乳がんのしこりの痛みびわ温灸症例
乳がんのしこりの痛みへのびわ温灸治療
がんは依然として深刻な病の一つで、診断を受けた際の精神的な負担は計り知れません。
とくに女性にとって、乳がんは身近な病気であり、しこりの発見や痛みは大きな不安と恐怖をもたらします。
今回は、乳がんと診断されたものの、西洋医学的な検査や手術に抵抗を感じ、当院のびわ温灸治療を選択された患者様の事例です。
この症例を通して、びわ温灸が単に身体的な症状だけでなく、がんという病に伴う精神的な不安や苦痛を緩和し、心身の調和を取り戻す手助けとなる可能性について考察していきます。
当院では、患者様一人ひとりの心身の状態に寄り添い、東洋医学の視点から丁寧にアプローチすることで、病と闘う力を内側から引き出すサポートをしています。
患者さまについて
年齢・性別:
40代女性。
鍼灸院に来るまでの経緯:
1年半前に健康診断のエコー検査で腫瘍の存在を指摘されたが、病院を受診せず経過観察をしていました。
6ヶ月前にマンモグラフィー検査を受け、「問題なし」と診断されます。
1ヶ月前にしこりに痛みを感じるようになりました。
そのため病院を受診しました。
針生検の結果、「乳がん」と診断されます。
病院からはMRI、CT、骨シンチ検査後の手術を提案されます。
しかし、患者様はこれらの検査を望まず、通院を中止しました。
検査や手術への抵抗感に加え、痛むことへの不安から、当院のびわ温灸治療を希望して来院されました。
東洋医学的考察
東洋医学では、病は単に身体の一部分の不調として捉えるのではなく、心身全体のバランスの乱れとして捉えます。
今回の患者様の場合、乳がんという診断による精神的な動揺、すなわち「肝気鬱結(かんきうっけつ)」が顕著でした。
肝は精神活動を司ると考えられており、ストレスや抑うつ状態によって肝の気の流れが滞ると、不安、イライラ、不眠などの精神症状が現れます。
また、肝の気の流れの滞りは、気の流れ全体を阻害し、「気滞(きたい)」と呼ばれる状態を引き起こします。
気滞は血の巡りにも影響を与え、「瘀血(おけつ)」と呼ばれる血の滞りを生じさせ、痛みなどの症状を引き起こすと考えられます。
さらに、精神的なストレスは消化器系の機能にも影響を与えます。
患者様は食欲不振を訴えていましたが、これは肝の気が脾胃(ひい)の働きを阻害しているためと考えられます。
脾胃は飲食物を消化吸収する役割を担っており、その機能が低下すると食欲不振、消化不良、倦怠感などの症状が現れます。
これらの東洋医学的な考察から、患者様の症状は肝・心・脾・胃の機能失調が複合的に関与していると判断しました。
治療方針
びわ温灸は、びわの葉の薬効と温熱刺激を組み合わせた治療法です。
びわの葉には、抗炎症作用、鎮痛作用、血行促進作用などがあるとされており、温灸によってこれらの効果を身体の深部にまで届けることができます。
当院では、患者様の状態を丁寧に把握した上で、以下の点を重視した治療方針を立てました。
精神的な不安の緩和:
肝気の流れをスムーズにし、心の安定を図ることを最優先としました。
消化器系の機能改善:
脾胃の働きを活性化し、食欲不振の改善を目指しました。
痛みの緩和:
患部周辺の血行を促進し、痛みを和らげることを目指しました。
治療に際して、「びわ温灸だけで腫瘍が消失することはない」ことを患者様にしっかりと説明し、西洋医学的な治療との併用や、あくまで症状緩和を目的とした治療であることをご理解いただきました。
その上で、不安感の緩和や自律神経系の調整を目的とした治療を行うことをご提案し、患者様も納得の上で治療を開始しました。
治療経過
1回目:
初診時、患者様は強い不安感を抱えており、表情も硬く、食欲も著しく低下していました。
仰向けで、「湧泉」「三陰交」「足三里」「臍周辺」「中脘付近」「合谷」「曲池」「尺沢」「内関」などのツボにびわ温灸を行いました。
うつ伏せで、背部も肩こりの部分、背部兪穴、痛む部位の背中側(天宗付近)にびわ温灸を行いました。
2~6回目(週1回ペース):
初回と同様の施術を継続しました。
治療を重ねるごとに、患者様の表情は徐々に和らぎ、不安感も軽減していきました。
食欲も回復し、以前のように食事を楽しめるようになったとのことです。
びわ温灸を開始して1ヶ月半が経過した現在も、治療は継続中です。
使用した主なツボとその代表的な効果
湧泉(ゆうせん):
足の裏にあるツボ。
心身のエネルギーを高め、不安や不眠の改善に効果があるとされています。
三陰交(さんいんこう):
足の内側にあるツボで、肝・脾・腎の経絡が交わる場所にあります。
女性特有の症状、冷え、むくみ、生理不順などに効果があるとされています。
足三里(あしさんり):
膝の下にあるツボ。
消化器系の機能を整え、食欲不振、胃もたれ、便秘などに効果があるとされています。
合谷(ごうこく):
手の甲にあるツボ。
鎮痛作用があり、頭痛、肩こり、歯痛などに効果があるとされています。
曲池(きょくち):
肘にあるツボ。
皮膚疾患、アレルギー症状、高血圧などに効果があるとされています。
尺沢(しゃくたく):
肘にあるツボ。
呼吸器系の症状、咳、喘息、喉の痛みなどに効果があるとされています。
内関(ないかん):
手首の内側にあるツボ。
精神安定作用があり、動悸、不安、吐き気などに効果があるとされています。
中脘(ちゅうかん):
おへその上にあるツボ。
胃の不調、消化不良、食欲不振などに効果があるとされています。
これらのツボにびわ温灸を行うことで、それぞれの効果を高め、患者様の症状改善に繋げました。
まとめ
この症例は、びわ温灸が乳がんそのものを治癒するものではないものの、がんという病に伴う精神的な不安や苦痛を緩和し、患者様のQOL(生活の質)向上に貢献できる可能性を示しています。
とくに、精神的なケアは、病と闘う上で非常に重要な要素であり、東洋医学的なアプローチは、心身両面からのサポートを提供できる強みがあります。
当院では、このような心身のバランスを重視した治療を通して、患者様が本来持っている自然治癒力を引き出し、健やかな生活を送れるようサポートしています。
もし、病気や痛みでお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度当院にご相談ください。
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