鍼灸の施術と技術
患側と健側の刺鍼では、両者とも効果はあるが効く仕組みが違う
巨刺の作用機序の一端かも知れない
痛い場所があったら、その痛む場所(もしくは痛む側の経絡)に鍼灸することで鎮痛作用などが現れると考えるのが普通です。
たしかに鍼灸の考え方でもそれはその通りです。
でも、同時に、わざと逆側(痛む場所のちょうど反対側)に鍼灸することで同じように鎮痛させることが出来るという考えもあります。
こういう鍼の使い方を『巨刺(こし)』と言います。
伝統的な考えでは、「健側(痛くない側)の方が経絡の流れがスムーズだから効果が出やすいのだ」とか「左右の経絡のバランスを取るからだ」とか、その理由は色々言われています。… 全文を読む
お灸の最前線
『医道の日本』お灸特集
鍼灸師にはおなじみの業界誌『医道の日本』。
今月の特集は「お灸」ということで、同誌に時々出るスマッシュヒットだった気がします。
(※あくまで一個人の見解です)
雑誌の特集にありがちな「トピックを紹介するだけで深めることはできない」のは仕方ないことではあります。
…が、切り口がよくある「施術法としてのお灸」ネタだけでなく、「もぐさ(艾)」と「国際的な動き」と「お灸の効能(科学化)」を取り上げていて勉強になりました。
もぐさの製造方法
日中韓でもぐさの製造方法が異なるのは、あまり業界的には知られていない印象でしたので、その辺に軽くでも触れられていたのは良かったです。… 全文を読む
痛みに鍼灸はすぐ効くか?の研究
痛みに鍼灸はすぐ効くか?の研究
鍼治療は、世界的に見れば「痛みの治療」に使用されることが多いです。
もちろん日本でも同様なのですが、日本では整形外科疾患(頭痛・膝痛・腰痛など)に偏って使用されている向きがあります。
今までの世界中の研究では、「慢性疼痛の治療」に鍼治療が有効であるという重要なエビデンスはあります。
現在までに80以上の系統的レビューが、痛みの軽減における鍼治療および関連療法の役割を評価するために実施されています。
しかし、これらの体系的なレビューの結果は、全て同じ結果にはなっていません。
たとえば、大多数のレビューでは、腰痛と変形性膝関節症の痛み軽減の鍼治療には肯定的な結果を報告しています。
また2つの最近の体系的レビューでは、がんに関連する痛みの軽減における鍼治療の有効性に肯定的な結果を報告しました。… 全文を読む
鍼灸はなぜ痛みを緩和させるのか?(下行性抑制系)
鍼灸はなぜ痛みを緩和させるのか?
鍼灸(=東洋医学)の世界は、現代西洋医学的に解明されていることと不明なことに分かれています。
開拓途上、と言ったところ。
(※西洋医学的に開拓されなければいけないわけでもないとも考えますが…)
実際の施術の際、患者さんに「気の働き」や「経絡のありよう」を熱く語ってもなかなかピンと来てはいただけないので、どうしても西洋医学的な解釈モデルを簡便に話します。
今回のお題は「鍼灸がなぜ痛みを緩和させるのか?」
…そんな話を、書いてみようと思います。
鍼灸施術には「鍼の響き」「灸の熱感」など、ズーンとした重だるさやチクっとした熱さのような特有の感覚があります。… 全文を読む
カッピング(吸い玉)療法とは
カッピング(吸い玉)は東洋医学のひとつの療法として、我々鍼灸師が鍼やお灸と併用する形で使っています。
ですので、基本的には健康増進や病気治療に使われます。
アスリートがメンテナンスに鍼灸と併用してカッピングをするのも見かけます。
また現在では治療目的ではなく、カッピングというとダイエットや美容として女性に人気があります。
日本だけでなく、中国や台湾などでも行われて流行っています。
そんなカッピングについてをご紹介します。
カッピング(吸い玉)について
カッピング(吸い玉)療法とは、透明のカップをツボ(=使用するのは背中やお腹のツボが多い)に吸着させ、カップの中を真空状態にし、血流促進をはかる施術方法です。… 全文を読む
鍼を刺すとなぜ痛みが和らぐのか?
鍼治療の局所鎮痛の仕組み
鍼治療に鎮痛効果があることは長く言われてきました。
「EBM(証拠に基づく医療)」が重要と言われるなかで、鍼の局所の鎮痛が現代医学的にどのような仕組みで効果を発揮するのかは分かっていませんでした。
もちろん、仕組みは定かではない状況でも、世界中で鍼治療は行われていますので、我々鍼灸師は「経験的に効果が認められていることがイコール実践の根拠」としてきました。
私のような一介の鍼灸師にとっては「日々の実践で効果があることが大事」ですので、それ以上のうんちくはなくてもよいのですが、最近の知見で局所の鎮痛がなぜ起こるのかは分かってきているので、紹介します。
鍼の局所鎮痛に関する論文
『鍼刺激による局所鎮痛にアデノシンA1受容体が関与している… 全文を読む
鍼のシリコン加工
ディスポ鍼とシリコン肉芽腫
私が鍼灸学校に通っていた頃(15~20年ほど前)多くの鍼灸院での使用鍼は、「滅菌しての再利用する鍼」を「使い捨て鍼(ディスポ鍼)」が駆逐目前という時代でした。
「鍼で肝炎やエイズにはなりませんよ、だって使い捨てだから」というポスターを張っているところも少なくありませんでした。
そのような時代を経て、今では感染に対する恐れはあまり聞きません。
それくらいディスポ鍼の使用が当たり前になってきたからでしょう。
そのディスポ鍼は、各社様々な特徴をうたう商品があります。
そのなかでも今回はシリコン加工について。
シリコンコーティング鍼のメリット・デメリット
… 全文を読むオピオイド中毒と鍼灸治療
オピオイド中毒の問題
オピオイドとは強い鎮痛作用のある医療用麻薬です。
米国では、この鎮痛剤の過剰摂取で2万人以上が死亡しています(2015年)。
依存症患者も200万人いるとみられています。
医療用麻薬の歴史を簡単に書くと、原料はアヘンでした。
製薬会社はアヘンからさまざまな鎮痛剤(オピオイド系鎮痛剤)を開発していきました。
1804年にはモルヒネ、1832年にはコデインが作成され、1874年にはヘロインもつくられました(最初は鎮咳薬として販売されたが、のちに違法薬物に)。その後も各種オピオイド系鎮痛剤がつくられていきました。
90年代に入り米国では「米国人は不要な痛みに苛まれている」ことの害が強く訴えられ、その対処方法としてオピオイド系の鎮痛薬の使用が飛躍的に増加しました。… 全文を読む
鍼灸事故について
鍼灸事故のなかでも鍼灸院内で解決したものではなく、賠償責任保険に関係したようなケースについての話をシェアします。
気胸
どのくらいの頻度で起きるか?
鍼灸師400人のうち1人くらいの確率で毎年起こるようです。
まず気胸は、軽度だとそのまま日常生活をしながら様子見ということになります。
もう少しひどいと入院して肺の空気を調節します。それに1週間くらいの入院期間が要るようです。
問題になるケースの基本は「入院での治療」になります。
これは表に出るのが賠償問題になるような程度の気胸だからからかもしれませんので、なんとなく解決してしまった気胸はもっと多く起こっているのかもしれませんね。… 全文を読む
治療では、いくつ・どんなツボ使う?
治療の際に使う鍼は1本?10本?100本?
「まぁ、どうだっていいやね(苦笑)」と言いたいです。
みな、好きにしたらいいのです。
「1本の方がコストがかからないよね」とか「セイ●ンの鍼で1回50本使用とかあり得んだろう」とか経営目線での邪念をはらませつつ…。
これは脱線。
「いやいや、やたら刺すのは害になるのでは…」とか「やはりしっかり必要な刺激量を与えないと効果が出ないのでは…」など、言いたいこともあるでしょうが、おそらく「正しい答え」はありません(…と思います)。
私自身の感覚としては、『より確実性の高い経穴を、少数厳選して、治療効果を引き出す手技をするのが理想だろう』とは考えています。… 全文を読む
治療の土台(ベース)
治療の土台(ベース)について聞かれた時、私は「『中医学』をベースにしています…」と答えています。
学生時代にかじった中で、その時の自分に一番しっくりくるような気がしたからです。
…とは言え、あくまで「考え方に中医学を据えた自分なりの治療」です。
中医学的な解釈で(自分の学びが)足りない部分は現代医学的な発想で代替させたり、他の鍼灸流派的発想で代替したり、心理学の考え方を取り入れてみたりしながら、とにかく日々なんとか治療しています。
ですので「中医学でやっています」とは恐れ多くも言えません。
ちなみに「中医学でやっている」とは、整体観・病理観・治療などが中医学思考で一貫していることだと思っています。… 全文を読む
治療についても語る意味
当院は自費で鍼灸治療を行う治療院です。
病気・悩みの改善・解消を目指して鍼灸治療をしていますが、鍼やお灸をする行為のパーツは鍼灸院のサービス全体の一部にしか過ぎないと考えています。
もちろん、鍼灸は主要パーツなのですが、鍼灸院に入ってきてから出ていくまでの一連の要素は本来一体不可分で、その「一連の流れの総合力」で改善・治癒が生み出されていくと考えています。
しかし、どうも医学的な観点から「改善・治癒」は「鍼を刺す行為・お灸をすえる行為のみ」で生み出されると思われています。
まずここに疑問があります…が今回は趣旨が違うので一旦横に置きますがいつでもどこかにその思いはあります。
もちろん、「鍼灸」が鍼灸院の「商品」なのだから、… 全文を読む