自律神経失調症(大量の唾液・吐き気・ダルさ)の鍼灸症例|松戸市在住10代女性
自律神経失調症(唾液過多、吐き気)への鍼灸治療
近年、ストレス社会と言われる中で、自律神経の乱れに悩む方が増えています。
とくに若い世代では、原因不明の体調不良に苦しむケースも少なくありません。
今回、当院で経験した10代女性の自律神経失調症の症例をご紹介いたします。
この方は、大量の唾液、吐き気、強い倦怠感といった症状に悩まされ、医療機関での検査でも異常が見つからず、心療内科で処方された薬でも改善が見られなかったため、当院へ来院されました。
鍼灸治療を通して症状の改善が見られたこの症例を通して、当院の治療に対する考え方や効果についてご紹介し、同じような症状でお悩みの方々の一助となれば幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
10代女性・松戸市在住
鍼灸院に来るまでの経緯:
お悩みは「大量の唾液、吐き気、強い倦怠感」です。
3週間前から上記の症状が出現しました。
食事を摂ると気持ち悪くなり、食欲不振に陥っていました。
食事が摂れないため倦怠感が強まり、大量の唾液による喉の違和感も倦怠感を助長していました。
発症後1週間ほどで病院を受診し、血液検査、心電図、レントゲン、尿検査などを受けるも異常なしと診断されます。
その後、心療内科を紹介され抗うつ剤を処方されたが、2週間経過しても症状の改善が見られませんでした。
病院とは違ったアプローチを期待して、鍼灸治療を希望し、当院を受診しました。
冷え性、疲れやすい、不眠もあります。
この患者様は、検査で異常が見つからないこと、薬を服用しても改善が見られないことから、心身ともに大きな不安を抱えていました。
とくに、原因が分からないことへの不安は大きく、症状をさらに悪化させる要因となっていたと考えられます。
当院では、このような患者様の心身両面のケアを重視し、丁寧な問診と東洋医学的な診察を通して、根本原因を探ることを心がけています。
東洋医学的考察
東洋医学では、心身の不調は「気・血・水」のバランスの乱れによって引き起こされると考えます。
この患者様の場合、大量の唾液は「水」の代謝異常、吐き気や食欲不振は「脾胃」の機能低下、倦怠感は「気」の不足と捉えることができます。
また、冷え性や不眠といった症状から、「陽気」の不足も考えられました。
詳細な問診と腹診を行った結果、腹部の緊張が強く、とくに季肋部(肝臓のあたり)に圧痛が見られました。
このことから、「肝気鬱結(かんきうっけつ)」、すなわち肝の気の流れが滞っている状態が強く疑われました。
肝は自律神経系と深く関わっており、ストレスや精神的な緊張によって気の流れが滞ると、様々な不定愁訴が現れることがあります。
今回の症例では、この肝気鬱結が根本原因となり、脾胃の機能低下や水の代謝異常を引き起こし、様々な症状を複合的に引き起こしていると考えられました。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
肝気の疏泄(そせつ):
肝の気の流れをスムーズにし、自律神経のバランスを整える。
脾胃の調整:
脾胃の機能を高め、消化吸収を促進し、倦怠感を改善する。
水の代謝を改善:
余分な水分を排泄し、唾液過多を改善する。
心身のリラックス:
鍼灸治療を通して心身のリラックスを促し、精神的な緊張を緩和する。
鍼灸治療に対して不安があるとのことでしたので、細い鍼を使用し、刺激量を抑えた優しい治療を心がけました。
また、治療中や治療後には、患者様の状態を丁寧に確認し、安心して治療を受けていただけるように配慮しました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「不容」「内関」「太白」に浅く鍼しその後に円皮鍼を添付しました。「足三里」に台座灸を行いました。
うつ伏せで、「心兪」~「脾兪」の反応穴に浅く鍼をしてからお灸を行いました。
治療後、少し楽になったとのことでした。
2回目(4日後):
治療後、少し良い感じとのことでしたが、唾液の量はあまり変化がありませんでした。
前回と同様の治療を行いました。
3回目(5日後):
2、3日は調子が良かったものの、2日前から不眠のため症状が悪化したとのことでした。
腹部の散鍼を行い、季肋部に棒温灸、耳ツボ(神門、脾、胃、肝付近にマグレイン)、内関、足三里に台座灸、背部は前回と同様の治療を行いました。
4回目(3日後):
少し調子が良くなってきたとのことでした。前回と同様の治療を行いました。
5回目(4日後):
症状は一進一退を繰り返していましたが、最初の頃のツラさに比べると半分程度まで改善する日もあるとのことでした。
前回と同様の治療を行いました。
治療を重ねるごとに、症状の波はあるものの、全体的には改善傾向が見られました。
とくに、倦怠感の軽減や食欲の改善が見られるようになり、日常生活を送る上での支障も少なくなっていきました。
使用した主なツボとその代表的な効果
不容(ふよう):
胃の不調や消化不良、吐き気などに効果があります。
内関(ないかん):
胸部の不快感、吐き気、動悸、不眠などに効果があります。精神安定作用も期待できます。
太白(たいはく):
胃腸の機能低下、食欲不振、倦怠感などに効果があります。
足三里(あしさんり):
胃腸の働きを整え、全身の機能を高める効果があります。
心兪(しんゆ):
精神的な緊張や不安、動悸などに効果があります。
脾兪(ひゆ):
脾臓の機能を高め、消化吸収を促進する効果があります。
神門(しんもん):
精神安定作用があり、不眠やイライラなどに効果があります。
これらのツボを組み合わせることで、肝気の疏泄、脾胃の健運、水の代謝改善、心身のリラックスといった効果を複合的に引き出し、症状の改善に繋げました。
まとめ
今回の症例では、10代女性の自律神経失調症による唾液過多、吐き気、倦怠感に対し、東洋医学的な診察に基づいた鍼灸治療を行うことで、症状の改善が見られました。
とくに、肝気鬱結に着目した治療が有効であったと考えられます。
この症例を通して、当院では、単に症状を抑えるだけでなく、根本原因にアプローチすることで、心身全体のバランスを整える治療を重視していることをお伝えできたかと思います。
原因不明の体調不良でお悩みの方、病院での検査で異常が見つからなかった方、薬を服用しても改善が見られない方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
丁寧な問診と東洋医学的な診察を通して、お一人おひとりに合わせた最適な治療をご提案させていただきます。
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