現代人はなぜ長生きできるのか?

現代人は不健康?

人生100年
鍼灸をしていると「現代人のカラダのマイナス面」がよく見えます。
運動不足や自律神経の乱れ、ストレス過剰などです。

結果、未病(半健康)な人が多く、そこに鍼灸を役立てて欲しい、という話になるわけです。
「まだ病気になっていないけど、半分病気に片足突っ込んでますよ」「このままではいずれ病気になりますよ」と。

これはたしかにある意味、事実だと思います。
生活習慣病(高血圧・高血糖など)などはまさにこれです。
ゆっくりと何年もかけてジワジワとカラダの健康レベルを下げていき、ある時「症状」となって出てくる頃にはなかなか厄介な状態だったりします。
歩かないし、ゴロゴロしているし、夜寝ないし、眼や頭ばかり使うし、接する情報量が多すぎて精神的にもアップアップしています。
食事の時間もいい加減だし、職場や家庭ではストレスでヒリヒリしているし。
現代日本は、こんな半病人みたいな人だらけである、と。

同時に「人生100年時代」などと言われます。
そんな半病人だらけなのに「100歳まで生きる人が多発する世の中になるだろう」と言います。
これはどういうことなのでしょうか?

昔の人は健康的な生活だったか?

昔の暮らし
ハッキリ言って推測ですが…。
まだ100年くらい前の話。
エアコンもパソコンも冷蔵庫もなく、電気は灯り以外あまり普及していない頃を想定しています。

出かけるにしても、家事するにしても、動く量は今より半端なく多かったでしょう。
また、多くが「人力」ですから、昔の人の平均的な体力は今より数段優れていたでしょう。
(昔の農家さんが米俵を複数背負って余裕、とか様々な実例アリ。)
食料事情も旬を意識しつつ地産地消的に賄えていた、でしょう。
衣や住は、確実に今よりは厳しい環境でした。

厳しい環境でも十分生きていけるような頑健なカラダを持つ人々が暮らしていた…、という生活が想像できます。

現代との違い

ではなぜ平均寿命が40や50歳だったのかと言えば、まず子供の死亡率が高かったからです。
乳幼児死亡率が高いと平均寿命は下がりますから、これは平均値のカラクリです。

大人になった人がどのくらいまで生きるのかと言えば、データが(みつから)ないのでよく分かりません。
幼少期の危機をサバイブできれば、あとはそれなりに生き残っただろうことは想像されます。
なかには70歳でも現役でバリバリ働く人もいたでしょうし、100歳になる人もいたでしょう。

ただ、その割合は少なかったようです。
それは生きている中でやってくるいくつかの「波」によって、生命力を低下させられたからだと考えます。
当時なにがきっかけで亡くなったのかと言えば「結核」「肺炎」「胃腸炎」「脳血管疾患」がメイン。
おもに感染症ですね。
感染症はどうしても流行る時期もあるし、衣食住が厳しい中だとよりリスクが高まります。
あとはその人の持つ免疫力・抵抗力・生命力との勝負ということですが、やはり感染症を治す方法(抗生剤など)がなかったために、頑健なカラダを持っていても亡くなってしまったのではないかと想像します。

今との違いはココですね。

カラダの仕組みがまだあまり分かっていなかったためにケガなどに対してのリハビリ含めたケアも不十分だったり、生活習慣病的なものの早期発見・早期ケアができなかったし、感染症には対処法がなかったし…。
素体の健康度が高くても、何かのきっけけでそれが崩れた時に止める手段のレパートリーが圧倒的に少なかったと思われます。

結局、健康レベル(この場合は生命力と言い換えてもOK)は加齢とともに下がっていきます。
生命力がゼロになればそれは死です。
(そうならないように生命力をいかに維持できるかが、長生きできるかということです。)
あるケガが十分に治りきらなければ、そこで健康レベルは一段下がってしまいます。
ある感染症で生き延びてもそこで生命力を損なえば、その分健康レベルが下がってしまいます。

素体の健康レベルが高くても、それを押し下げるイベントが、(生活環境が厳しいので)頻繁に発生したり、発生したイベントで十分回復しないことで、ドンドン生命力が損なわれていくので、結果、長生きできる人が少なかったのではないかと想像します。

現代人はなぜ長生きなのか?

医学の進歩
素体の健康レベルは以前に比べると下がっていることは容易に想像できます。
元気のレベルが違う。
弱々しくなった、のです。

でも同時に、環境のレベルも昔と随分変わりました。
衣類、住環境、食環境、衛生環境‥‥。
不便を補うモノや知識という、弱々しいカラダを包む外部環境が補強されています。
それを加味して「昔の人たちと同じような健康」を得ていると言えるかもしれません。

さらに医療の進歩もあります。
ケガや感染症などは「治る」病気になりました。
不慮の事故でも後遺症にならずに回復したり、罹りたくないけど罹ってしまった感染症も薬でスッキリ治ります。
そこで健康レベルが急激に下がることなく維持されます。

生命力が長続きするような環境に生きている、と言ってよいのでしょう。
だから、長生きできる、と。
100歳まで「守られながら生きている」と言ってもいいです。

まとめ

100歳
長生きできる環境が用意されている社会の良し悪しはわかりません。
もしくは問うても無駄です。
今まさに生きている「時代」「社会」がそうなのですから、それに適応していかなければいけません。
それは「自分なりの適応」です。
誰かが答えを出してくれるわけではない、オンリーワンの選択です。

これからの時代の悩みは「選択すること」「考えること」だと思います。

便利な方法があるけどわざと不便を選ぶ、無理すれば届くけどあえてあきらめる、今までにはない道徳や価値観を作り出す必要もあるかもしれません。

そんな時代になってきている気がします。