吐き気つわりへの鍼灸症例

吐き気つわりの鍼灸治療

吐き気・つわり鍼灸

妊娠は女性にとって人生における大きな喜びの一つですが、同時に様々な体の変化を伴います。

その中でも多くの方が経験するのが「つわり」です。
吐き気、嘔吐、食欲不振など、その症状は人それぞれで、日常生活に支障をきたすほどツラい場合もあります。
とくに吐き気のみで嘔吐を伴わない「吐き気つわり」は、周囲に理解されにくく、我慢してしまう方も少なくありません。

このようなつらい「吐き気つわり」に対して、東洋医学に基づいた鍼灸治療で優しくサポートしています
今回は、当院で実際に治療を行った「吐き気つわり」の症例を通して、鍼灸治療の効果や当院の治療方針について詳しくご紹介いたします。

患者さまについて

年齢・性別:
30代の女性。

鍼灸院に来るまでの経緯:
現在妊娠9週目で、妊娠5週目頃からつわりが出始め、とくに吐き気に悩まされていました。

症状は徐々に悪化しており、「一日中つらいが、あえて言えば朝の方が良く、夕方・夜は特に辛い」とのことでした。
歯磨きをすると吐き気が悪化する傾向にありましたが、食事は少量ながらも摂れており、実際に嘔吐することはありませんでした。

今回は二人目の妊娠でしたが、一人目の時はつわりがほとんどなかった(もしくは軽かった)ため、今回のつわりのツラさに戸惑いを感じていました。

「疲れやすい」「肩こり」などの症状も併せて訴えられました。

東洋医学的考察

東洋医学では、つわりは「胎児を育むための母体の変化」と捉えます。
妊娠によって子宮に血が集まり、それが原因で胃腸の働きが乱れ、吐き気や嘔吐などの症状が現れると考えます。

また、気の巡りが滞ることで、吐き気や胸のつかえ、イライラなどの精神的な症状も引き起こされることがあります。

この患者さまの場合、以前から「疲れやすい」という訴えがあったことから、体力が低下している状態、すなわち「脾虚(ひきょ)」の状態にあると判断しました。
「脾」は消化吸収を司る臓腑であり、「脾虚」になると胃腸の機能が低下し、消化不良や食欲不振、倦怠感などの症状が現れやすくなります。

妊娠による体の変化に加え、もともとの「脾虚」が重なったことで、今回のつわりが強く現れていると考えました。

また、一人目の妊娠時にはつわりが軽かったことから、体質の変化や精神的な要因も考慮する必要があると考えました。

治療方針

まず「脾虚」を改善し、胃腸の働きを整えることを第一の目標としました。
具体的には、気血を補い、胃腸の気の巡りを改善するツボ(経穴)を選びました。

また、つわりの症状に合わせて、吐き気を抑えるツボや精神的な安定を促すツボも併用しました。

治療は、鍼とお灸を組み合わせて行い、体への負担を最小限に抑えながら、効果的に症状を緩和することを目指しました。

当院では、患者さま一人ひとりの体質や症状に合わせて、最適な治療方法を選択することを大切にしています。

治療経過

1回目:
仰向けで、「中脘(ちゅうかん)」に棒温灸。「内関(ないかん)」「曲池(きょくち)」「陰陵泉(いんりょうせん)」「太谿(たいけい)」に浅く鍼を刺し、「足三里(あしさんり)」には台座灸を行いました。
「内関」には円皮鍼を追加し、持続的な効果を期待しました。
うつ伏せで、「至陽(しよう)」に棒温灸。「心兪(しんゆ)」「隔兪(かくゆ)」「脾兪(ひゆ)」「腎兪(じんゆ)」に浅く鍼を刺した後、点灸を行いました。

2~6回目(週2回ペース):
計6回の治療を行いました。
治療を重ねるごとに、患者さまのつわりは徐々に軽減していきました。
妊娠12週目に入り、つわりが自然に落ち着く時期でもあったため、鍼灸治療の効果と自然経過の両方が影響していると考えられます。
症状が落ち着きつつあることから、患者さまと相談の上、鍼灸治療は一旦終了としました。

この患者さまには、つわりの他に「眠りづらい」「疲れ」「肩こり」「頭痛」などの症状もありましたが、鍼灸治療を通してこれらの症状も同時に改善されました。

使用した主なツボとその代表的な効果

内関(ないかん):
手首の内側にあるツボで、吐き気、嘔吐、胸のつかえなどに効果があります。
自律神経のバランスを整える作用もあります。

曲池(きょくち):
肘の外側にあるツボで、胃腸の働きを整え、気の巡りを改善する効果があります。

陰陵泉(いんりょうせん):
膝の内側にあるツボで、水分代謝を改善し、むくみや消化不良などに効果があります。

太谿(たいけい):
足の内くるぶしとアキレス腱の間にあるツボで、腎の機能を高め、体力の回復や冷えの改善に効果があります。

足三里(あしさんり):
膝の下にあるツボで、胃腸の働きを整え、消化不良や食欲不振などに効果があります。

心兪(しんゆ)、隔兪(かくゆ)、脾兪(ひゆ)、腎兪(じんゆ):
背部にあるツボで、それぞれ心、横隔膜、脾、腎の働きを整える効果があります。

中脘(ちゅうかん):
お腹の中央にあるツボで、胃の働きを整え、消化不良や吐き気などに効果があります。

至陽(しよう):
背中の中心線上にあるツボで、気の巡りを改善し、胸のつかえなどに効果があります。

まとめ

今回の症例では、鍼灸治療が「吐き気つわり」の症状緩和に有効であることが示唆されました。
とくに、もともと「脾虚」の傾向がある方の場合、鍼灸治療で体質を改善することで、つわりの症状を軽減できる可能性があります。

当院では、つわりの症状だけでなく、患者さま全体の体調や体質を考慮した上で、最適な治療プランをご提案いたします。
東洋医学の力で、つらい時期を少しでも快適に過ごせるよう、心を込めてサポートさせていただきます。

当院では、丁寧なカウンセリングを通して、患者さま一人ひとりの状態をしっかりと把握し、安心して治療を受けていただけるよう努めています。
つわりでお悩みの方は、我慢せずに、ぜひ当院にご相談ください。

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つわり(妊娠悪阻)