自律神経失調症(めまいと高血圧)への鍼灸症例
自律神経失調症(めまいと高血圧)への鍼灸治療
当院では、患者様一人ひとりの症状に真摯に向き合い、東洋医学の深い知恵と最新の知見を融合させた鍼灸治療を提供しております。
今回は、めまいと高血圧に悩まされていた50代女性の症例をご紹介いたします。
この方は、1週間前から続く不快な症状に苦しんでおり、病院での治療に加え、当院の鍼灸治療を選択されました。
この記事を通して、当院の治療に対する考え方や効果、そして東洋医学の可能性についてご理解いただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
50代 女性。
鍼灸院に来るまでの経緯:
4年前にもクラクラするめまい・高血圧という同様の症状がありました。
当時は3日間ほどで自然に回復しました。
不眠、血圧高め、坐骨神経痛、慢性蕁麻疹、痰が絡むなどの慢性的な症状があります。
複数の医療機関を受診中です。
1週間前の昼頃から気分が悪くなり、顔のほてり、発汗、血圧上昇(197/130、脈拍120)などの症状が出現しました。
その後、血圧は一時的に落ち着いたものの、食欲不振が続いています。
病院を受診し、血液検査では異常なしと診断されました。
点滴と漢方薬の処方を受けるも、症状の変動が激しく、横になっている方が楽な状態が続いています。
肩こりも強く、体力も低下気味とのこと。
この患者様は、複数の慢性的な疾患を抱えており、今回の症状もその影響を受けている可能性がありました。
とくに、4年前にも同様の症状を経験していることから、体質的な要因も考慮する必要がありました。
東洋医学的考察
東洋医学では、心身のバランスの乱れが病気の根本原因と考えます。
今回の患者様の症状を東洋医学的に考察すると、以下の病証が考えられました。
心血虚(しんけっきょ):
「心」は血を主り、精神活動を司ると考えます。血の不足により、めまい、不眠、精神不安などの症状が現れます。
脾虚湿生(ひきょしっせい):
「脾」は飲食物を消化吸収し、全身に栄養を運ぶ役割を担います。
脾の機能が低下すると、体内に余分な水分(湿)が溜まり、めまい、食欲不振、痰などの症状を引き起こします。
気滞上亢(きたいじょうこう):
ストレスや精神的な緊張により、気の流れが滞り、上半身に気が過剰に上昇する状態です。
これにより、高血圧、顔のほてり、イライラなどの症状が現れます。
これらの病証が複合的に関与していると判断し、心身全体のバランスを整える治療を行うことを決定しました。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
心血を補う:
血を補い、精神を安定させることで、めまいや不眠の改善を目指します。
脾の機能を高める:
消化吸収機能を高め、体内の余分な水分を取り除くことで、めまいや食欲不振、痰の改善を目指します。
気の流れを整える:
気の滞りを解消し、上半身に上昇した気を下げることで、高血圧や顔のほてりの改善を目指します。
これらの治療方針に基づき、鍼灸治療と温灸を組み合わせて行いました。
治療経過
1回目:
仰向けで、 「中封」「太谿」「足三里」「合谷」「曲池」に置鍼をし、「中脘」に棒温灸のちお灸を施しました。足先にホットパックを当て温めました。
うつ伏せで、「風池」「心兪」「肝兪」「腎兪」に置鍼、「胸椎4番辺り」「命門」に棒温灸をしました。
2回目(4日後):
1回目の治療後、一時的に血圧が上昇したことがあったものの、その後めまいは改善傾向とのことです。
仕事の疲れが見られたため、1回目と同様の施術に加え、腹部への温灸を増やし、「曲池」を「内関」に変更し鍼のあとに円皮鍼を貼りました。
3回目(6日後):
めまいはほぼ消失しました。
不眠や坐骨神経痛は残存しています。
2回目と同様の施術を行い、めまいが一番の悩みでそれが改善したため、患者さまと相談のうえ、鍼灸治療は一旦終了としました。
3回の治療で、患者様の主訴であっためまいはほぼ消失しました。
これは、鍼灸治療が急性の症状に対して迅速な効果を発揮することを示す好例と言えるでしょう。
使用した主なツボとその代表的な効果
中封(ちゅうほう):
足の厥陰肝経のツボ。肝経の気を整え、精神安定作用があります。
太谿(たいけい):
足の少陰腎経のツボ。腎の機能を高め、水分代謝を改善します。
足三里(あしさんり):
足の陽明胃経のツボ。胃腸の働きを整え、全身の機能を活性化します。
合谷(ごうこく):
手の陽明大腸経のツボ。気の流れを整え、鎮痛作用があります。
曲池(きょくち):
手の陽明大腸経のツボ。上半身の熱を冷まし、血圧を下げる効果があります。
内関(ないかん):
手の厥陰心包経のツボ。精神を安定させ、吐き気や動悸を鎮めます。
中脘(ちゅうかん):
任脈のツボ。胃腸の働きを整え、消化不良を改善します。
風池(ふうち):
足の少陽胆経のツボ。首や肩のコリを和らげ、めまいや頭痛を改善します。
心兪(しんゆ):
背部の兪穴。心の機能を高め、精神を安定させます。
肝兪(かんゆ):
背部の兪穴。肝の機能を整え、気の流れをスムーズにします。
腎兪(じんゆ):
背部の兪穴。腎の機能を高め、水分代謝を改善します。
命門(めいもん):
背部のツボ。全身のエネルギーを高め、活力を与えます。
これらのツボを適切に組み合わせることで、患者様の症状に合わせた効果的な治療を行うことができました。
まとめ
今回の症例では、鍼灸治療がめまいと高血圧の改善に有効であることが示されました。
とくに、急性の症状に対しては、比較的短期間で効果が現れることが多いです。
しかし、この患者様は複数の慢性疾患を抱えており、根本的な体質改善には継続的な治療が必要となります。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なカウンセリングと的確な治療を提供しております。
慢性的な症状でお悩みの方、病院での治療に加えて鍼灸治療を検討されている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
めまい鍼灸の詳しくはこちら