右目の視野に現れたグレーの影への鍼灸症例

視野に現れたグレーの影への鍼灸治療

視野に影

現代社会において、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器は生活に欠かせないものとなりました。
その恩恵を受ける一方で、私たちは目を酷使する生活を余儀なくされています。
長時間にわたる画面の見つめ過ぎは、目の疲れだけでなく、視力低下や眼病のリスクを高める要因となります。

今回は、まさに現代社会における目の酷使が引き起こした症状の一つと言えるでしょう。
50代の女性が右目の視野にグレーの影を感じ、一部が見えなくなるという不安な状況に陥りました

西洋医学的な治療を受けても症状の改善が見られなかったため、当院の鍼灸治療を選択されました。

この記事では、東洋医学の視点からこの症状を捉え、鍼灸治療によって症状が改善していく過程をご紹介します

目の不調でお悩みの方、鍼灸治療に興味をお持ちの方に、当院の治療に対する理解を深めていただければ幸いです。

患者さまについて

年齢性別:
50代の女性。

鍼灸院に来るまでの経緯:
デスクワーク中心の仕事に従事されており、日常的にパソコン作業が多く、目を酷使する生活を送っていました。
また、首や肩のこりも慢性的に感じており、身体の不調を抱えながらも仕事に励んでいました。

もともと強度近視であり、定期的に眼科を受診していましたが、2週間ほど前から右目の視野にグレーの影が現れ、一部が見えにくい状態となりました。

眼科を受診したところ、「網膜の後ろに水が増えたために起こった症状」と診断され、「緑内障ではない」との説明を受けました。

しかし、その後も症状に変化が見られなかったため、西洋医学的な治療に加えて、東洋医学的なアプローチも試したいと考え、「鍼灸 眼」というキーワードでインターネット検索を行い、当院を見つけて来院されました。

初診時の患者さまは、目の症状に対する不安に加え、今後の視力への影響に対する懸念も抱えており、精神的にも不安定な状態でした。

東洋医学的考察

東洋医学では、目は「肝」と密接な関係にあると考えられています。
「肝は目に開竅(かいきょう)す」という言葉があり、「肝」の機能が正常であれば、目は正常に機能するとされています。

ここでいう「肝」は、西洋医学でいう肝臓だけでなく、自律神経系や血流のコントロールなど、より広範囲な機能を包括的に捉えた東洋医学の概念です。

ストレスや過労、不規則な生活習慣などは「肝」の機能を低下させ、目の不調を引き起こす要因となります。

また、「肝は血を蔵(ぞう)す」とも言われ、血液の貯蔵や血流の調節にも関与しています。

今回の患者さまは、デスクワークによる目の酷使に加え、首肩のこりも慢性的に抱えており、これは血流の滞りを示唆しています。
血流が滞ることで、目に十分な栄養や酸素が供給されなくなり、結果として目の不調が現れたと考えられます。

さらに、患者さまはもともと不安を感じやすい傾向があり、精神的なストレスも「肝」の機能に影響を与えていた可能性も考慮しました。

東洋医学では、心身一如(しんしんいちにょ)という考え方があり、心と体は密接に繋がっていると考えます。

精神的なストレスは身体に影響を与え、身体の不調は精神状態に影響を与えるという相互関係があります。

今回の患者さまの症状は、まさに心身のバランスが崩れた結果として現れたと言えるでしょう。

治療方針

今回の患者さまの症状に対し、当院では以下の治療方針を立てました。

肝の機能の調整:
ストレスや血流の滞りによって低下した「肝」の機能を高め、目の状態を改善すること。

血流の促進:
全身の血流、とくに目への血流を促進し、目に必要な栄養と酸素を十分に供給すること。

首肩のこりの解消:
目への血流を阻害している首肩のこりを解消し、血流をスムーズにすること。

心身のリラックス:
不安や緊張を和らげ、心身のリラックスを促すことで、「肝」の機能を安定させること。

これらの治療方針に基づき、患者さまの状態に合わせたツボ(経穴)を選択し、鍼灸治療を行いました。

治療経過

1回目:
仰向けで、右の「期門」に棒温灸を行い、「合谷」「外関」「太衝」「心兪」に置鍼。
うつ伏せで、「肝兪(+棒温灸)」「天柱」「風池」、そして「肩こりの局所」にあるツボに鍼治療を行いました。

2回目(1週間後):
治療後、目のもやが少し改善したとのことでした。
また、腰痛も改善が見られましたので、前回と同様の治療を行いました。

3~10回目(1週間に1回ペース):
継続的な治療を行うことで、目のもやは徐々に改善していき、10回目の治療後にはほぼ消失しました。
腰痛もほぼ完治しました。

肩こりはまだ残っていたため、目の予防と肩こり対策として、その後は2~3週間に1回のペースで継続通院していただいています。

治療が進むにつれて、患者さまの表情も明るくなり、精神的にも安定していく様子が伺えました。

使用した主なツボとその代表的な効果

期門(きもん):
肝の気を集めるツボです。
肝の機能を調整し、気の流れをスムーズにする効果があります。

合谷(ごうこく):
全身の気の巡りを整える効果があります。とくに上半身の気血の巡り改善に効果的です。

外関(がいかん):
気の流れを調整する効果があります。首肩のコリや目の疲れに効果的です。

太衝(たいしょう):
肝の機能を調整する重要なツボです。ストレスやイライラの緩和にも効果があります。

心兪(しんゆ):
精神安定作用があります。不安や緊張を和らげる効果があります。

肝兪(かんゆ):
肝の機能を調整する効果があります。
目の症状だけでなく、肝臓の機能低下による様々な症状に効果があります。

天柱(てんちゅう):
首の筋肉の緊張を緩和する効果があります。首こりや眼精疲労に効果的です。

風池(ふうち):
首の後ろの筋肉の緊張を緩和する効果があります。頭痛や目の疲れにも効果的です。

これらのツボを組み合わせて使用することで、相乗効果を発揮し、患者さまの症状改善に大きく貢献しました。

まとめ

今回の症例を通して、東洋医学の視点から目の不調を捉え、鍼灸治療がその改善に有効であることが示されました

とくに、ストレスや血流の滞りが目の状態に大きく影響すること、そして心身のバランスを整えることが重要であることを改めて認識しました。

当院では、患者さま一人ひとりの症状や体質に合わせた丁寧なカウンセリングと的確な治療を心掛けております。

今回の患者さまのように、西洋医学的な治療で改善が見られない場合や、他の治療法も試してみたいとお考えの方は、ぜひ一度鍼灸をお試しください。
目の不調でお悩みの方々が、この記事を通して鍼灸治療の可能性を知っていただければ幸いです。

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