体外受精の移植時だけ鍼灸して効果あるか?
移植の時だけの鍼灸には効果があるか?
鍼灸院ほっと・ばらんすの答え
鍼灸を受けるタイミングに関しては「移植直後に受けると効果がある」という研究が広く世に出ています。
そのため「移植後に鍼灸した方が良いですか?」と聞かれることも少なくありません。
当院ではいつも以下のようにお答えしています。
「まず大事なのは普段からの継続的な施術です。」
「それさえできていれば、移植後でなければ!と思わなくても良いです。」
「ただし、時間の都合がつくようであれば、定期的に来ている施術日を移植後の日にちに設定するのもアリです。」
たとえば…、
●毎週土曜日に鍼灸を受けている人であれば、そのまま土曜日ごとに施術を受けることを基本としていただく。
●仮に移植が水曜日だったとしても、それを気にせず土曜日にいつも通り来るだけで良い。
●ただし、移植が水曜日だったとして、時間の都合がつくならその週だけ土曜日を水曜か木曜日に前倒して受けてもよい。
…ということです。
移植後の鍼灸を希望される患者さんの気持ちを高めるメリットはあるでしょうから「受けたい希望があり、可能であれば移植後に鍼灸にきてください」と言っています。
当院の鍼灸の目的は「妊娠しやすい体づくり(=体質改善)」です。
それはやはり1回2回の短期間の治療ではなしえませんので、継続的な治療が必要です。
逆に言えば、継続的に治療を受け妊娠しやすい体になるからこそ、ホルモン薬などの副作用を減らし良いコンディションができ、それで移植に臨めるので妊娠しやすいと考えます。
それが鍼灸の本来の狙いです。
鍼治療はIVFの出生率に効果がない!?
鍼灸の目的を教えてくれるような研究がありましたのでご紹介します。
『鍼治療はIVFの出生率には効果がない』
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/05/180515113622.htm
胚移植(ET)の前後に行われた鍼治療の効果を調べた研究です。
【方法と結果】
IVF(体外受精)を受けた18歳~42歳の女性848人を、鍼治療群(キチンと鍼施術する)とニセ鍼治療群(真のツボから離れた場所に鍼を刺す)に分ける。
排卵前と胚移植の日に鍼治療を行った。
結果は、鍼治療を受けた参加者の出生率は18.3%であったのに対し、ニセ鍼治療を受けた患者は17.8%であった。
鍼治療群の効果はニセ鍼治療群と比べて優位とは言えない(=効果はない)、とされた。
【考察】
研究論文には以下のような補足がある。
・もっと頻繁な鍼治療ができなかったのは我々の試行の限界だったとSmith教授は述べている。
・鍼治療と無治療とを比較した場合には、妊娠・出産の結果が改善する可能性がある。
・短期間の鍼治療は統計的に効果が確かではなかったが、IVFを受ける女性にとって鍼治療は心理社会的利益があることが報告されている。
・鍼治療が、リラックス作用やストレス緩和作用や感情の好転を生むのであれば、IVFを受ける際に鍼をすることは歓迎されるべきだ。
いかがでしょうか。
この研究からどのような感想を持ちますか?
まとめ
本来、鍼灸のメリットは「ストレス緩和」「リラックス」「自律神経の調和」「疲れをとる」「温める」「血流改善」などです。
それを妊娠のために活用するのが不妊鍼灸です。
これらの効果は、1~2回の治療で劇的に現れるわけではありません。
慢性のガチガチの肩こりが1回の鍼でスッキリとはいかないように、骨盤内の血流が悪い婦人科系の環境が1回の鍼灸治療で激変することはありません。
時間をかけてできた状態(症状)には、改善のためにも時間がかかるのは鉄則です。
鍼灸治療は魔法ではないので、緩める作業・温める作業・整える作業を地道に繰り返すことで、本当に定着していくものだと考えます。
当院では不妊の鍼灸では、6か月程度のお時間を考えて下さい、とお伝えすることが多いです。
そのくらいの時間軸をかけて体を変えていきましょう。
そのころには、移植の前後に鍼灸をする・しないを考えなくても良い状態になるよう、心を込めて施術していきます。
おまかせください。