鍼が眼の血液循環に及ぼす影響

鍼が眼の血液循環に及ぼす影響

鍼と眼の血流|千葉県|松戸・船橋・鎌ヶ谷|鍼灸治療院

目には「網膜」という膜があります。
網膜は眼球の最内方の壁で、視神経の先端が分布している層です。
外界からの光がここに像を結び、その刺激を受け取る役割を果たしています。
ここもやはり細胞として常に栄養や酸素をもらって生きています。

網膜動脈閉塞症という病気があります。
網膜に血液を送っている動脈が詰まり、網膜の細胞への血流が途絶えてしまう病気です。
細胞が活動するために必要な酸素や栄養は、血液によって供給されていますので、血流が途絶えると、間もなくそこから先の細胞は死んでしまいます。
網膜の細胞が死ぬと、視力が奪われたり視野が欠けたりします。

このように網膜への血流をしっかり維持するのが重要であることが分かります。
今回、鍼施術がこの網膜中心動脈にどういう影響を及ぼすかを調べた研究があるので紹介します。

『遠隔部経穴への鍼刺激が眼循環動態に及ぼす影響』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/58/4/58_4_616/_article/-char/ja

【概要】
(眼の病気によく用いられる)目からは離れた場所のツボが、眼の血液循環に及ぼす影響について検討した。
被検者を「鍼施術をしない群」と「鍼刺激する群」に分け観察した。
刺激群はさらに、風池群・合谷群・肝兪群・光明群・曲池群に割り付けた。
網膜中心動脈の血流速と血管抵抗指数を装置で測定した。
結果として、「鍼施術なし群」では、血流速および血管抵抗指数に有意な変化は認められなかった。
「鍼刺激あり群」では、 血流速の有意な増加と血管抵抗指数の有意な低下が認められた。
両群とも血圧・心拍数はほとんど変化しなかった。
結論。目から遠いツボへの鍼で、眼の血液循環が変化することが示唆された。
効果は光明・合谷への鍼刺激で大きく、風池では比較的小さいことが示唆された。

「方法」
ツボは右側だけ使用。
1寸3分-2番鍼を刺入し、得気がでたらそこで15分置鍼。

当院の考察

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目に効くツボに鍼をすると、網膜中心動脈の「血流向上」と「血管抵抗(血液の流れにくさ)の低下」が見受けられました。
しかも首のツボより、腕や足のツボの方がそれが顕著だったという結果でした。

古来「合谷穴」と「光明穴」は目に効くツボの代表格です。
それがやはり効果を出すという事実が確かめられたわけです。
網膜に向かう動脈の血流が良くなる=網膜の働きが向上する、というわけです。

ただし当院では基本的に、ツボ選択は「伝統的な東洋医学的な観点」から決めます。
舌・脈・腹などの状態や、カウンセリングで得られた情報をもとに、全身を改善させるためのツボを選びます。
現代医学的ではなく、伝統医学的な思考で施術するのは、それが本来もつ鍼灸のパワーを発揮させ得るからです。

「ツボに鍼をする→網膜中心動脈の血流改善する」のは分かったがその理由はなんでしょうか。
「皮膚への鍼刺激→脊髄→脳(視床)→視床下部→眼窩部の血管を自律神経調整」したのだろうと推測されます。
ただし今回の論文でも書かれていますが、鍼を抜いてからも30分以上効果が続いていたことから「それ以外の要因もあるだろう」としています。
よく分からない仕組みがまだまだあるということです。
このように現代科学的に、鍼灸は「分かってきたこと」と「不明なこと」の混在があります。
ですので、得られた知見は学びつつも、長い経験則で構築された伝統的な東洋医学観で鍼灸施術を行うのが最適だと、当院では考えています。

従来より効果はあることは分かっているものが、どのように効くのか・どうして効くのか・本当に効くのかを確かめられることは現代科学の発達のおかげだと思います。
そういった知見は今後も学び続けたいです。

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