【新型コロナ】鍼灸は予防と回復に役立つ

新型コロナ中医学

中国での新型コロナへの鍼灸

中国での医療は、西洋医学だけでなく東洋医学も多くの総合病院の中で実践されています。
今回の新型コロナウイルス感染症に対しても同様です。
その知見を踏まえ、中国針灸学会によって、新型コロナへの鍼灸治療の手引きが公表されました

病院内で、西洋医学と併用して鍼灸施術をする状況にない日本の開業鍼灸師が、即、このまま新型コロナ患者さんに実践できる状況や内容ではないでしょう。
ただしかし、鍼灸が新型コロナにも応用可能であることを知っていただきたい目的と、その内容が「予防」や「回復」の際に役立つと思いますのでシェアします

中国針灸学会による『新型コロナウイルス感染症への針灸介入に関する手引き(第二版)』
参考にしたのは医道の日本社による翻訳です(こちら)。

『新型コロナへの針灸の手引き(第2版)』(意訳)

概要

・新型コロナウイルス感染症は、中医学における「疫病(集団発生する伝染病)」である。
・2千年前から鍼灸による疫病予防や治療が行われてきた。
・新型コロナは「疫病の(邪)気」が口鼻から侵入し、大部分はまず肺を犯し、脾胃大腸に波及し、病状は軽い。一部の患者では、心包・肝・腎へ逆伝し、重症化する。
鍼灸治療は、医学観察期・臨床治療期・回復期の3つのステージに分けて行う
・臨床治療期には鍼灸と薬を併用。
回復期のリハビリには鍼灸が中心的な役割を発揮すべき

鍼灸治療の方法

下記3つのステージにおいて、鍼単独・灸単独・鍼灸併用、あるいは耳鍼・ツボ注射・かっさなどを状況に応じて選択する。
鍼は平補平瀉法で操作する。
鍼は各ツボに20~30分置鍼・灸は各ツボに10~15分施術する。
治療は1日1回。

1)医学観察期(感染が疑われるケース)

●主に使うツボ
(1) 風門(BL12)、肺兪(BL13)、脾兪(BL20)
(2) 合谷(LI4)、曲池(LI11)、尺沢(LU5)、魚際(LU10)
(3) 気海(CV6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)

治療ごとに、各群の中から1~2穴を選択する。
※『手引き』では「症状ごとの配穴」も記載されているがここでは割愛。

2)臨床治療期(診断が確定したケース)

●主に使うツボ
(1) 合谷(LI4)、太衝(LR3)、天突(CV22)、尺沢(LU5)、孔最(LU6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)
(2) 大杼(BL11)、風門(BL12)、肺兪(BL13)、心兪(BL15)、膈兪(BL17)
(3) 中府(LU1)、膻中(CV17)、気海(CV6)、関元(CV4)、中脘(CV12)

軽症例と一般症例の治療には、その都度、(1)と(2)の群から2~3の主穴を選択し、重症例の治療には(3)の群から2~3の主穴を選択する。
※『手引き』では「症状ごとの配穴」も記載されているがここでは割愛。

3)回復期

●目的
残留ウイルスを除去し、生命力を回復し、臓器の修復を促進し、肺と脾の機能を回復させる。

●主に使うツボ
内関(PC6)、足三里(ST36)、中脘(CV12)、天枢(ST25)、気海(CV6)。

1.肺脾気虚
・息切れ、疲労感、食欲不振、嘔吐、胃膨満、排便する力の不足、残余感のある軟便、淡胖舌と白膩苔の症状。胸部絞扼感、息切れなどの明らかな肺の症状がある患者には、膻中(CV17)、肺兪(BL13)、中府(LU1)。
・食欲不振や下痢などの明らかな脾と胃の症状を持つ患者には、上脘(CV13)、陰陵泉(SP9)。

2.気陰両虚
・衰弱、口腔内の乾燥、喉の乾き=口渇、動悸、多汗、食欲減退、低熱または熱が無い、少しの痰を伴う乾いた咳、少ない唾液と乾舌、細脈または虚脈の症状。明らかな衰弱と息切れのある患者には、膻中(CV17)、神闕(CV8)。
・口腔内の乾燥と喉の渇きが明らかな患者には、太渓(KI3)、陽池(TE4)。
・明らかに動悸がある人は、心兪(BL15)、厥陰兪(BL14)。
・多汗の患者には、合谷(LI4)、復溜(KI7)、足三里(ST36)。
・不眠症の患者には、神門(HT7)、印堂(GV29)、安眠(Ex)、湧泉(KI1)。

3.肺気脾気の不足、経絡を遮断する痰の停滞
・胸部絞扼感、息切れ、会話の嫌気、疲労感、動くときの発汗、痰を伴う咳、痰が詰まる、鱗状の乾燥肌、精神的疲労感、食欲不振などの症状は、肺兪(BL13)、脾兪(BL20)、心兪(BL15)、膈兪(BL17)、腎兪(BL23)、中府(LU1)、膻中(CV17)。
・痰が詰まっている患者には、豊隆(ST40)、定喘(Ex-B1)。

在宅患者のセルフ鍼灸

新型コロナの感染予防のため、外出自粛し、他人との接触を避けることが重要である。
自宅隔離や退院後自宅で静養中の患者に対し、(専門職員の指導の下)鍼灸治療を実施させる。

【艾灸療法】
足三里・内関・合谷・気海・関元・三陰交などの穴位に自ら施灸(棒灸)する。
各穴10分間程度。

【敷貼療法】
灸熱貼または代温灸膏などを足三里・内関・気海・関元・肺兪・風門・脾兪・大椎などの穴位へ貼付する。

【経穴推拿】
上肢肺経・心経および膝より下の脾経・胃経穴位に対し、点法・揉法・按法または揉按・拍打・叩撃法を行う。
一回15~20分間。
局部の酸脹感(だるく張った感覚)の出現が目安。

【伝統功法】
自身の回復状況に応じ適切な伝統功法を実施する。
例:易筋経・太極拳・八段錦・五禽戯など。
毎日一回、毎回15~30分間程度。

【気分転換】
感情の調節に注意し、耳穴・艾灸・推拿・薬膳・薬茶・薬浴・音楽などの方法を併用し、心身をリラックスさせ、焦りやイライラを解消し、睡眠を促進する。

【足湯】
例えば、疏風清熱袪邪の中薬(生薬)である、荊芥・艾葉・薄荷・魚腥草・大青葉・佩蘭・石菖蒲・辣蓼草・鬱金・丁香各15g、氷片3gなどの中薬を精選し、中薬を煮出した液を桶に入れ、温水を加え38~45℃前後に調節し、30分程度足を浸す。

当院の考察

新型コロナは「肺」と「脾」の働きを損傷するようです。
逆に言えば、肺と脾の働きを守ってやること(維持すること)が重要と考えられます。

新型コロナで脾の損傷?と思うかもしれませんが、嗅覚・味覚異常なども主要症状ですから脾肺の両方が関係しているのは類推できます。
胃腸の働きはそのまま気血の充実にも関係しますから、抵抗力にもつながります。
また「土生金」(五臓(肝・心・脾・肺・腎)の相生相克ですね)の関係で、肺(金)を支えるには脾(土)から、という見方もできます。

さらに、2週間以上の長期戦になりやすい新型コロナですから、「気分を安定させる」ことも重要でしょう。
そのためにも脾のチカラをキープすることは重要ですね。

現代医学でも消化器系が免疫をつかさどると考えています。
消化器系が元気 → 免疫抵抗力が維持 → 感染防御 → 感染後の抗体産生に関与、とつながってきます。

東洋医学ではウイルス自体を殺すなどを目指すのではなく、人間の持つ自然な治癒力を強化させる戦略です。

鍼灸(だけでなく東洋医学)には、カラダだけでなくココロにも効かすことができます。
先ほども書いたように、脾を充実させると「自信がでます」。
病と闘ううえで「自分を信じるチカラ」はとても重要でしょう。

このように鍼灸は心身医学としてもすぐれた治療と技術をもっています。

最初に書いたように、現代日本の状況で、街の鍼灸院がコロナ対策を行うことは理にかなっているとは言えません。
やはり、病院中心です。

でも、鍼灸(や東洋医学)には予防や回復期を支える考えとチカラがあると考えます。

鍼灸を活用して、感染しづらい体・回復が早く進む体、をめざしましょう!

最後に。
新型コロナ予防のためのセルフお灸法の動画を作りました。
参考にしてください。