緑内障と慢性肩こりの鍼灸症例
緑内障と慢性肩こりへの鍼灸治療
緑内障は中高年層を中心に増加傾向にある目の疾患です。
視野の欠損が徐々に進行するため、早期発見・早期治療が重要とされていますが、診断を受けた患者様は将来への不安を抱えることが少なくありません。
また、長年の肩こりや首こりが目の疾患に影響を与えることも知られていますが、その関連性に着目した治療はまだ一般的とは言えません。
当院では、東洋医学の視点から緑内障と慢性的な肩こりの関連に着目し、患者様一人ひとりの体質に合わせた鍼灸治療を行っています。
今回は、当院で実際に治療を行った緑内障と慢性肩こりを併発していた患者様の症例を通して、当院の鍼灸治療がどのように症状の改善に貢献できるのかをご紹介いたします。
この記事を通して、緑内障でお悩みの方々、そして肩こりや首こりが気になる方々に、鍼灸治療という選択肢を知っていただれば幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
60代性
鍼灸院に来るまでの経緯:
40年以上もの間、首こり・肩こりに悩まされており、1か月前に飛蚊症と後頭部痛を感じたため眼科を受診したところ、「緑内障」と診断されました。
右目に視野欠損が見られるものの、日常生活に支障をきたすレベルではありませんでした。
しかし、眼圧は23と高く、将来失明するのではないかという強い不安を抱えて当院を受診されました。
初診時の問診では、もともと不安を感じやすい性格であること、血流が滞りやすい体質であることが分かりました。
長年の肩こりや首こりに加え、高血圧、疲れといった症状も抱えており、心身ともに疲弊している状態でした。
東洋医学的考察
東洋医学では、「肝は目に開竅(かいきょう)する」という考え方があります。
これは、肝の機能が目の状態に深く関わっていることを意味します。肝は血を貯蔵し、全身に血を巡らせる働きを担っており、ストレスの影響を受けやすい臓器でもあります。
今回の患者様は、長年の肩こりや首こりによって首肩周辺の血流が滞り、それが目に影響を及ぼしていると考えられます。
また、不安を感じやすい性格やストレスも肝の機能を低下させ、目の状態を悪化させる要因となっている可能性がありました。
さらに、東洋医学では「気血水(きけつすい)」という概念があります。
気は生命エネルギー、血は血液、水は体液を意味し、これらが体内をスムーズに巡ることで健康が維持されると考えます。
患者様は、気の不足である「気虚(ききょ)」の状態も見られ、それが気弱な性格や疲れやすさにつながっていると考えられました。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
血流促進:
首肩周辺の血流を改善することで、目に十分な血液が供給されるように促します。
肝の機能調整:
ストレスや不安を和らげ、肝の機能を正常に保つことで、目の状態を改善します。
気虚の改善:
気を補うことで、心身の活力を高め、病気に対する抵抗力をつけます。
リラックス効果:
鍼灸治療によるリラックス効果で、心身の緊張を和らげます。
これらの治療方針に基づき、患者様の体質や症状に合わせたツボ(経穴)を選定し、鍼とお灸を組み合わせて治療を行いました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「期門」「中脘」に棒温灸をしました。「合谷」「曲池」「太衝」「陽陵泉」に置鍼をしました。
うつ伏せで、「頭のブヨブヨする部位(百会辺り)」「心兪」「肝兪(+棒温灸)」「腎兪」「天柱」「風池」「肩コリの局所穴」に置鍼をしました。
初回の治療では、肩こりの局所や首の付け根、背中などのツボを中心に鍼とお灸を行いました。
治療後、患者様は少し疲れを感じたものの、翌日には身体が楽になったと報告されました。
その後、週に1回のペースで半年間治療を継続しました。
治療を重ねるごとに、肩こりは徐々に改善し、身体の疲れも軽減していきました。
定期的な眼科の検査でも、視野の悪化は見られず、眼圧も徐々に安定していきました。
何よりも大きかったのは、患者様の精神的な変化でした。治療を通して心身のリラックスを体感し、不安な気持ちが和らいでいったのです。
「この治療を続けていれば大丈夫」という安心感を持つようになり、前向きな気持ちで治療に取り組むようになりました。
現在は、目の予防と肩こり対策のために、2~3週に1回のペースで継続して通院されています。
使用した主なツボとその代表的な効果
治療で使用した主なツボとその代表的な効果をご紹介します。
期門(きもん):
肝の機能を調整する効果があります。
中脘(ちゅうかん):
消化器系の機能を整え、気の巡りを改善する効果があります。
合谷(ごうこく):
全身の気の巡りを改善し、鎮痛効果も期待できます。肩こりや目の疾患に効果的です。
曲池(きょくち):
血流を改善し、肩や腕の痛みを緩和する効果があります。
太衝(たいしょう):
肝の機能を調整し、精神的な安定をもたらす効果があります。
陽陵泉(ようりょうせん):
筋肉や関節の痛みを緩和する効果があります。肩こりなどに効果があります。
百会(ひゃくえ):
頭頂部に位置し、自律神経を整え、精神的な安定をもたらす効果があります。
心兪(しんゆ):
背中にあり、精神的な安定や血行促進に効果があります。
肝兪(かんゆ):
背中にあり、肝機能の調整や目の疾患に効果があります。
腎兪(じんゆ):
背中にあり、全身の機能低下や腰痛などに効果があります。
天柱(てんちゅう):
首や肩のコリ、眼精疲労に効果があります。
風池(ふうち):
首や肩のコリ、頭痛、目の疾患に効果があります。
これらのツボを患者様の状態に合わせて適切に組み合わせることで、より効果的な治療を行うことができました。
まとめ
今回の症例を通して、東洋医学に基づいた鍼灸治療が、緑内障に伴う不安や慢性的な肩こりの改善に有効であることが示されました。
とくに、心身のリラックスをもたらし、患者様の精神的な安定に貢献できたことは大きな成果と言えます。
当院では、患者様一人ひとりの症状や体質に合わせた丁寧な問診と施術を心掛けております。
これをお読みの方で、「緑内障と診断されて不安を感じている」「長年の肩こりに悩んでいる」という方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
東洋医学の力で、皆様の健康をサポートさせていただきます。
肩こり鍼灸の詳しくはこちら
緑内障鍼灸の詳しくはこちら