慢性の肩甲骨辺のコリの鍼灸症例

肩甲骨間のコリへの鍼灸症例

肩こり

現代社会において、仕事によるストレスは多くの人々が抱える深刻な問題です。
とくに、長時間労働や精神的なプレッシャーは、身体に様々な不調を引き起こし、肩や肩甲骨周辺のコリはその代表的な症状の一つと言えるでしょう。

肩甲骨周辺のコリは、首こりや背中の張り、頭痛などを併発することもあり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

当院では、このような仕事のストレスからくる肩甲骨のコリに対し、東洋医学に基づいた鍼灸治療を行っております。

今回は、30代男性の患者様の症例を通して、当院の鍼灸治療がどのように症状の改善に貢献できるのか、慢性症状にはやはり定期的な継続治療が必要である事実を感じさせられる実例をご紹介いたします。

この記事を通して、肩甲骨間のコリでお悩みの方に、鍼灸治療という選択肢を知っていただければ幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
30代男性

鍼灸院に来るまでの経緯:
デスクワーク中心の仕事で、長時間同じ姿勢でいることが多く、日常生活では運動不足気味を自覚しています。
お悩みは肩から肩甲骨にかけてのひどいコリです。

5年ほど前から肩から肩甲骨にかけてのコリを感じるようになり、仕事の疲れやストレスが溜まると症状が悪化することを感じています。
全身の倦怠感や冷えのぼせも感じます。

この患者様は、仕事のストレスが肩甲骨のコリの主な原因であることを自覚されており、当院を受診される以前にもマッサージなどを受けていたそうですが、一時的な緩和しか得られなかったとのことでした。

鍼灸でより改善できるのではと期待されての来院でした。

東洋医学的考察

東洋医学では、体の不調は「気・血・水(き・けつ・すい)」の巡りの乱れによって引き起こされると考えます。

この患者様の場合、長期間にわたる仕事のストレスにより「気」の巡りが滞り、それが肩甲骨周辺の筋肉の緊張やコリにつながっていると考えられます。
「気滞(きたい)」と呼ばれるこの状態は、精神的なストレスや緊張によって気の流れが滞ることで生じ、肩や首のコリ、イライラ、不眠などの症状を引き起こします。

また、患者様は全身の倦怠感や冷えのぼせも訴えており、これは「脾(ひ)」の機能低下による「湿(しつ)」の蓄積が関係していると考えられます。
「脾」は飲食物を消化吸収し、全身に栄養を送り届ける役割を担っていますが、ストレスや不規則な食生活などによって機能が低下すると、体内に余分な水分が溜まり、「湿」となります。
「湿」は重く粘着性があるため、身体の重だるさやむくみ、冷えなどを引き起こし、コリを悪化させる要因となります。

治療方針

上記の東洋医学的考察に基づき、この患者様の治療では以下の点を重視しました。

気の巡りの改善(疏肝理気:そかんりき):
ストレスによって滞った気の巡りをスムーズにし、肩甲骨周辺の筋肉の緊張を緩和します。

脾の機能の活性化(健脾利湿:けんぴりしつ):
脾の機能を高め、体内の余分な水分である「湿」を取り除くことで、身体の重だるさや冷えを改善し、コリの根本原因にアプローチします。

これらの目的を達成するために、鍼灸治療を中心に、必要に応じて温灸やホットパックなどを併用し、患者様の状態に合わせたオーダーメイドの治療を行います。

治療経過

1回目:
仰向けで、「膻中(だんちゅう)」「中脘(ちゅうかん)」への置鍼と棒温灸をしました。「内関(ないかん)」から「郄門(げきもん)」辺りの硬結部位と「太衝(たいしょう)」に置鍼。足にホットパックを当てて温めました。
うつ伏せでは、首から肩、肩甲骨にかけての「コリの部位」、「肝兪(かんゆ)」「脾兪(ひゆ)」「大腸兪(だいちょうゆ)」に置鍼をしました。

2回目(2週間後):
コリに変化なし。
基本的には1回目と同様の治療に、コリの部位にはパルス(低周波通電)も加えて治療。

3・4・5回目(2~3週間に1回ペース):
治療後は少し楽になるものの、すぐに元の状態に戻ってしまうとのこと。
仕事が忙しく、なかなか頻繁に通院できないため、その後は来院されなくなりました。

この症例では、患者様の仕事の都合により治療間隔が空いてしまったため、十分な効果を実感していただくことができませんでした。

しかし、治療後には一時的に症状が改善していたことから、当院の治療方針自体は適切であったと考えられます。
慢性的な症状の場合、特に仕事など日常生活の負担が継続している場合は、より短い間隔での継続的な治療が効果的です。

使用した主なツボとその代表的な効果

膻中:
胸部正中線上、左右の乳頭を結ぶ線の中央に位置します。気の巡りを整え、精神的な安定をもたらす効果があります。

中脘:
へそとみぞおちの中間に位置します。胃腸の働きを整え、消化不良や食欲不振、胃もたれなどに効果があります。

内関:
手首の内側、手首の横じわから指3本分肘側に位置します。吐き気や動悸、精神的な不安などに効果があります。

郄門:
手首の内側、内関からさらに肘側に位置します。血行を促進し、痛みを緩和する効果があります。

太衝:
足の甲、親指と人差し指の骨の間に位置します。肝臓の機能を整え、気の巡りを改善する効果があります。

肝兪:
背部、第9胸椎棘突起の下縁から外側1.5寸(約4.5cm)に位置します。肝臓の機能を整え、目の疲れや肩こり、イライラなどに効果があります。

脾兪:
背部、第11胸椎棘突起の下縁から外側1.5寸に位置します。脾臓の機能を整え、消化不良や食欲不振、むくみなどに効果があります。

大腸兪:
腰部、第4腰椎棘突起の下縁から外側1.5寸に位置します。腰痛や便秘、下痢などに効果があります。

まとめ

本症例を通して、仕事のストレスからくる肩甲骨のコリに対する鍼灸治療の可能性は十分あると感じます。
ただし、どうしても継続的な治療は欠かせないことをご理解いただけたかと思います。

当院では、患者様一人ひとりの症状や体質などから、最適な治療プランをご提案しております。

「仕事が忙しいから…」と諦めずに、ぜひ一度当院にご相談ください。
東洋医学の力で、あなたの辛いコリを根本から改善し、より快適な毎日を送るお手伝いをさせていただきます。
当院は、皆様の健康と笑顔を心より願っております。

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