【膝裏の痛み症例】正座や立ち座りで痛む膝が3回の鍼灸で改善した40代女性

膝の裏が痛くて正座ができない|40代女性の鍼灸症例

膝痛への鍼灸症例・写真1

※本記事は国家資格(はり師・きゅう師)を保有する院長が執筆しています。
※当院の実際の症例に基づきますが、患者様のプライバシー保護のため、個人が特定されないよう一部情報を変更して記載しております。
※効果には個人差があります。


「正座をしようとすると膝の裏が痛い」
「椅子から立ち上がるたびに違和感がある」
「歩いた後に膝裏がズキッと痛む」

このような膝の痛みが続くと、日常生活の何気ない動作がストレスになってしまいます。

今回ご紹介するのは、2か月ほど前から左膝裏の痛みに悩まされていた40代女性の症例です

整形外科を受診するほどではないものの、正座や立ち座り、長時間歩いた後の痛みが気になり、「このまま悪化したらどうしよう」と不安を感じて来院されました

また、慢性的な腰痛や肩こり、目の疲れ、更年期による生理不順なども抱えており、膝だけでなく全身の不調も重なっている状態でした。

当院では膝の局所だけでなく、身体全体のバランスも確認しながら施術を行った結果、3回の施術で日常生活ではほとんど気にならない程度まで改善しました。

この記事では、実際の施術経過とともに、当院がどのような視点で身体の状態を捉えたのかをご紹介します。

患者さまの情報と経緯

年齢性別・お住まい:
40代女・鎌ケ谷市在住

鍼灸院に来るまでの経緯:
主訴は左膝裏の痛みでした。

鍼灸院にご来院される2ヶ月ほど前から、とくに思い当たる原因もなく左の膝裏に痛みを感じ始めたとのことでした。
日常生活ではできない動作はないものの、特定の動作で痛みが強く現れるため、生活の質が低下しているのを感じていらっしゃいました。

具体的には、正座をしようとすると膝裏が痛くてできない、椅子から立ち上がったり、座ったりする時に膝裏に痛みが走る、たくさん歩いた後に痛みが悪化するといった状況でした。

痛む場所は常に左膝裏の特定の場所に固定されており、天気やその日の体調によって痛みの程度が大きく変動するわけではない、という特徴がありました。

「病院よりも鍼灸の方が自分の体には合っているかもしれない」と考え、当院へのご来院を決意されました。

膝痛以外の症状:
・仕事は長時間のデスクワークで、日頃からパソコンを使う時間が長く、肩こりや目の疲れ。
・立ちっぱなしや座りっぱなしでツラくなる慢性腰痛。
・更年期による生理不順。

これらの症状は、単に複数の不調が重なっているだけでなく、体の中で密接に関連し合っている可能性が考えられました。

この人を東洋医学ではどうみるか?

東洋医学では、人間の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素がバランスを取りながら循環することで健康が維持されていると考えます。
「気」は生命活動のエネルギー、「血」は全身に栄養を運ぶ血液とその機能、「水」は体液全般を指します。
これら3つのバランスが崩れたり、流れが滞ったりすることで、様々な体の不調や病気が引き起こされると考えます。

今回ご来院された患者さまの膝の痛みを、東洋医学的な視点から考察しました。

■血瘀(けつお)
まず、痛む場所が左膝裏に固定されており、特定の動作で悪化するという特徴から、膝裏の通り道である「足太陽膀胱経(あしたいようぼうこうけい)」という経絡(気の通り道)の「血瘀(けつお)」、すなわち血の流れの滞りが主な原因であると捉えました。

血瘀は、痛みやしびれを引き起こしやすく、痛む場所が固定されるのが特徴です。

なぜ、膝裏に血瘀が起きてしまったのでしょうか。
その背景には、患者さまが抱えていらっしゃる他の症状が深く関わっていると考えられます。

■腎虚(じんきょ)
長時間のデスクワークによる座りっぱなしや、慢性的な腰痛は、気の流れや血の流れを滞らせる大きな要因となります。
とくに腰は、東洋医学でいう「腎(じん)」と深い関わりがあります。
腎は、生命エネルギーを蓄え、成長・発育・生殖を司るだけでなく、水分代謝や骨・関節とも関連が深いとされています。

患者さまは40代で、更年期による生理不順も抱えていらっしゃいました。
これは、加齢や疲労などにより「腎」の機能が低下している状態、いわゆる「腎虚(じんきょ)」のサインと捉えることができます。

腎虚は、腰痛や膝の痛み、足腰のだるさ、むくみ、生殖機能の低下など、様々な症状を引き起こします。
腎の機能が低下すると、血を全身に巡らせる力も弱まり、血瘀が生じやすくなります。

■気滞(きたい)
また、パソコン仕事による肩こりや目の疲れは、「気滞(きたい)」、すなわち気の流れの滞りを示唆しています。
ストレスや緊張、運動不足などにより気の巡りが悪くなると、イライラしたり、肩や首が凝ったり、目が疲れたりといった症状が現れます。
気は血を巡らせるポンプのような役割も担っているため、気の流れが滞ると、それに伴って血の流れも滞り、「気滞血瘀(きたいけつお)」という状態になりやすいのです。

これらの考察から、この患者さまの膝裏の痛みは、単に膝だけの問題ではなく、慢性的な腰痛や更年期に伴う体質の変化、長時間のデスクワークによる全身の疲労や気の滞りといった、体全体のバランスの乱れ、特に「腎虚」「気滞」「血瘀」が複合的に関与して引き起こされていると診断しました。

治療方針

東洋医学的な考察に基づき、今回の患者さまの治療方針を立てました。

目標は、左膝裏の痛みを軽減し、立ち座りや歩行時の不便さを解消することですが、それだけでなく、慢性的な腰痛や全身の疲労感も改善し、体全体の調子を底上げすることを目指しました。

具体的な治療方針は以下の通りです。

■血瘀(けつお)の解消
膝裏の痛みの直接的な原因である血の滞りを取り除くために、膝裏のツボを中心にアプローチし、血行を促進します。

■気滞(きたい)の解消
全身の気の巡りを良くし、肩こりや目の疲れを緩和することで、血の流れが滞りにくい体を作ります。
ストレスや緊張による体のこわばりを緩めることも重要です。

■腎虚(じんきょ)の改善
慢性的な腰痛や更年期症状の背景にある腎の機能低下を補い、体全体の生命エネルギーを高めます。
これにより、足腰の力強さを取り戻し、疲れにくい体を目指します。

これらの目標を達成するために、膝の局所だけでなく、全身のバランスを整えるためのツボを組み合わせたオーダーメイドの治療を行います。

単に痛い場所に鍼を刺すだけでなく、患者さま一人ひとりの体質やその時の体の状態を細かく把握し、気の流れ、血の流れ、水の流れを調整することで、人間が本来持っている自然治癒力を最大限に引き出すことを重視します。

治療内容と実際の経過

1回目:
うつ伏せの状態で、まずは全身の緊張を緩め、気の巡りを整える目的で、首の後ろにある風池(ふうち)、背中の心兪(しんゆ)や肝兪(かんゆ)といったツボに鍼をしました。
これらのツボは、自律神経のバランスを整えたり、ストレスや疲労を緩和したりする効果が期待できます。
また、慢性的な腰痛に対して、腰の特にこりや張りが強い部位、東洋医学的に腎と関係が深いとされる腎兪(じんゆ)などのツボにも置鍼(しばらく鍼を置いたままにする方法)を行いました。

次に、主訴である左膝裏の痛みに対して、膝裏のほぼ中央にある委中(いちゅう)というツボにアプローチしました。
このツボは膝裏の痛みに非常に効果が高く、足太陽膀胱経の重要なツボです。この委中に対して、軽く響き(ズーンとするような感覚)が出る程度の刺激を与えてから置鍼を行いました。
これは、滞っている血の流れを力強く動かすことを意図しています。

さらに、腰の血行促進と、深部の冷えやこわばりを取る目的で、腰部のツボに点灸(てんきゅう)を数箇所施しました。
点灸は小さなお灸を使い、チクッとした熱刺激を与えることで血行を促進し、痛みを和らげる効果があります。
また、治療効果を持続させるために、腰のツボに円皮鍼(えんぴしん)という、非常に小さな鍼が付いたテープを貼付しました。
円皮鍼は貼ったまま日常生活を送ることができ、弱い刺激で持続的にツボを刺激します。

その後、仰向けになっていただき、体全体のバランスを整える治療を行いました。
足の内くるぶしの後ろにある太谿(たいけい)というツボに鍼をしました。
太谿は腎の機能を高める効果があり、腰痛や足腰の弱り、更年期症状など腎虚の症状に広く用いられます。

また、左ひざ周辺の痛む箇所や、膝の動きに関連するツボ(例えば、膝の内側にある内膝眼(ないしつがん)や膝の上の梁丘(りょうきゅう)など)にも置鍼を行い、局所の炎症や痛みを鎮静化させることを目指しました。

さらに、足の内くるぶしから指3本分上の三陰交(さんいんこう)というツボにも鍼をしました。
三陰交は、脾・腎・肝という3つの経絡が交わる女性にとって非常に重要なツボで、生理不順をはじめとする婦人科系の症状や、冷え、むくみ、消化器系の不調など、多岐にわたる効果が期待できます。

体全体の血や水の巡りを整える目的で使用しました。

2回目治療(1週間後):
初回治療から1週間後に再度ご来院いただきました。
患者さまからは、「膝裏の痛みが、前より少し軽減している」と改善を実感されているというお話を伺うことができました

前回の治療で良い変化が見られたため、基本的な治療方針は継続しつつ、患者さまのその日の状態に合わせて微調整を行いました。

3回目治療(10日後):
2回目の治療から10日後に3回目の治療を行いました。

治療内容は前回までに準じたものを行い、膝の痛みの状態や全身の調子を再度丁寧に確認しながら進めました。

治療後、患者さまとお話を伺ったところ、「まだ痛みは残っているものの、日常生活を送る上ではほとんど気にならなくなった。だいぶ楽になったので、一旦鍼灸はこれで終わりにしたいと思います」とのご希望をいただきました

患者さまご自身も改善を実感され、日常生活での不便さが解消されたことから、今回の鍼灸治療はこれにて終了となりました。

鍼灸師としての感想とまとめ

今回の症例は、原因がはっきりしない左膝裏の痛みに悩まされていた40代女性のケースでした。

来院時は、正座や立ち座り、歩行後などに膝裏へ痛みが出る状態で、2か月以上症状が続いていました。

当院では膝だけを見るのではなく、慢性的な腰痛や肩こり、更年期による体調変化なども含めて全身の状態を確認しながら施術を行いました。

その結果、3回の施術で日常生活に支障を感じない程度まで改善し、ご本人も大きな変化を実感されていました

私自身、膝の痛みを訴える患者さんを数多く施術してきましたが、実際には膝そのものだけでなく、腰や股関節の状態、日常生活の負担、身体全体のバランスが関係していることも少なくありません。

そのため当院では、痛みのある場所だけでなく全身を確認しながら、一人ひとりに合わせた施術を行っています。

・膝裏の痛みが続いている
・正座ができない
・立ち上がる時に膝が痛い
・病院では大きな異常がないと言われた

このようなお悩みがありましたら、一度ご相談ください。
お身体の状態を丁寧に確認しながら、改善に向けた施術をご提案いたします。

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