ガス症状に長年悩む過敏性腸症候群(IBS)への鍼灸症例
過敏性腸症候群(IBS)への鍼灸治療
「お腹の調子が悪いと、何もかも楽しめない…」
そう感じる過敏性腸症候群(IBS)方は少なくありません。
人前でのお腹の張りや音、頻繁な便意への不安から、日常生活に大きな支障をきたしているのではないでしょうか。
今回は、18年もの間、ガス症状を主とするIBSと不安障害に苦しんでいた30代女性の症例です。
彼女は当院の鍼灸治療を通して、以前とは見違えるほど快適な生活を送れるようになりました。
同じような過敏性腸症候群に悩む方々に希望と当院の鍼灸治療の可能性を感じていただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
30代 女性
主訴:
・過敏性腸症候群(ガス症状)
・不安障害(人込みや密室への恐怖)
鍼灸院に来るまでの経緯:
18年前、高校生の頃からガス症状に悩まされる。
病院で「過敏性腸症候群」と診断され、整腸剤を処方されるも改善しませんでした。
大人数が集まる場所や密室への恐怖心が少しずつ強まっていきました。
学生時代、大人数で、教室にじっと座り、静かにしている環境が、ガス症状があるため非常に不安とストレスとなり、この頃が一番つらかったとのこと。
就職は販売職に就いたため、仕事で動き回ること多く、じっとしてるわけではないので逆に症状は多少緩和された気がしました(苦痛レベル10段階中7~6程度に軽減)。
今まで他でも鍼灸治療を試したが効果は一時的であったとのこと。
体質改善をすることで、さらなる改善を期待して当院を受診。
症状の特徴:
・リラックス時は症状が軽減。
・人混みや自由に動けない状況で悪化。
・冷えやすい時期や季節の変わり目に悪化傾向。
・生理1週間前から生理中に悪化。
・ガス症状がひどくなるとのぼせも出現。
彼女は高校生の頃から18年間もの間、ガス症状に苦しんでいました。
とくに、大人数が集まる場所や密室では、お腹の張りや音、頻繁な便意への不安から強い恐怖を感じ、日常生活に大きな支障をきたしていました。
東洋医学的考察
東洋医学では、彼女の症状を「気滞(きたい)」と捉えました。
「気」とは、体を構成し、生命活動を維持するためのエネルギーであり、その流れが滞ることで様々な不調が現れると考えます。
長年のストレスや不安により気の流れが滞り、特に消化器系に影響が出ている状態でした。
また、体型がやせ型であることからも「気虚(ききょ)」、つまりエネルギー不足の状態も併せ持っていると考えました。
気の巡りを司る「肝(かん)」、消化吸収を司る「脾(ひ)」、生命の根本的なエネルギーを蓄える「腎(じん)」の機能低下も考慮し、心身両面からのアプローチが必要と判断しました。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
気の巡りを改善する:
滞った気の流れをスムーズにする。
気血を補う:
不足しているエネルギーを補い、身体の機能を高める。
心身のバランスを整える:
ストレスや不安を和らげ、心身のリラックスを促す。
これらの目的を達成するために、鍼とお灸を組み合わせて治療することとしました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「期門」「天枢」「曲池」「陽陵泉」「太衝」に浅めの置鍼。「神闕」に棒温灸。
うつ伏せで、「風池」「心兪」「膈兪」「肝兪」「志室」「大腸兪」に鍼と点灸。
腹診をすると、腹部の張り、とくに上腹部の張りが著明でした。
全体的に痩せ型で、お腹は「硬い」というよりは「張っている」状態でした。
2~7回目(週1回~10日に1回ペース):
気の巡りを改善する「期門(きもん)」「天枢(てんすう)」「太衝(たいしょう)」「陽陵泉(ようりょうせん)」などのツボに鍼治療を行いました。
また、お腹を温める棒温灸や、体の深部を温める点灸を併用しました。
治療を重ねるごとに、お腹の張りが徐々に軽減し、ガスの量も減ってきたとのことでした。
治療期間中に、彼女が仕事で数時間の会議に出席しなければならない状況がありました。
以前の彼女であれば、このような状況は強い不安と症状の悪化を引き起こす要因となっていましたが、鍼灸を通して心身の状態が改善していたため、以前ほど苦痛を感じることなく乗り越えることができたとのことでした。
7回目終了時:
初診時から約2ヶ月半後、苦痛レベルは10段階中3程度まで改善しました。
日常生活における負担が大幅に軽減し、以前のようにガス症状を過度に気にすることが少なくなったとのことでした。
その後も、良い状態を維持するために、3週間程度の間隔で継続治療を行っています。
使用した主なツボとその代表的な効果
期門(きもん):
気の巡りを改善し、ストレスやイライラを和らげる効果があります。
天枢てんすう):
消化器系の機能を整え、便通を改善する効果があります。
太衝(たいしょう):
気の流れを整え、精神的な緊張を緩和する効果があります。
曲池(きょくち):
体の熱を冷まし、炎症を抑える効果があります。腸の働きを整える効果もあります。
陽陵泉(ようりょうせん):
筋肉や関節の痛みを和らげ、身体の動きをスムーズにする効果があります。
内関(ないかん):
胸の苦しみや吐き気、精神的な不安を和らげる効果があります。
神闕(しんけつ):
体の中心を温め、エネルギーを高める効果があります。腸の働きを整える作用があります。
背部兪穴(はいぶゆけつ):
五臓六腑と繋がっているツボ。それぞれの臓腑の機能を高める効果があります。
これらのツボを患者様の状態に合わせて適切に選択し、鍼灸治療を行いました。
まとめ
長年ガス症状に悩んでいた過敏性腸症候群(IBS)の患者様が、当院の鍼灸治療によって劇的に症状を改善させることができたことをご紹介しました。
彼女は18年間もの間、ガス症状による苦痛と不安に悩まされていましたが、2ヶ月ほどの治療で日常生活を快適に過ごせるまでに回復しました。
当院では、東洋医学の考えに基づき、患者様一人ひとりの症状や体質に合わせたオーダーメイドの治療を提供しています。
今回の症例のように、長年悩んでいる症状でも、諦めずに当院にご相談ください。
私たちは、皆様が心身ともに健康で快適な生活を送れるよう、全力でサポートさせていただきます。
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