ギックリ腰と妊娠発覚が同時に起こった

妊娠初期のぎっくり腰への鍼灸治療

ぎっくり腰と妊娠初期

人生において、喜びと不安が同時に押し寄せる瞬間があります。
今回ご紹介する症例は、まさにその特別な瞬間を経験された患者様の物語です。

ぎっくり腰の激しい痛みに苦しむ中、妊娠の発覚という人生の大きな転機を迎えた30代の女性の症例です

患者さまについて

年齢・性別:
30代女性

鍼灸院に来るまでの経緯:
7年前にぎっくり腰の経験あります。

今回は「左腰からお尻にかけての痛み」での来院。
前夜、買い物中に荷物を持った際にぎっくり腰を発症してしまいました。
来院時には昨日より痛みが悪化し、動作時に痛みが増します。

2日後には仕事復帰を希望しています。

鍼灸に初めて来院した当日、妊娠検査薬で陽性反応を確認(自然妊娠)されていました。

この患者様は、7年前にぎっくり腰を経験しており、今回も同様の症状に見舞われました。
しかし、今回は妊娠の発覚と重なったことで、心身ともに大きな不安を抱えていました。

ぎっくり腰の痛みはもちろんのこと、妊娠初期というデリケートな時期に鍼灸治療を受けても大丈夫なのか、という心配もあったことでしょう。
当院では、このような患者様の不安に寄り添い、丁寧な説明と安全な施術を心がけています。

東洋医学的考察

東洋医学では、腰は「腎」の領域と深く関わると考えられています。
「腎」は生命の根源的なエネルギーである「精」を貯蔵し、成長・発育・生殖を司る重要な臓腑です。

妊娠は「腎」の働きと密接に関わっており、妊娠初期は特に「腎」の気が消耗しやすい時期です。

今回の患者様は、荷物を持った際の急な負荷によって腰部の経絡の気血の流れが阻害され、痛みが生じたと考えられます。
さらに、妊娠による「腎」の気の消耗が、痛みを助長している可能性も考慮しました。

また、東洋医学では、痛みは「不通即痛(ふつうそくつう)」、つまり「流れが滞ると痛みが生じる」と考えます。
今回のぎっくり腰は、まさに腰部の気血の流れが滞った状態と言えます。

治療方針

今回の治療では、以下の点を重視しました。

安全性の確保:
妊娠初期であることを考慮し、母体と胎児に影響のない安全な施術を行うこと。強い刺激は避け、優しく丁寧な施術を心がけること。

痛みの緩和:
ぎっくり腰による腰部の痛みを早期に緩和し、日常生活への早期復帰を支援すること。

心身の安定:
妊娠とぎっくり腰という二重のストレスにより心身が不安定になっている可能性を考慮し、心身のリラックスを促す施術を行うこと。

これらの点を踏まえ、腰部の経絡の流れを改善し、気血の巡りを整えることを目的とした鍼灸治療を行うこととしました。

患者様には、妊娠初期でも鍼灸治療は可能であること、ただし強い刺激の施術は好ましくないため弱めで行うこと、最終的にご自身の不安が強いようなら鍼灸は受けない方がよいことを丁寧に説明し、ご納得いただいた上で施術を開始しました。

治療経過

1回目(初診日):
腰痛の局所に浅く置鍼した後、温かいお灸(点灸)を行いました。
施術後、痛みが10段階で10(最大)だったものが6まで軽減したとのことでした。

2回目(翌日):
一晩明けて痛みが4まで軽減していました。
この日、患者様は産婦人科を受診し、正式に妊娠判定を受けました。

この日は、左「後谿(こうけい)」左「委中(いちゅう)」に軽く響かせる鍼を行い、「背部の兪穴(ゆけつ)」に浅く置鍼しました。
「腰の局所」には運動鍼(鍼を刺した状態で患部を動かす手技)を加えました。

施術後、ベッドサイドで動いていただくと、かなり楽になっているとのことでした。
明日から仕事に行けそうとのことで、2回の治療で終了としました。

使用した主なツボとその代表的な効果

腰の局所:
ぎっくり腰の患部である腰部のツボは、直接的に痛みを緩和する効果があります。

後谿(こうけい):
手の太陽小腸経に属するツボで、腰痛、肩こり、首の痛みなどに効果があります。
とくに、急性の腰痛に効果を発揮します。

委中(いちゅう):
足の太陽膀胱経に属するツボで、腰背部の痛み、下肢の痺れなどに効果があります。
「腰背の病は委中に求めよ」と言われるほど、腰痛治療に重要なツボです。

背部の兪穴(ゆけつ):
背部には五臓六腑の気が集まる兪穴というツボが並んでおり、それぞれの臓腑の機能を調整する効果があります。
今回の治療では、腰痛と関連の深い「腎兪(じんゆ)」などを中心に使用しました。

これらのツボを適切に組み合わせることで、痛みの緩和だけでなく、全身の気血の流れを整え、自然治癒力を高める効果が期待できます。
当院では、患者様の症状や体質に合わせて最適なツボを選択し、丁寧な施術を行っています。

まとめ

今回の症例は、ぎっくり腰という急性の痛みと、妊娠という人生の大きな転機が同時に訪れた、非常に稀なケースでした。

当院では、患者様の心身の状態を丁寧に把握し、安全性を最優先に考えた上で、東洋医学に基づいた適切な鍼灸治療を行いました
結果として、2回の治療でほぼ完治という良好な結果を得ることができました

この経験を通して、改めて東洋医学の力と、患者様に寄り添う治療の大切さを実感しました。

当院では、ぎっくり腰のような急性の痛みはもちろん、慢性的な疾患、そして妊娠中の不調など、様々な症状に対応しています。

もし、体の不調でお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度当院にご相談ください。

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