自動車事故後の首肩コリと片頭痛が鍼灸治療で改善した症例
自動車事故後の首肩コリと片頭痛への鍼灸治療
現代社会において、首や肩のこりは多くの人々が経験する一般的な症状です。
とくに、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、運動不足などが原因で、慢性的なこりに悩まされている方は少なくありません。
さらに、交通事故などの外傷をきっかけに、元々あった症状が悪化したり、新たな不調が現れたりすることもあります。
今回は、自動車事故を契機に首肩コリと片頭痛が悪化した30代女性のケースです。
当院の鍼灸治療を通して症状が著しく改善し、現在も良好な状態を維持されています。
この記事を通して、鍼灸治療が慢性的な首肩コリや事故後の後遺症にどのように効果を発揮するのか、その可能性を感じていただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
30代女性
鍼灸院に来るまでの経緯:
以前から肩こりを感じていましたが、1年ほど前に自動車事故に遭い、首を負傷したことがきっかけで、首や肩のコリ、痛みが著しく悪化しました。
事故後、医療機関でレントゲンなどの画像検査を受けましたが、特に異常は見つからず、医師からはリハビリを勧められました。
しかし、半年間のリハビリ後も、痛みは事故前の状態から3割程度しか改善せず、医師からは「その辛さはストレスや肉体疲労からきているのでは…」と説明を受けたそうです。
患者さまは下向きの作業が多い仕事に従事しており、仕事が続くと首肩のコリや痛みが特に増悪する傾向がありました。
また、天候の変化(雨の日や季節の変わり目)や朝の寝起き時にも症状が悪化するため、日常生活に支障をきたしていました。
問診の中で、患者さまは肉体疲労を感じており、健康診断では貧血を指摘されていたこと、生理不順の症状も抱えていることが分かりました。
これらの情報から、体全体のバランスが崩れている可能性が示唆されました。
東洋医学的考察
東洋医学では、身体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素によって構成されていると考えます。
「気」は生命エネルギー、
「血」は血液とそれを運搬する機能、
「水」は血液以外の体液を指します。
これらの要素が体内をスムーズに巡ることで、身体は健康な状態を維持できます。
この患者さまの場合、事故による首の損傷に加え、もともとの肩こり、貧血、生理不順といった症状から、「気血両虚(きけつりょうきょ)」と「気滞血瘀(きたいけつお)」が生じていると考えました。
「気血両虚」とは、気や血が不足した状態を指し、疲れやすさや貧血、生理不順などの原因となります。
「気滞血瘀」とは、気や血の流れが滞った状態を指し、痛みやコリなどの原因となります。
今回のケースでは、事故による外傷が「気血の滞り」を直接的に引き起こし、もともとあった「気血の虚」を悪化させたと考えられます。
下向きの作業や天候の変化、寝起き時の症状悪化は、これらの状態をさらに助長する要因となっていたと言えるでしょう。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、当院では以下の治療方針を立てました。
気血の虚を補う:
貧血や生理不順といった根本的な原因に対処するため、気血を補うことを重視します。
気血の滞りを解消する:
首肩の局所的なコリや痛みを緩和するため、気血の流れを改善します。
全身のバランスを整える:
肝・脾・腎といった臓腑の機能を高め、体全体のバランスを整えることで、自然治癒力を引き出します。
これらの治療方針に基づき、鍼灸治療と必要に応じてパルス治療を組み合わせることで、患者さまの症状改善を目指しました。
治療経過
1回目:
初診時、患者さまは首肩の強いコリと頭痛を訴えていました。
仰向けで、「曲池」「後谿」「太衝」「太谿」に置鍼。「足三里」「三陰交」にせんねん灸。
うつ伏せで、「首肩のコリ局所」に単刺したのちにお灸+円皮鍼。「肝兪」「腎兪」に置鍼。
治療は、手足や背部のツボを中心に鍼灸を行い、首肩の局所には鍼とお灸、円皮鍼を施しました。
2回目の治療(2週間後):
肩こりは若干軽減したものの、まだ辛さが残るとのことでした。
そこで、前回と同様の治療を行いました。
3回目~10回目(週1回ペース):
2週間隔では効果が持続しにくいと判断し、1週間に1回のペースで治療を行うことにしました。
途中で軽作業の仕事を頑張りすぎたために腰痛を発症しましたが、この際は腰部の局所を入念に治療することで症状は改善しました。
11回目以降は、患者さまの希望もあり、2週間に1回のペースに間隔をあけ、治療継続しました。
この頃から、首肩の局所(腰痛が強い時は腰部)にパルス治療を併用するようにしました。
月2回の治療を続けることで、患者さまは「すごく辛い状態」になることなく、日常生活を送れるようになりました。
現在も治療を継続しており、良好な状態を維持しています。
使用した主なツボとその代表的な効果
この症例で使用した主なツボとその代表的な効果は以下の通りです。
曲池(きょくち):
肩や腕の痛みの緩和、解熱作用、皮膚疾患の改善などに効果があります。
後谿(こうけい):
首や肩、背中の痛み、眼精疲労、精神安定などに効果があります。
太衝(たいしょう):
精神的な緊張の緩和、肝機能の調整、血圧の安定などに効果があります。
太谿(たいけい):
腎機能の強化、冷え性の改善、足腰の痛みなどに効果があります。
足三里(あしさんり):
胃腸機能の調整、全身の倦怠感の改善、免疫力向上などに効果があります。
三陰交(さんいんこう):
婦人科疾患(生理不順、生理痛など)、消化器系の不調、冷え性などに効果があります。
肝兪(かんゆ):
肝機能の調整、眼精疲労、精神安定などに効果があります。
腎兪(じんゆ):
腎機能の強化、腰痛、冷え性などに効果があります。
これらのツボを組み合わせることで、気血の巡りを改善し、体全体のバランスを整える効果が期待できます。
まとめ
この症例を通して、鍼灸治療が自動車事故後の首肩コリや片頭痛の改善に有効であることが示されました。
とくに、東洋医学的な視点から体全体の状態を把握し、気血のバランスを整えることで、症状の根本的な改善を目指せる点が鍼灸治療の大きな特徴と言えるでしょう。
今回の患者さまは、仕事や家事に真面目に取り組む頑張り屋さんでした。
そのため、体に負担がかかりやすく、それがコリや痛みに繋がっていました。
定期的な鍼灸治療は、体に蓄積した疲労を解消し、心身のリフレッシュに役立っているようです。
慢性的な肩こりは、数回の治療で劇的に改善するものではありません。
しかし、治療を重ねるごとに少しずつ改善していくことを繰り返すことで、確実に良い方向へ向かいます。
当院では、患者さま一人ひとりの状態に合わせて最適な治療計画を立て、丁寧に施術を行っています。
もしあなたが長引く首肩の不調でお悩みなら、ぜひ一度当院にご相談ください。
きっとお力になれると信じております。
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