乳がん術後のリンパ浮腫のむくみを鍼灸で減らせるという研究

乳がん術後のリンパ浮腫が鍼灸で改善

リンパ浮腫と鍼灸・写真1
乳がんという大きな病気と闘いながら、しかもリンパ浮腫という不安にも対応しなければいけないことは大変な負担かと思います。
鍼灸がそこでお役に立てる…という話を書きます。

リンパ浮腫とは

乳がん治療のひとつに手術があります。
リンパ節転移が有ると、腫瘍だけでなくわきの下のリンパ節手術(腋窩リンパ節郭清)を受けることとなります。
腋窩リンパ節郭清の一般的な副作用のひとつは、腕のリンパ浮腫(腕の浮腫)です。
腋窩(わきの下)のリンパ節を切除すると、手術後に体の老廃物を運ぶリンパの流れが悪くなり、手術した側の腕に溜まり腫れることがあります。
これをリンパ浮腫と呼びます。

リンパ浮腫の発症は治療後すぐのこともあれば、数週間後、数カ月後、数年後のこともありえます。
乳がん患者さんのおよそ30%が上肢リンパ浮腫に罹ります。
リンパ浮腫は進行すると完治は難しいですが、予防と早期発見を心がけることで、重症にならないようにできます。
リンパ浮腫には単独で効果的な治療法はありませんが、症状を改善させするためには多くの治療法があります。

リンパ浮腫に鍼灸を用いる研究

2013年の研究で「鍼灸治療がリンパ浮腫のむくみを減らせる」という報告が出ました。

『上肢リンパ浮腫の治療における鍼治療(Acupuncture in the treatment of upper-limb lymphedema: results of a pilot study.)』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23576267

【方法】
乳癌関連リンパ浮腫の患者で、正常より2cm以上大きい腕周りを患っている女性に、週2回×4週間(合計8回)の鍼治療を行う。

【結果】
参加した33%の患者が、鍼治療後に30%以上の腕のむくみの減少を示した。

【考察】
乳がん術後リンパ浮腫の鍼治療は安全と思われ、腕周りを減らす可能性があるので勧められる。

リンパ浮腫への鍼灸の考え方

鍼灸(東洋医学)では、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の量と巡りが適度だと健康でいられ、量の過不足や滞りがあると体は症状を出すと考えられます。
浮腫=むくみは、まずは「水」の問題であると見ます。
しかも、「水分のめぐりが悪くなっている状態」と判断します。

どうして水まわりが悪くなっているかを、その人の身体全体から判断します。
●カラダ全体に水分が多過ぎる
●水分をめぐらせる力だけが弱い
●水分も含め全体的に弱い
●どこかで滞っている
…などとみていきます。

東洋医学的に原因をしっかり見定めて、それを改善に導くツボを選んで施術していきます。
たとえば、水分代謝が悪くなってるケースでは「お腹のツボ」「足のツボ」「背中のツボ」などを使います。
このように、症状が出るのは片方の腕だったとしても、全身から適宜大事なツボを選ぶので、腕そのものを使わないで施術することもあります。

色々なケアの方法があります。
上手く組み合わせつつ鍼灸も取り入れてみてください。

当院の「抗がん剤の副作用の鍼灸」ページはこちら