神経失調症のめまい・吐き気といった症状に有効であることが改めて示されました。
当院では、患者様一人ひとりの症状や体質、生活習慣などを丁寧に問診し、東洋医学に基づいた適切な治療を提供しています。
今回の患者様の場合、疲労とストレスが根本原因であったため、心身のリラックスを促すとともに、ストレスの原因となっていたご家庭の問題についてもじっくりとお話を伺うように努めまし
た。鍼灸治療だけでなく、患者様の心のケアも大切にすることで、より良い治療効果に繋がると考えています。
当院では、症状が改善した後も、間隔をあけながら治療を継続することをお勧めしています。
これにより、症状の再発を防ぎ、より健康な状態を維持することができます。
もし、あなたが長年のめまいや吐き気といった自律神経失調症の症状でお悩みでしたら、ぜひ一度当院にご相談ください。
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