【コロナ後遺症の鍼灸症例】倦怠感と腰痛に悩んだ50代男性の改善経過
長引くコロナ後遺症(倦怠感・腰痛)に対する鍼灸治療|50代男性の症例

※本記事は国家資格(はり師・きゅう師)を保有する院長が執筆しています。
※当院の実際の症例に基づきますが、患者様のプライバシー保護のため、個人が特定されないよう一部情報を変更して記載しております。
※効果には個人差があります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症では、倦怠感や息切れ、集中力の低下(ブレインフォグ)、痛みなどの症状が長期間続くことがあります。
症状が長引くことで、仕事や家事、日常生活に大きな支障を感じている方も少なくありません。
今回ご紹介するのは、新型コロナ感染後から続く強い倦怠感と腰痛、ブレインフォグに悩まされていた50代男性の症例です。
医療機関での治療や休養によって一定の改善はみられたものの、症状が残存し、さらなる改善を求めて当院へ来院されました。
当院では、コロナ後遺症による症状を単一の症状として捉えるのではなく、疲労や睡眠、冷え、ストレスなど全身の状態を東洋医学的に評価し、一人ひとりに合わせた鍼灸治療を行っています。
この記事では、初診時の状態、東洋医学的な考え方、治療方針、実際の施術経過について、実際の症例をもとにご紹介します。
コロナ後遺症による倦怠感や痛みでお悩みの方の参考になれば幸いです。
患者さまの情報と経緯
年齢性別・お住まい:
50代 男性・松戸市在住
主訴:
コロナ後遺症(倦怠感、腰痛、ブレインフォグ)
既往歴:
不眠症、緑内障
生活背景:
仕事の疲労とストレスが多い
鍼灸院に来るまでの経緯:
患者さまは6ヶ月前に新型コロナウイルスに感染。
喉の痛み、発熱、倦怠感などの症状が出現し、約10日間で症状は一旦改善しました。
しかし、その後も倦怠感が残り、背中から腰にかけての痛みが徐々に強まってきました。
その倦怠感と痛みは日常生活に支障をきたすほどになり、3ヶ月間の休職を余儀なくされました。
その後、コロナ後遺症を専門に診察するクリニックを受診し、週1回のペースでBスポット療法を受け始めました(鍼灸院に来た時には5回受けていた)。
休職による休息とBスポット療法の効果もあり、起き上がれないほどの倦怠感や痛みは軽減したものの、背中から腰にかけての痛みは依然として残っていました。
そこで、鍼灸治療を併用することで更なる改善を期待し、当院を受診されました。
問診などから上記の症状に加え、足先や腰の冷え、ストレスも自覚されており、全体的に心身の疲労が蓄積している状態でした。
この人を東洋医学ではどうみるか?
東洋医学では、病気は身体のエネルギーである「気(き)」、血液である「血(けつ)」、体液である「すい(すい)」のバランスの乱れによって引き起こされると考えます。
今回の患者さまの場合、コロナ感染によって「気」が著しく消耗している状態、とくに「肺(はい)」と「腎(じん)」の気の虚弱が顕著でした。
【肺とは】
呼吸を司り、全身に気を巡らせる役割を持つ。
肺の気が不足すると、倦怠感、息切れ、免疫力低下などが起こりやすくなります。
【腎とは】
生命の根本的なエネルギーを蓄える場所。
腎の気が不足すると、腰痛、足腰の冷え、不眠、疲労感などが現れやすくなります。
また、長引く痛みや倦怠感は、血の巡りの停滞(瘀血(おけつ))を引き起こし、症状を慢性化させる要因となります。
今回の患者さまは、長期間のストレスや疲労に加え、コロナ感染という大きな負担が加わったことで、これらのバランスが大きく崩れてしまったと考えられます。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
補気(ほき):
とくに肺と腎の気を補い、全身のエネルギーレベルを高める。
活血(かっけつ):
気血の巡りを改善し、痛みを緩和する。
温経散寒(おんけいさんかん):
身体を温め、冷えによる症状を改善する。
精神安定:
ストレスを緩和し、心身のリラックスを促す。
これらの治療方針に基づき、鍼とお灸を組み合わせて施術を行いました。
治療内容と実際の経過
1回目:
「関元」「中脘」に棒温灸。
「合谷」「足三里」「太谿」に浅く置鍼。
腹部(「関元」「中脘」「天枢」)にお灸。
「膏肓」「肺兪」「心兪」「脾兪」に浅く置鍼。
「腰の痛む局所」にお灸。
「筋縮」「命門」に棒温灸。
初診時は、全身の気の虚弱が目立ちました。
施術後、体が温まり、少し楽になったとのことでした。
2回目(1週間後):
休職を終え、仕事に復帰されたため、1週間分の疲れが溜まっていました。
腰の痛みは若干改善が見られました。
前回に準じた施術に加え、首肩の凝りに対してお灸を追加しました。
3~5回目:
週1回のペースで施術を継続。
腰の痛みは仕事の状況によって変動するものの、全体的に改善傾向にありました。
3ヶ月後:
腰の痛みをほとんど訴えなくなり、仕事も以前と比べてスムーズにこなせるようになったと喜んでおられました。
以前の体とは全く違うと実感されており、鍼灸治療の継続を希望されました。
5ヶ月後:
状態が安定してきたため、施術間隔を2週間に1回に変更。
現在も良好な状態を維持されています。
治療期間中、腰痛だけでなく、不眠やストレスといった症状も同時に改善していきました。
鍼灸師としての感想とまとめ
今回の症例では、コロナ後遺症による倦怠感や腰痛、ブレインフォグに対して、医療機関での治療と並行しながら鍼灸治療を行いました。
その結果、この症例では腰痛や疲労感が徐々に軽減し、仕事への復帰後も以前より体が動かしやすくなったとご本人が実感されるまで改善がみられました。
また、不眠やストレスの軽減にもつながり、日常生活の質の向上がみられました。
一方で、コロナ後遺症の症状や経過には個人差が大きく、現時点でもその原因や有効な治療法については十分に解明されていない部分があります。
そのため、この症例だけで鍼灸治療の効果を一般化することはできませんが、一つの症例として参考にしていただければ幸いです。
当院では、医療機関での診断や治療を尊重しながら、患者さまの体調や生活状況を丁寧に伺い、東洋医学的な視点から全身の状態を評価したうえで施術を行っています。
コロナ後遺症による倦怠感や痛み、睡眠の問題などが長引いてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

