【鍼灸症例】30代PCOSの体外受精。繊細な体質を整え1ヶ月で妊娠へ
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)で体外受精へ|心身の負担を整え妊娠に至った鍼灸症例

※本記事は国家資格(はり師・きゅう師)を保有する院長が執筆しています。
※当院の実際の症例に基づきますが、患者様のプライバシー保護のため、個人が特定されないよう一部情報を変更して記載しております。
※効果には個人差があります。
「体外受精が決まったけれど、このままの体調で大丈夫だろうか…」
不妊治療を続ける中で、このような不安を抱える方は少なくありません。とくにPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は排卵障害を伴うことが多く、妊活そのものが大きな精神的負担になることもあります。
今回ご紹介するのは、PCOSによる排卵障害のため体外受精へ進んだ30代女性の症例です。痩せ型で疲れやすく、考えすぎや心配、不安が強い繊細な体質をお持ちでした。
当院では、移植前の体調管理を目的に鍼灸治療を開始し、心身の緊張を和らげながら妊娠しやすい環境づくりをサポートしました。
本記事では、東洋医学的な考え方や実際の施術内容、妊娠判定に至るまでの経過について詳しくご紹介します。
患者さまの情報と経緯
年齢・性別:
30代女性。
鍼灸院に来るまでの経緯:
結婚を機に妊活を開始してから1年2ヶ月後、当院を受診されました。
婦人科病院での検査で多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による排卵障害と診断され、排卵誘発剤を用いたタイミング療法を5回ほど試みましたが、結果に至りませんでした。
そのため、体外受精へのステップアップを決意しました。
体外受精専門の病院へ転院し、採卵にて23個の卵子を採取、うち6個が胚盤胞となり凍結保存されていました。
今後の移植に向けて、体調を整え、妊娠しやすい体づくりを目的として鍼灸を受けたく、当院へ来院されました。
この患者様の特徴は、婦人科系の疾患に加え、「やせ」と「疲れやすい」という体質的な弱さが見られたことです。
しかし、問診を進める中で、肉体的な疲労以上に、考え過ぎ、心配、イライラといった精神的な負担が大きいことが明らかになりました。
些細な刺激にも過敏に反応する傾向があり、心身ともに繊細なタイプであることが伺えました。
この人を東洋医学ではどうみるか?
東洋医学では、心と体は密接に結びついていると考えます。
この患者様の場合、精神的なストレスが気の流れを滞らせる「気滞(きたい)」、そして体を滋養する血(けつ)の不足である「血虚(けっきょ)」を引き起こしていると判断しました。
とくに、精神活動を司る「心(しん)」、気の巡りを管理する「肝(かん)」、消化吸収を担う「脾(ひ)」の機能低下が顕著でした。
「心血虚(しんけっきょ)」は、不安感や不眠、動悸などを引き起こし、「肝気鬱結(かんきうっけつ)」は、イライラや情緒不安定、月経不順などを招きます。また、「脾虚(ひきょ)」は、消化不良や倦怠感、食欲不振などを引き起こし、身体全体のエネルギー不足につながります。
これらの状態が複合的に重なり、妊娠しにくい身体の状態を作り出していたと考えられます。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、治療方針は「補心肝脾(ほしんかんぴ)」「疏肝理気(そかんりき)」「活血化瘀(かっけつかお)」を柱としました。
具体的には、心・肝・脾の気血を補い、気の巡りを改善し、血の滞りを解消することで、心身のバランスを整え、妊娠しやすい身体づくりを目指しました。
とくに、この患者様は刺激に過敏なため、鍼やお灸の刺激量を極力抑え、リラックスできる施術を心がけることを最優先としました。
精神的なケアも重視し、丁寧なカウンセリングを通して不安や心配を和らげ、心身ともにリラックスした状態で治療を受けていただけるよう努めました。
治療内容と実際の経過
1回目:
仰向けで、「天枢(てんすう)」「大巨(だいこ)」に浅く置鍼を施し、「曲池(きょくち)」「三陰交(さんいんこう)」「陽陵泉(ようりょうせん)」「太衝(たいしょう)」に浅く鍼を刺しました。足先にはホットパックを使用し、身体を温めました。
うつ伏せでは、「風池(ふうち)」「心兪(しんゆ)」「膈兪(かくゆ)」「肝兪(かんゆ)」「次髎(じりょう)」に鍼と円皮鍼を使用しました。
2回目から6回目(週に1回ペース):
刺激に過敏なため、棒灸などの温灸も「熱い」と感じやすい状態でした。
そのため、全体的にソフトな刺激での施術を徹底し、手足の冷えに対してはホットパックを使用しました。
配穴は、その時の体調に合わせて若干変更しながらも、「内関(ないかん)」「三陰交」「曲泉(きょくせん)」など、心と肝を意識したツボを中心に選択しました。
必要に応じて、弱いせんねん灸や0.3ミリの円皮鍼を追加しました。
4回目の施術後、移植が行われました。
6回目の施術前に判定日があり、陽性反応が出ました。
その後も、妊娠初期の体調管理のために継続して鍼灸治療を希望され、肝・脾・腎の働きを補うような配穴に変更し、さらにソフトな刺激に切り替えました。
妊娠6週頃からつわりの症状が出始めたため、「内関」「足三里(あしさんり)」「胃の六つ灸」などを鍼、灸、円皮鍼で刺激しました。
もちろん、刺激量は極力抑えました。
妊娠初期の大変な時期を無事に乗り越え、妊娠10週まで当院で鍼灸治療を受けられ、その後は近所の産婦人科へ転院されました。
鍼灸師としての感想とまとめ
今回の症例は、PCOSによる排卵障害があり体外受精に臨まれていた患者様が、移植前から鍼灸治療を取り入れ、妊娠に至ったケースでした。
東洋医学では、妊娠力を高めるためには婦人科系の問題だけでなく、ストレスや不安、自律神経の乱れなど心身全体のバランスを整えることも大切だと考えます。
とくに今回の患者様は非常に繊細で刺激に敏感な体質だったため、強い刺激を避けながら、一人ひとりに合わせた施術を行いました。その結果、心身の緊張が和らぎ、安心して移植に臨める状態づくりにつながったと考えています。
当院では、不妊治療中の方はもちろん、PCOSや排卵障害、ストレスによる体調不良でお悩みの方にも、体質や状態に合わせた鍼灸治療を行っています。
妊活中の心身の不調や不安を少しでも軽減したい方は、お気軽にご相談ください。
鍼灸を通じて、安心して妊活に取り組める身体づくりをサポートいたします。
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