全身の倦怠感、不眠、自律神経の乱れへの鍼灸症例
自律神経失調症(ダルさや不眠)への鍼灸治療
現代社会において、ストレスや生活環境の変化は、私たちの心身に大きな影響を与えます。
当院では、東洋医学の観点から自律神経失調症にアプローチし、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧な鍼灸治療を行っています。
今回は、全身の倦怠感、不眠、自律神経の乱れを訴える30代女性の症例を通して、当院の鍼灸治療がどのように心身の調和を取り戻し、患者様の生活の質を高めるのかをご紹介します。
同じような症状でお悩みの方々に、鍼灸治療という選択肢を知っていただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
30代の女性
鍼灸院に来るまでの経緯:
1年前に引っ越しと転職を経験し、生活環境が大きく変化したことがきっかけで、様々な不調を感じるようになりました。
主な症状は、全身の倦怠感、重い感じ、不眠です。
とくに倦怠感は著しく、「とにかくダルイ、全身重い」と表現されるほどでした。
また、足のむくみも強く、足の重さも倦怠感を増長させる要因となっていました。
不眠も深刻で、以前はよく眠れていたにもかかわらず、この頃から眠りにつくことが難しくなり、睡眠薬に頼る日々を送っていました。
その他にも、
肩こり、腰痛、胃痛、下痢といった消化器系の不調、月経前症候群(PMS)に伴うイライラ感、そして10代から続く生理不順(30~90日間隔)など、複数の症状を抱えていました。
これらの症状は、患者様の日常生活に大きな影響を与え、心身ともに疲弊している状態でした。
当鍼灸院には、「これら一連のツラさが何とかならないか」という切実な思いで来院されました。
東洋医学的考察
東洋医学では、心身の健康は「気・血・水(き・けつ・すい)」という3つの要素のバランスによって保たれていると考えます。
このバランスが崩れると、様々な不調が現れるとされています。
この患者様の場合、全身の倦怠感、不眠、消化器系の不調、月経不順といった症状から、気血水の流れの滞り、とくに「痰飲(たんいん)」と「気滞(きたい)」が顕著であると判断しました。
「痰飲」とは、体内の水分代謝が滞り、余分な水分が体内に溜まった状態を指します。
足のむくみや消化器系の不調は、この痰飲の影響と考えられます。
「気滞」とは、気の流れが滞った状態を指し、倦怠感、不眠、PMSに伴うイライラ感などは、気の巡りが悪くなっていることが原因と考えられます。
これらの背景には、「脾虚(ひきょ)」、つまり消化器系の機能低下があると推察しました。
脾は飲食物を消化吸収し、気血水を生成する重要な臓器です。
脾の機能が低下すると、気血水の生成が滞り、全身に栄養が行き渡らなくなります。
さらに、精神的なストレスや生活環境の変化は、「心(しん)」と「肝(かん)」、つまり精神活動や自律神経系に影響を与え、不眠やイライラ感を引き起こします。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、当院では以下の治療方針を立てました。
・気血水の流れを改善し、特に痰飲と気滞を解消する。
・脾の機能を高め、気血水の生成を促進する。
・心と肝のバランスを整え、精神的な安定を促す。
・コリの強い部位には、局所的にアプローチし、血行を改善する。
これらの治療方針に基づき、全身へのアプローチと局所へのアプローチを組み合わせ、患者様の症状に合わせた最適な治療を提供することを目指しました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「肓兪」「太衝」「陽陵泉」「三陰交」「内関」に鍼(+円皮鍼)をし、足にホットパックを当てて体を温めました。
座ってもらい「肩こりの局所」に単刺+梅花鍼をしました。
うつ伏せで「風池」「心兪」~「腎兪」辺りの反応穴に置鍼をしました。
2回目から4回目(週に1回ペース):
1回目の施術内容を基本とし、患者様の状態に合わせて多少のアレンジを加えました。
首や肩こりの部位にはパルス鍼を併用したり、円皮鍼を貼付したりしました。
治療を重ねるごとに、患者様の状態は着実に改善していきました。
とくに不眠に関しては、睡眠薬の量を減らしても眠れるようになり、それに伴って倦怠感も軽減していきました。
気分も上向きになり、肩こりや腰痛も「コリはあるが辛くない」という程度まで改善しました。
ある程度の改善が見られたため、患者様と相談の上、一旦鍼灸治療は終了としました。
使用した主なツボとその代表的な効果
肓兪(こうゆ):
胃腸の機能を整え、消化不良や便秘、下痢などに効果があります。
太衝(たいしょう):
肝の機能を整え、精神的なイライラや不眠、月経不順などに効果があります。
陽陵泉(ようりょうせん):
胆の機能を整え、筋肉の痙攣や痛み、神経痛などに効果があります。
三陰交(さんいんこう):
脾・肝・腎の機能を整え、婦人科系の疾患や冷え性などに効果があります。
内関(ないかん):
心の機能を整え、動悸、息切れ、吐き気、精神不安などに効果があります。
風池(ふうち):
首や肩のコリ、頭痛、めまいなどに効果があります。
心兪(しんゆ):
心の機能を整え、動悸、不眠、精神不安などに効果があります。
腎兪(じんゆ):
腎の機能を整え、腰痛、冷え性、頻尿などに効果があります。
これらのツボを組み合わせて使用することで、全身のバランスを整え、様々な症状の改善に繋げました。
まとめ
この症例は、自律神経の乱れからくる倦怠感や不眠の典型的なケースでした。
首から肩にかけてのひどいコリが不眠を引き起こし、それが疲れや倦怠感に繋がっていました。
当院では、首肩のコリをしっかりと解消することで、この悪循環を断ち切ることに成功しました。
結果として、施術を行った分だけ改善が見られ、予想よりも早い改善となりました。
一定の改善が見られたため、患者様のご希望により鍼灸治療は終了となりましたが、東洋医学では「虚(きょ)」、つまり身体の根本的な弱りはすぐに改善するものではなく、時間をかけて補っていくことが重要です。
そのため、症状が改善した後も、間隔を空けて継続的な治療を行うことが理想的です。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧な問診と施術を心掛けております。
「どこに行っても良くならない」「長年悩んでいる」という方も、ぜひ一度当院にご相談ください。
東洋医学の力で、皆様の健康をサポートさせていただきます。
自律神経失調症の詳しいページはこちら
不眠症の詳しいページはこちら