ドライアイへの鍼灸
ドライアイへの鍼灸
ドライアイは、目を守るのに欠かせない涙の量が不足したり、涙の質が低下するなど、目の表面を潤す力が低下した状態で「涙の病気」といえます。
高齢化・エアコンの使用・パソコンやスマートフォンの使用・コンタクトレンズ装用者の増加に伴い、ドライアイ患者さんも増えいます。
その数は800万人~2,200万人ともいわれ、増加しています。
症状としては以下のようなものがあります。
・目が乾いた感じがする
・ものがかすんで見える
・目がごろごろする
・目が疲れる
このようなドライアイに鍼灸がお役に立てるという研究がありますので紹介します。
『ドライアイ症候群に対する鍼治療』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5934900/
【概要】
ドライアイに対する鍼治療の効果の過去の研究を調べた。
その際に人工涙との効果の比較や、介入方法(鍼治療のみ、または鍼治療+人工涙)・介入頻度(週3回未満または週3回以上)・治療期間(4週間以上または4週間以上)・経穴(睛明BL1、攅竹BL2、承泣ST1、四白ST2、糸竹空TE23、太陽Ex-HN5)での比較も調べた。
1126人の患者による19の研究が該当した。
このうち14の研究は、通常の鍼治療を人工涙と比較していた。
1つの研究はニセ鍼群との比較であった。
2つの研究は、施術方法として電気鍼の方法をとり、2つの研究では円皮鍼治療を採用した。
結果。
「鍼治療+人工涙治療」は「鍼治療単独」よりも全体的な効果が優れていた。しかし研究による結果の差が大きかった。
治療期間に関しては、1ヶ月間より長い治療がより短い治療より効果的であった。
治療頻度に関しては、週3回未満の治療が効果的であった。
経穴の解析では、攅竹(BL2)または承泣(ST1)の経穴を含む鍼治療は、それらを含まない治療より効果が少なかった。
結論。
鍼治療はドライアイ症候群の治療において人工涙単独より効果的であった。
1ヶ月以上の期間をかけ、週3回未満の治療頻度が、それ以外のものより効果が期待できる。
攅竹(BL2)または承泣(ST1)の経穴を含めると、ドライアイ治療では効果が下がる可能性がある。
電気鍼や円皮鍼での治療も良いかもしれないが、十分な評価ができる研究が少なかった。
当院の考察
ドライアイに鍼灸が有効(人工涙と併用するとより効果的)、という結果でした。
これはおおむね、日常の治療でも感じるところでした。
しかしこの研究で、鍼灸師として注目なのが「攅竹穴」「承泣穴」に鍼をするとドライアイへの効果が下がる(可能性がある)ということでした。
論文ではこの辺を以下のように解説しています。
『我々の分析はツボの選択により効果が変わることをを示唆しました。
攅竹穴および承泣穴を含めた鍼治療を行った研究は、それらのツボを含まない治療を行った研究よりも効果が低かったのです。
これは鍼治療の鎮痛効果に関連する可能性があります。
承泣は瞳孔の真下の眼球と眼窩内隆線との間に位置し、攅竹は眉の内側端に位置します。
したがって、眼窩上神経ブロックおよび眼窩下神経ブロック部位の近くになります。
それらの2つの神経は結膜を支配し、結膜感受性の低下は涙の産生を減少させます。
結果、ドライアイへの効果が落ちると考えられます。』
この二つのツボへの刺激は結果、涙を作る働きを弱めてしまうのではないか、ということです。
参考になります。
ただ、今回の研究で出てくるツボはみな目の周辺のツボだけでした。
少なくとも当院ではこのような、「つらい場所だけ(局所だけ)」の治療はしません。
目の症状を治すためにも、ドライアイになりづらいカラダづくりは全身から行う、と考えます。
例えば目に有効なツボは、手・足・背中・首などにもあります。
それらを駆使して、体質改善(ドライアイになりづらいカラダづくり)をしていくのです。
期間に関しては「週3回未満で1ヶ月以上」が推奨されていましたが、やはりある程度の継続治療が大切です。
当院ですと「週1回の治療を3ヶ月」は継続することをおススメします(もちろん状態や人によっておススメ頻度は異なります)。
病院での治療は受けているもののいまいち改善が悪いような場合、鍼灸があります。
病院での人口涙などと併用することが有効ですので、ぜひ鍼灸も頼って下さい。
お待ちしております。