立ち座りや寝返りがつらい腰椎ヘルニアの鍼灸症例
腰椎ヘルニアへの鍼灸治療
腰痛は、現代人にとって非常に身近な症状の一つです。
とくに、立ち座りや寝返りといった日常的な動作で痛みを感じる腰椎椎間板ヘルニアは、生活の質を著しく低下させる要因となります。
病院での治療を受けてもなかなか改善が見られない、痛み止めの薬に頼る日々を送っているという方も少なくありません。
当院では、東洋医学に基づいた鍼灸治療で、このようなツラい腰痛に悩む患者様を数多くサポートしてまいりました。
今回は、腰椎椎間板ヘルニアに悩む60代男性の患者さまが実際に当院で治療を受け、改善した症例をご紹介いたします。
腰痛でお悩みの方々に、当院の鍼灸治療への理解を深めていただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
60代男性
鍼灸院に来るまでの経緯:
長年、慢性的な腰痛を抱えていらっしゃいましたが、2週間前に温泉旅行へ行った際、雪道を歩いたことがきっかけで症状が悪化しました。
右腰からお尻にかけての痛み、そして右足のしびれに悩まされ、日常生活にも支障をきたすようになっていました。
旅行後、2軒の病院を受診したものの、診断は「腰椎椎間板ヘルニア」。処方されたのは痛み止めの鎮痛薬のみで、効果はほとんど感じられなかったそうです。
座っている時は比較的楽なのですが、立ち座りや寝返りなど、動作時の痛みが特に辛いとのことでした。
さらに、この患者様は高血圧、高脂血症、高血糖、高尿酸といった生活習慣病も指摘されており(血圧は投薬治療中)、寝つきの悪い不眠にも悩んでいました。
体格は頑健に見えましたが、これらの情報から、身体の内部では血流が悪化していることが推察されました。
仕事のストレスも強く、精神的にも疲弊している様子が伺えました。
東洋医学的考察
東洋医学では、痛みは「不通即痛(ふつうそくつう)」、つまり「流れが滞ると痛みが生じる」と考えます。
今回の患者様の状態を東洋医学的に分析すると、長年の慢性腰痛に加え、旅行中の寒冷な環境での活動がきっかけで、腰部の気血の流れが著しく滞っている状態と考えられました。
また、生活習慣病の存在は、身体全体の血流の悪化を示唆しています。
血流が悪化すると、筋肉や神経への栄養供給が滞り、痛みを引き起こしやすくなります。
さらに、仕事のストレスは「気滞(きたい)」、つまり気の流れの滞りを引き起こし、痛みを増幅させる要因となります。
この患者様の場合、体格が良く、気血の量的には充実しているものの、その流れが滞っている状態でした。
これは、例えるなら、豊富な水量を誇る川が、何らかの原因で流れが堰き止められている状態と言えるでしょう。
この流れを再びスムーズにすることで、症状の改善が期待できると考えました。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、当院では以下の治療方針を立てました。
気血の巡りを改善する:
鍼灸治療によって、滞っている気血の流れを促進し、痛みを緩和します。
局所の痛みを緩和する:
腰部や臀部、足のしびれに対する局所的な治療を行い、直接的に痛みを和らげます。
全身のバランスを整える:
全身の経絡の流れを調整することで、身体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めます。
精神的な緊張を緩和する:
ストレスによる気滞を改善し、心身のリラックスを促します。
この患者様は気血が充実しているため、比較的強めの刺激で、気の巡りをしっかりと促す治療を選択しました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「中脘(ちゅうかん)」「関元(かんげん)」に棒温灸を行い体を温め気の巡りを促進しました。その後、「外関(がいかん)」「曲泉(きょくせん)」「復溜(ふくりゅう)」に鍼を施し、全身の気の流れを調整しました。
側臥位(横向き)で、腰痛から臀部痛の部位に、響かせるような鍼治療(1寸6分と2寸の鍼を使用)を行いました。
治療後、身体が温まり、腰回りが楽になったと仰っていました。
2回目(4日後):
腰の痛みは初診時の半分程度に軽減していました。
治療は基本的に前回と同様に行いましたが、局所に対してはお灸も併用し、より温熱効果を高めました。
患者様の表情も幾分か明るくなっており、効果を実感している様子でした。
3回目(仕事の関係で3週間後):
仕事が忙しく、身体に負担がかかっていたにもかかわらず、症状が悪化することはありませんでした。
痛みは元の慢性腰痛のような状態に戻っているとのことでした。
この時点で、日常生活に支障をきたすほどの痛みはほぼ消失していました。
今回は患者様のご都合により3回で治療を終了しましたが、本来であれば、この状態から「ぎっくり腰にならない身体づくり」のために、月1~2回の継続治療をお勧めしています。
使用した主なツボとその代表的な効果
今回の治療で使用した主なツボとその代表的な効果をご紹介します。
中脘(ちゅうかん):
おへその上、身体の中心線上にあるツボ。胃腸の働きを整え、全身のエネルギーの流れを活性化する効果があります。
関元(かんげん):
おへその下、身体の中心線上にあるツボ。生命エネルギーの源となる場所で、全身の活力を高める効果があります。
外関(がいかん):
手の甲側、手首の横じわから指3本分ひじ寄りにあるツボ。気の流れを整え、痛みを緩和する効果があります。
曲泉(きょくせん):
膝の内側、膝を曲げた時にできるしわの端にあるツボ。肝臓の機能を整え、血流を改善する効果があります。
復溜(ふくりゅう):
内くるぶしの後ろ、アキレス腱との間にあるツボ。腎臓の機能を整え、水分代謝を改善する効果があります。
腰部・臀部痛の部位:
痛みの出ている部位に直接鍼をすることで、局所の血流を改善し、痛みを緩和します。
これらのツボを組み合わせることで、全身の気血の流れを整え、局所の痛みを効果的に緩和することができました。
まとめ
当院の鍼灸治療が腰椎椎間板ヘルニアによるツラい腰痛に効果的であった症例でした。
とくに、気血が充実しているにもかかわらず、流れが滞っているタイプの方には、当院の治療は非常に有効です。
当院では、単に痛みを取るだけでなく、東洋医学に基づいた丁寧な問診を行い、痛みの根本原因を探り、一人ひとりの状態に合わせた最適な治療を提供しています。
今回の患者様のように、病院で治療を受けても改善が見られない、痛み止めの薬に頼りたくないという方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
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