緊張するとお腹が張る過敏性腸症候群の鍼灸症例

過敏性腸症候群への鍼灸治療

過敏性腸症候群

現代社会において、ストレスは避けて通れない課題の一つです。
とくに、過敏性腸症候群(IBS)や不眠といった症状は、ストレスと密接に関係しており、多くの人々を悩ませています。

今回ご紹介する症例は、長年過敏性腸症候群と不眠に苦しんでいた20代男性の鍼灸治療の経過です

当院では、東洋医学に基づいた丁寧な問診と施術を通して、患者様の心身のバランスを整え、症状の改善をサポートしています。
この記事を通して、鍼灸治療が心身の不調にどのように作用するのか、その可能性を感じていただければ幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
20代男性

鍼灸院に来るまでの経緯:
高校1年生の頃から約15年間、緊張するとお腹が張り、ガスが出る(あるいはそう感じる)という症状に悩まされていました。

大人になり、ある程度やり過ごす方法を身につけたものの、症状自体はほとんど変わらず、日常生活を送る上では支障はないものの、人混みや人前に出ることを避け、常に周囲の目を気にしてしまう状態でした。

病院では「気のせい」「過敏性腸症候群」と診断され、10代の頃には心療内科で薬を処方されたものの、副作用が出たため以降は薬を服用していませんでした。

同時期から不眠にも悩んでおり、特に寝つきが悪く、夜なかなか眠りにつけない状態でした。

初診時の問診では、年齢的に体力はしっかりしており、寒熱のバランスは若干熱がこもる傾向にあるものの、日常生活に支障をきたすほどではありませんでした。

お腹の張りは客観的にも強く、首の凝りも顕著でした。

東洋医学的考察

東洋医学的な観点から心(しん)、肝(かん)、脾胃(ひい)の気滞(きたい)が認められました。
また、すぐに気鬱(きうつ)になる傾向も見受けられました。

東洋医学では、「心(しん)」は精神活動を司り、「肝(かん)」は自律神経や感情のコントロール、「脾胃(ひい)」は飲食物の消化吸収を担うと考えます。

この患者様の場合、緊張によって気の流れが滞り、とくに心、肝、脾胃の機能がうまく働かなくなっている状態でした。

気滞とは、気がスムーズに流れず滞っている状態を指し、様々な不調を引き起こします。
お腹の張りやガスの症状は、胃の気の流れが滞ることで引き起こされ、不眠は心の気の流れが滞ることで精神が不安定になることが原因と考えられます。

また、気鬱は気の流れが滞り、精神的な落ち込みや憂鬱感を引き起こす状態です。

この患者様は、これらの気の滞りが複合的に影響し、過敏性腸症候群と不眠という症状を引き起こしていると判断しました。

治療方針

治療にあたっては、まず気の流れをスムーズにし、心身のバランスを整えることを目標としました。

とくに、心、肝、脾胃の気の流れを改善し、気鬱の状態を緩和することに重点を置きました。
年齢的に体力はしっかりしているため、積極的に気の巡りを促す治療を行う方針としました。

治療経過

1回目;
仰向けで、「期門(きもん)」「天枢(てんすう)」「内関(ないかん)」「陽陵泉(ようりょうせん)」「太衝(たいしょう)」といったツボに浅めの鍼を施しました。
うつ伏せで、「風池(ふうち)」「肩井(けんせい)」「心兪(しんゆ)」「肝兪(かんゆ)」「脾兪(ひゆ)」には鍼と円皮鍼を使用しました。

2回目の施術(1週間後):
前回の施術では緊張によるお腹の張りなどの症状に大きな変化は見られませんでした。
そこで、1回目の施術に加えて、腹部への灸を追加しました。

3回目から20回目(週1回ペース):
仕事での緊張が強まるとどうしても症状が出現するものの、「少し楽な時もある」という変化が見られるようになりました。

不眠に関しては、寝つきは改善され、眠りの浅さを訴えるようになりました。

この期間は、1回目の施術に準じつつ、腹部への灸と耳ツボの施術を追加しました。

鍼灸治療を開始して5ヶ月が経過:
現在、お腹の症状は一進一退の状態ではありますが、不眠、とくに寝つきの悪さは明らかに改善されています。

使用した主なツボとその代表的な効果

期門(きもん):
肝の気の流れを整え、精神的な緊張を緩和する効果があります。

天枢(てんすう):
胃腸の働きを整え、腹部の張りや便通を改善する効果があります。

内関(ないかん):
精神的な安定をもたらし、吐き気や動悸を鎮める効果があります。

陽陵泉(ようりょうせん):
筋肉の緊張を緩和し、肩こりや首の凝りを改善する効果があります。

太衝(たいしょう):
肝の気を巡らせ、精神的なイライラや怒りを鎮める効果があります。

風池(ふうち):
首や肩の凝りを緩和し、頭痛や目の疲れを改善する効果があります。

肩井(けんせい):
肩こりや首の凝りを緩和する効果があります。

心兪(しんゆ):
心の働きを整え、精神的な安定をもたらす効果があります。

肝兪(かんゆ):
肝の働きを整え、自律神経のバランスを調整する効果があります。

脾兪(ひゆ):
胃腸の働きを整え、消化不良や食欲不振を改善する効果があります。

まとめ

この症例を通して、鍼灸治療が過敏性腸症候群や不眠といった症状の改善に一定程度有効であることが示唆されました

東洋医学的な視点から心身の状態を把握し、気の流れを整えることで、症状の根本的な改善を目指すことができるのが鍼灸治療の特徴です。

今回の患者様は、症状の改善が一進一退の状態ではありますが、不眠の改善という明確な効果を実感されています。
また、鍼灸施術を受けることが心の支えにもなっているとのことでした。
これは、鍼灸治療が単に身体の症状を改善するだけでなく、心のケアにも繋がることを示しています。

当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧な施術を心がけております。心身の不調でお悩みの方は、ぜひ一度当

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