抗がん剤の副作用(吐き気・食欲不振)の鍼灸症例

抗がん剤の副作用(吐き気・食欲不振)

その他症例3:抗がん剤の副作用(吐き気・食欲不振)

患者さま

20代 男性

初来院

2017年2月19日

お悩みの症状

大腸がんの術後抗がん剤の副作用による吐き気(食欲不振)

初来院までの経過

半年前(2016年8月)に下血があり、病院に行き検査を受け「大腸がん」と診断。
リンパ節転移あり。ステージ3。
11月に手術にて病巣摘出。
1ヶ月前(2017年1月)から抗がん剤の治療がスタート。
点滴での抗がん剤を開始してから、手足しびれ・味覚障害・吐き気・食欲不振が出てきてつらい。
便秘やだるさもあり。
「副作用が出やすいタイプ」と医師からも指摘される。
食べることは好きだったので、吐き気や食欲不振あり食べられないことがストレスである。

治療方針

お腹の張り(硬直)も強く、元々ストレスを抱えやすいタイプとのことで、たしかに「肝うつ」傾向が強い。
抱え込んで頑張ってしまうタイプとお見受けする。
手術や抗がん剤の影響、継続している仕事のせいで疲れが取れないこともあり、気血虚もある。
まずは、とくに胃の働きと手足への気血の巡りを整えることを最優先する。
精神的なリラックスを意識して背部兪穴(心~肝兪)も重要視する。

治療と経過

1回目。
「合谷(+台座灸)」「内関」「足三里」「太衝」「期門」「天枢」に鍼。「膏肓」「心兪」「肝兪」「腎兪」に鍼+温灸+円皮鍼。肩こりの部分に単刺。
2回目~10回目(1週に1回のペース)。
その都度の訴えにあわせ調整はしつつも、おおむね同様の治療を継続する。
抗がん剤を定期的にするので、投薬後は体調が落ち、休薬中はラクになる周期を繰り返す。
鍼灸開始当初は仕事も過労気味であったが、4月からは休職に入り疲れは少しずつ改善。
全身のだるさや手指の皮膚荒れ・味覚障害などがあったが、食事に関しては改善。
食欲への不満はなくなった。
11回目~17回(2週間~4週間ごと)。
施術内容は継続で行う。
休職を利用してプライベートの活動も少しずつはいり、鍼灸の回数も減少。
今までの抗がん剤治療もこの時期に終了。
鍼灸開始後5ヶ月たった2017年7月に、病院でのCT検査など諸検査を行い「問題なし」。
半年に1回の経過観察に移行する。
この時点で鍼灸もいったん終了とする。

同時に治療した症状

・頭痛
・肩こり
・熱っぽくだるい
・ストレス
・疲労

まとめ

年齢も若く今まで大きな病気をしてこなかっただけに、発病のショックはいかばかりだったかと思う。
また、病院での治療の副作用のつらさも激しく、心身ともに疲弊した状態での初回であった。
鍼灸では「身体からのリラックス」をメインにすえ、「胃腸の働きを整える」ことにも副次的に重きを置き施術した。
どうしても抗がん剤の負荷は強く投薬後はつらい思いをされていたが、通う価値のある場所・治療方法だとはご判断いただけたようだ。
心身に寄り添う場でありたいと心がけたが、(男性に少なからず見受けられる)なかなか心を開いてくれないケースで、心(感情)にまで踏み込んだ関りが難しかった症例として記憶している。
もちろんこれは、当方のコミュニケーション技術や人間性の厚みにも大きく関係している。
大きな病気をされ、苦痛にある患者さんとどう接するか?
正しい解答はないのだろうがよくよく考えさせられた。

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