30代の不妊、数回の流産経験がある鍼灸症例

30代の不妊、数回の流産経験がある

婦人科症例8:一人目不妊

患者さま

30代 女性

初来院

2017年5月13日

お悩みの症状

一人目不妊

初来院までの経過

7年前に結婚し、同時期より妊活開始。
自分たちでタイミングを取っていたが結果がでなかったので、3年前に婦人科クリニックを受診。
とくべつ問題を指摘されず、排卵誘発剤を服用してのタイミング療法からスタート。
6回の治療を受けたが結果が出なかったので転院。
新しい病院で人工授精(AIH)を行い、6回目で妊娠。
しかし10週目に流産。
病院での治療は1年ほど休み、1年前から再開。
ステップアップして体外受精を試みることにする。
その病院では2回採卵し、都度2個卵子が取れ1個受精したものを新鮮胚移植するが上手くいかず。
4か月前に転院。
その病院で橋本病を指摘されチラーヂン服用開始。
その後の採卵で2個胚盤胞の凍結ができ、1個を移植するも上手くいかず。
残った1個を移植する周期になり鍼灸を希望し来院

治療方針

間近に迫った移植に備え、短期的な治療を希望されているので、骨盤(下半身)の血流をよくし、全体のエネルギー状態を充実させておく治療をメインにする。

治療と経過

1回目(前日移植)。
「関元に温灸」「肓兪」「曲池」「足三里」「三陰交」「太渓」に鍼。「肩こりの部位に単刺」「隔兪~次リョウ」に鍼+温灸+円皮鍼。とくに腰部分にお灸追加。
2回目も同様(4日後)。
そこで一旦治療終了。
その後はご連絡がなかったので経緯は不明であった。

4か月後の同年9月。再度ご予約の連絡がある。
前回の移植は妊娠であったが、8週で流産であったとのこと。
また採卵から始めることになるので、鍼灸も併用したいとのご来院。
今度は少し継続的な治療を見据えてのスタート。
婦人科のエネルギーの不足(腎虚)があり、しっかりエネルギーを補うような治療を施しつつ、気血の滞りがあるので気血の促進を心がける。
(仕切り直し)1回目の治療。
「肓兪」「水分」「合谷」「太衝」「三陰交」に鍼。「関元」に温灸。「肩コリに単刺」「肝兪」「腰の硬結部分(+お灸)」に鍼。
2回目以降(4~7日ペース)。
鍼灸開始後の採卵の結果、1個の8分割胚を凍結できたので、次の周期で移植する。
低気圧で頭痛・肩こり悪化したり、坐骨神経痛の日があるなど、その時々にあわせてつらい部位への鍼灸のボリュームは調整しつつ、おおむね同じような内容で継続。
とくに腰痛の施術はパルスを用いるなどしっかり行う。
9回目の治療後に判定日を迎え、無事に陽性反応が出る。
再来院からちょうど2ヶ月経過。
その後も週1回の治療を継続。
つわり対策などをソフトな治療で行う。
妊娠週数10週を超え、不妊専門病院を卒業になったのを機に鍼灸も終了とする。

同時に治療した症状

・肩こり
・坐骨神経痛
・下半身の冷え
・疲れ感

まとめ

2回の妊娠に関わったケース。
1回目は「移植直後の鍼灸」という、言わばステレオタイプの不妊鍼灸を希望されていらしたケースで、妊娠はしたものの流産という結果に終わってしまう。
もちろん母体のコンディションのためか、赤ちゃんとして元々育つのが難しかったのかは不明である。
ただし、少しでも母体を良いコンディションに保つことで不安定要因を減らすことが、鍼灸で役立ちたいことのひとつだと考えている。
2回目の妊娠では、少なくとも採卵から移植まで1ヶ月半(計8回の施術)、かつ妊娠が分かった後も継続的にかかわれたのは良かった。
AMHの値が低い・腰痛~坐骨神経痛があることからも、年齢の割に腎虚がかなりうかがえたので、鍼灸のような虚を補う施術は効果を出しやすいと考える。