生理不順と多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)からの自然妊娠の鍼灸症例

生理不順とPCOSからの自然妊娠の鍼灸治療

生理不順とPCOSのある方への鍼灸症例

不妊に悩むご夫婦の中でも、生理不順や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、妊娠を希望される女性にとって大きな壁となることがあります。

当鍼灸院では、東洋医学の観点からお一人おひとりの体質に合わせた丁寧な施術を行い、多くの方々の妊娠をサポートしてまいりました。

今回は、生理不順とPCOSにお悩みだった30代女性が、鍼灸治療を通して自然妊娠に至った症例をご紹介いたします

患者さまについて

年齢: 30代

性別: 女性

主訴: 第一子不妊

既往歴:
元々生理不順(周期40~90日)。
3年前に6ヶ月間生理が来なかったため病院を受診し、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断される。
その後、ピルと漢方薬を処方される。

不妊治療歴:
8ヶ月前から妊活を開始し、婦人科を受診。
「ピルを3ヶ月服用後、排卵誘発剤を使ったタイミング療法を開始」と提案される。
タイミング療法を2ヶ月間行うも妊娠に至らず。
その後、不妊専門病院への転院を検討していた。

その他の症状:
便秘、軽度の疲労感

この患者さまは、生理不順という長年の悩みを抱え、PCOSの診断を受け、西洋医学的な治療も経験されていました。
しかし、なかなか妊娠に至らず、精神的にも大きな負担を感じておられました。
当鍼灸院院へは、西洋医学以外の効果の期待できる方法を求めていらっしゃられました。

東洋医学的考察

東洋医学では、人間の身体は「気・血・水」のバランスによって維持されていると考えます。
とくに女性の生殖機能は、「腎(じん)」、「肝(かん)」、「脾(ひ)」の働きと深く関わっています。

「腎」は生命の根源となるエネルギーを蓄え、成長や発育、生殖機能を司ります。
「肝」は血の流れをスムーズにし、精神状態を安定させる役割を担います。
「脾」は飲食物からエネルギーを作り出し、全身に栄養を運びます。

この患者さまの場合、長年の生理不順やPCOSの診断、そして疲労感といった症状から、「腎虚(じんきょ)」、つまり腎のエネルギー不足が顕著に見られました。

また、不妊のストレスや便秘といった症状から、「気滞血瘀(きたいけつお)」、つまり気血の巡りが滞っている状態も併せ持っていると考えられました。

治療方針

上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。

「補腎(ほじん)」:
腎のエネルギーを補い、生殖機能を高める。

「疏肝理気(そかんりき)」:
肝の働きを整え、気血の巡りを改善する。

「健脾益気(けんぴえっき)」:
脾の働きを助け、全身に栄養をしっかりと行き渡らせる。

これらの治療方針に基づき、鍼灸治療を通して身体全体のバランスを整え、自然な妊娠力を高めることを目指しました。

治療経過

1回目:
「中脘」「関元」に棒温灸。
「肓兪」「曲池」「足三里」「太衝」「太谿」に置鍼。
「三陰交」にせんねん灸。
「風池」「心兪」「肝兪」「腎兪」「次髎」に置鍼。
「神道」「命門」に棒温灸。

全身の状態を把握し、上記の治療方針に基づいたツボを選択し施術。
棒温灸と鍼を組み合わせ、リラックス効果も高めるように配慮。

2回目(2週間後):
便秘の改善が見られる。
施術後1週間で生理が来たとの報告を受ける。
この頃、新しい婦人科クリニックに転院し検査を開始。
施術内容は前回とほぼ同様。

3~6回目(2週間に1回ペース):
病院での検査結果は「PCOS」「AMH値低い」「ビタミンDを多く摂るように」との指摘を受ける。

「排卵誘発剤を用いたタイミング療法を次から行う」と説明を受ける。
鍼灸治療は、患者様の状態に合わせて微調整を行いながら継続。

7回目(2週間後):
病院から「生理周期が50日になっても生理が来なかったら受診するように」と言われていたが、生理予定日を過ぎても生理が来ないため、自身で妊娠検査薬を使用したところ陽性反応が出たとの報告を受ける。
病院でも妊娠が確認されたが、「まだはっきりしない」とのことで1週間後に再度受診予定とのこと。

7回目の鍼灸治療の日は、その再受診日であり、施術後に病院へ向かう予定であった。
この日の施術は、妊娠初期であることを考慮し、刺激量を抑えた施術を行った。

その後、無事に妊娠が継続していることを確認し、一旦鍼灸治療は終了となりました。

使用した主なツボとその代表的な効果

中脘(ちゅうかん):
胃の不調を整え、消化吸収を促進。

関元(かんげん):
下腹部の冷えを改善し、生殖機能を高める。

足三里(あしさんり):
全身の機能を高め、免疫力を向上。

太谿(たいけい):
腎の機能を補い、ホルモンバランスを整える。

三陰交(さんいんこう):
女性特有の症状に効果があり、生理不順や不妊に用いられる。

肝兪(かんゆ)・脾兪(ひゆ)・腎兪(じんゆ):
それぞれ内臓系の働きを整える。

これらのツボは、東洋医学の古典に基づき、長年の臨床経験を通して効果が実証されているものです。
患者さまの状態に合わせて、これらのツボを適切に組み合わせることで、最大限の効果を引き出しています。

まとめ

この症例では、鍼灸治療開始からわずか2ヶ月ほどで自然妊娠に至りました

病院での治療(排卵誘発やホルモン補充など)を行っていない周期であったため、鍼灸治療が身体を整える一因になったことは明らかです。

この結果は、当院の鍼灸治療が不妊でお悩みの方々にとって、有効な選択肢の一つであることを示しています。

当院では、西洋医学と東洋医学の両方の視点から、患者様一人ひとりに最適な治療を提供することを心がけております。
不妊でお悩みの方は、鍼灸で全力でサポートさせていただきます。

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