不眠や自律神経の乱れがある方の妊活鍼灸の症例

不眠や自律神経の乱れがある方の妊活鍼灸

不眠と自律神経の乱れのある方への妊活鍼灸

患者さま

30代 女性

初来院

2021年12月11日

お悩みの症状

一人目不妊

初来院までの経過

2年前に妊活開始、まずは自分たちでタイミングを取る。
半年して授からなかったので婦人科病院に行き、検査するも問題は指摘されず。

その後、自分たちでのタイミングを継続する中で妊娠する(約1年前)。
しかしこれは妊娠8~9週で妊娠継続できず処置をする。

心身の体調不良となり、いったん妊活自体を中止。
半年前に、自律神経失調症で病院にかかり漢方薬を処方される。

5ヶ月前から婦人科再開。
まずは風疹のワクチン接種をしたので妊活は2ヶ月休む。
2ヶ月前から婦人科でタイミング指導を2回受けたが授からず。

現在、不妊専門病院に転院しての体外受精を検討中。
ちょうど初めて受診してきたばかり。

その他の症状。
自律神経の乱れ(手足は冷たいが顔がほてって汗が出る)。
(3年ほど前にうつ症状を患ったこともある)
不眠(寝つきが悪い)。
胃痛になりやすい。
疲れ。

治療方針

気血の巡り(とくに気の巡り)が悪い体質であり、「心」「肝」の気滞が強い。
気の巡りを促進するツボ・リラックスできるようなツボも多めにする。
婦人科に関しては、体の疲労感もあるし年齢(40歳に近い)からも「腎虚」もあるとみて腎のエネルギーを補うツボも多くする。

治療と経過

1回目。
「中脘」「関元」に温灸。「合谷」「足三里」「陰陵泉」「太衝」「太谿」に置鍼。「三陰交」にせんねん灸。「太衝」に円皮鍼を追加。足先にホットパック。「風池」「心兪」「肝兪」「腎兪」「次髎」に置鍼。「脊中」「命門」に温灸。

2回目(1週間後)。
「鍼を刺した部位に発赤が残り、円皮鍼はかゆみが出る」とのこと。
金属アレルギーだろうと考え、以後、置鍼はやめて単刺にし、円皮鍼は使わずパイオネックスゼロを使うことにする。
施術内容は、おおむね1回目同様。

3~8回目(1週間に1回ペース)。
内容はおおむね1回目同様だが、下腹部にお灸追加することが増える。
棒温灸は下腹部(大巨辺り)・腰(腎兪辺り)が多くなる。
その時々で胃痛や不眠を訴えるので、それに合わせてツボを加減し、パイオネックスゼロを「内関」「太衝」などに貼る。

9・10回目(3週間ごと)
不妊専門病院で採卵し、結果2個の胚盤胞の凍結卵ができたと聞く。
この頃、抜歯治療があり、鍼灸も間隔があく。
施術の基本的な内容は、おおむね1回目同様。

11・12回目(1週間ごと)
移植の周期開始。
緊張のせいか、寝つきの悪さが増して、胸が詰まるような感覚がある。
「神門」か「内関」にお灸追加。「神道」~「至陽」の反応点にパイオネックスゼロ追加。

13回目(1ヶ月後)。
胚移植の結果は「陽性」だったが、ホルモン値が低いとのこと。
腰が重い。心なしか気持ち悪い。
「中脘」「関元」に温灸。「太衝」「太谿」に単刺。「三陰交」「足三里」「内関」のお灸。「心兪」「膈兪」「肝兪」「腎兪」にお灸。「至陽」「命門」に温灸。

14~16回目(1週間に1回ペース)。
胎嚢も確認でき、毎週の病院でのチェックも順調に経過。
それに併せて、つわり症状が少しずつ悪化してくる。
施術内容は、多少のアレンジはあれど13回目に準じる。

鍼灸16回目の時点で、妊娠9週になり不妊の専門病院も卒業となり、鍼灸も終了とする。

同時に治療した症状

・自律神経の乱れ。
・不眠。
・疲れ

まとめ

鍼灸開始から4ヶ月ほどで妊娠にいたったケース。
鍼を刺した部位がポチっと発赤痕になってしまうため、鍼を使わないという選択肢も提案したが「ポチっとした痕は大丈夫」とのことで、単刺で対応した。
単刺でも発赤してしまうので、このようなケースは珍しいが、治療は継続でき、体調に不具合もなかった。
ストレスや疲れで、心身に影響が出やすいタイプの方だったので、その時々に応じてツボを多少アレンジしつつ施術した。
また、なるべく話を聞くよう努めた。
結果的に初回の体外受精で妊娠できた。
前回の稽留(けいりゅう)流産の不安もあったことと思うが、妊娠の最初期は維持でき、患者さんとして鍼灸でなしたいことは果たせたと判断いただいたようである。