白内障とうつ病の鍼灸症例

白内障とうつ病

眼病症例4:白内障

患者さま

40代 男性

初来院

2017年7月26日

お悩みの症状

白内障・疲れ目

初来院までの経過

半年前に、会社の健康診断で指摘され、眼科で白内障と診断される。
近所の眼科で目薬を処方されるも改善せず中断。漢方薬を出す眼科にも行くが遠方のため続かない。
他の方法でケアしたいと鍼灸を希望され来院。
肩こりや疲れ・不眠なども訴える。

治療方針

まだ40代と若いこともあり、加齢で目のエネルギーが低下したと言うより目に栄養が上手くいかない要素があると判断。
肥満体形や舌苔厚もあることから、脾胃への負担から湿邪が多く滞り、首より上(とくに目)への栄養ルートを妨害しているとみる。
また初回問診時には、自分の身体のことを多く語りたがらないように感じられ、目のこともあるので肝うつなど気の滞りがメインではないかと判断する。
肝の疏泄をしっかりさせ、首肩などのコリを取り、気血の巡りをよくすることにする。

治療と経過

1回目。
「右期門(+温灸)」「ダン中」「中カン(+温灸)」「合谷」「足三里」「太衝」「陽陵泉」「首から肩のコリの部分」「肝兪」に鍼。
2回目~4回目(1週間に1回ペース)。
睡眠の改善や下痢気味だったお通じが改善された、とのこと。
胃の調子がいまいちであることや雨の日には体が重いなど「湿邪」の影響が出ている。
開始後1ヶ月くらい経ち、初めて「実は今うつ病で休職中であること」を告白される。
抗不安薬を複数飲んでいる、などの状況が分かってくる。
5回目以降(週1回ペース継続)。
肝系のツボを減らし、胃腸系(湿を取る為)のツボを多くする。
気の滞りと湿の滞りのダブルが存在しているとみる。
首や肩のつらさはほぼ改善し、下痢などもなくなり、休職中であることからも目や全身の疲れもなく順調であるとのこと。
白内障は眼科のチェックでは「悪くならず現状維持」。
開始より5ヶ月ほど経ち、体調全般は良好なので職場復帰の予定であり、白内障は手術をすることにしたため、鍼灸もいったんこれで終了とする。

同時に治療した症状

・首肩コリ
・胃の不良
・下痢
・うつ病

まとめ

初回問診は、時間をかけて体の状態をうかがっている。
「他には何かありませんか?」と念押しするものの、それでも患者さんが言おうとしないことは分からないことを痛感した症例。
逆に、少し治療が進んでから、調子がよくなり信頼関係が築けてきたときに、初めて「本音」のようなものが出てくるのだろう。
そういう意味では信頼いただけた証しとは感じるのだが、私自身に信頼構築のためのコミュニケーション技術を磨く必要性を感じさせた。
学びはまだまだ続く。
白内障の方は、鍼灸単独では改善しなかった。
治療に加え、食事に気をつける(量を減らすなど)ことで、湿邪対策が進めばもう少し改善したかもと思うが、生活習慣にはなかなか踏み込むことは難しい事も実感した症例であった。