正常眼圧緑内障への鍼灸症例

正常眼圧緑内障に対する鍼灸治療

眼病症例2:正常眼圧緑内障

緑内障は、視神経が損傷し視野が狭くなる病気で、放置すると失明に至る可能性もあります。
とくに、眼圧が正常範囲内にもかかわらず視神経に異常が見られる「正常眼圧緑内障」は、早期発見が難しく、進行を抑えるための適切なケアが重要です。

西洋医学では、眼圧を下げる点眼薬治療が一般的ですが、それだけでは症状の進行を十分に抑えられないケースも少なくありません。

当鍼灸院では、東洋医学の観点から全身のバランスを整え、自然治癒力を高めることで、緑内障の進行抑制と患者様のQOL(生活の質)向上を目指した治療を行っています。

今回は、正常眼圧緑内障と診断された50代男性の症例を通して、鍼灸治療がもたらす効果と、当院が大切にしている全身調整の考え方についてご紹介します

正常眼圧緑内障と診断され、西洋医学的治療に加えて何かできることはないかとお考えの方々に、鍼灸治療という選択肢を知っていただくとともに、当院の治療に対する理解を深めていただければ幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
50代男性

鍼灸院に来るまでの経緯:
1年前に健康診断で視神経が痩せている状態を指摘され、眼科を受診したところ「正常眼圧緑内障」と診断を受けました。
視野には幸い問題は見られなかったものの、将来への不安を感じ、点眼薬による治療を開始されました。

患者様はデスクワーク中心の仕事で、日頃から目の疲れ(眼精疲労)を感じており、首や肩のこり、時には後頭部の頭痛にも悩まされていました。
仕事柄、目を酷使する環境に加え、長時間同じ姿勢での作業が多いため、身体の血行不良も自覚されていました。

初診時、患者様は緑内障の進行に対する漠然とした不安を抱えながらも、日常生活を送る上では特に支障を感じていませんでした。

しかし、目の疲れや肩こり、頭痛といった症状は、仕事のパフォーマンスにも影響が出ており、根本的な改善を望んで当院を受診されました。

東洋医学的考察

東洋医学では、「肝は目に開竅(かいきょう)する」という考え方があります。
これは、肝の機能が目に密接に関わっていることを示しており、肝の血流や機能が低下すると、目に栄養が行き届かなくなり、様々な目の不調が現れると考えます。

また、肝は「疏泄(そせつ)」という、全身の気血の流れをスムーズにする働きを担っており、ストレスや精神的な緊張の影響を受けやすい臓腑でもあります。

この患者様の場合、冷え性で血行が悪く、首肩のこりも顕著でした。
東洋医学的に見ると、肝の疏泄機能が低下し、気血の流れが滞っている状態と考えられます。
とくに、首肩のコリは、目への血流を阻害する要因となり、視神経への栄養供給不足を招いている可能性がありました。

さらに、デスクワークによる目の酷使や精神的なストレスも、肝の機能を低下させる要因となっていたと考えられます。

治療方針

上記の東洋医学的考察に基づき、当院では以下の治療方針を立てました。

全身の血流改善:
冷えを改善し、気血の流れを促進することで、目への栄養供給を改善します。

肝機能の調整:
ストレスや精神的な緊張を和らげ、肝の疏泄機能を高めます。

首肩のコリの解消:
目への血流を阻害している首肩のコリを重点的に解消します。

これらの治療方針に基づき、鍼灸治療と温灸を組み合わせた施術を行いました。

治療経過

1回目:
仰向けで、「関元」「中脘」に棒温灸をしました。「合谷」「曲池」「太衝」「陽陵泉」に置鍼をしました。足先はホットパックで温めました。
横向きで、「側頭部コリの強い部位」に単刺をしました。
うつ伏せで、「肝兪(+棒温灸)」「脾兪」「腎兪」「天柱」「風池」「肩コリの局所穴」に置鍼をしました。

全身の血流改善とリラックス効果を高めることを目的に、下腹部や背部のツボに温灸を行い、首肩のコリや肝機能に関連するツボを中心に鍼治療を行いました。

治療後、患者様は目の疲れが軽減し、身体全体が温まり、リラックスできたと話されました。

その後、1週間に1回のペースで治療を継続しました。
3回目以降は、眼圧は横ばいで、視野にも問題がない状態が続きました。

患者様自身も、鍼灸治療を受けると目の疲れや身体の疲れが楽になると実感されるようになりました。
とくに、仕事で負担がかかると出ていた肩こりも、鍼灸治療後には改善が見られました。

その後、患者様と相談の上、目の予防と肩こり対策のため、2週間に1回のペースで治療を継続することになりました。
治療開始から現在に至るまで、患者様は定期的なメンテナンスとして鍼灸治療を受けており、良好な状態を維持されています。

使用した主なツボとその代表的な効果

関元(かんげん)、中脘(ちゅうかん):
身体を温め、気血の流れを促進する効果があります。
温灸と併用することで、冷え性の改善に効果を発揮します。

合谷(ごうこく)、曲池(きょくち):
手や肘にあるツボで、血行促進や鎮痛効果があります。首肩のコリや眼精疲労の緩和に効果的です。

太衝(たいしょう):
足の甲にあるツボで、肝機能を調整し、精神的な緊張を和らげる効果があります。

陽陵泉(ようりょうせん):
足にあるツボで、筋肉の緊張を緩和し、首肩のコリや痛みを和らげる効果があります。

肝兪(かんゆ)、脾兪(ひゆ)、腎兪(じんゆ):
背部にあるツボで、それぞれ肝、脾、腎の機能を調整し、全身のバランスを整える効果があります。
内臓機能を活性化し、体質改善に繋がります。

天柱(てんちゅう)、風池(ふうち):
首の後ろにあるツボで、首肩のコリや頭痛の緩和に効果があります。目への血流改善にも効果的です。

まとめ

本症例を通して、正常眼圧緑内障に対する鍼灸治療の有効性の一端をご紹介しました

この患者様の場合、鍼灸治療によって全身の血流が改善し、首肩のコリや目の疲れが軽減されただけでなく、精神的にもリフレッシュすることで、緑内障に対する漠然とした不安も和らげることができました。

当院では、西洋医学的な診断に基づいた治療はもちろんのこと、東洋医学的な視点から全身の状態を把握し、患者様一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療を提供しています。

緑内障でお悩みの方、特に正常眼圧緑内障と診断され、西洋医学的治療に加えて何かできることはないかとお考えの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
当院の鍼灸治療が、皆様の健康とQOLの向上に貢献できることを心より願っております。

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