つわり（妊娠悪阻）
そもそも「つわり」とは
「つわり」とは妊娠初期（妊娠5週～16週ころ）にみられる悪心、嘔吐、食欲不振、嗜好の変化のことです。
その多くが大きなトラブルに結びつくことはなく、自然に治まっていきます。
このような症状は妊婦さんの50～80％にみられると言われています。
しかし、これらの症状が悪化し、食物摂取困難が持続し、病院での治療を要する状態になったものを「妊娠悪阻」といいます。
妊娠の数％にみられますと言います。
なぜつわりが起こるのか、そのメカニズムの詳細は不明ですが、妊娠初期の体の急な変化と心理的な要素が重なり合って出てくると考えられています。
ホルモン分泌、自律神経、心は密接に関連しています。
西洋医学(病院)での治療は「脱水に対して十分に輸液する」「輸液にはビタミンB1を添加してウェルニッケ脳症を予防する」「ビタミンB6投与を考慮する」などです。
東洋医学の強み｜自然治癒力を引き出す施術
西洋医学は、「症状を抑えること」が得意です。
例えば、頭痛なら痛み止め、炎症なら抗生剤といった具合に対処します。
一方、東洋医学は「症状の原因となる体質」に着目し、体全体のバランスを整える「体質改善」を目指します。
頭痛ひとつとっても、血流の滞り・冷え・ストレスなど原因はさまざま。
鍼灸は、その人に合ったツボを刺激し、本来の治る力を引き出します。
不調の原因は目に見える症状だけではなく、体の内側のバランスの乱れにあります。
例えるなら、私たちの体は、大河を流れる水のようなもの。
血液や気（エネルギー）が滞りなく巡ることで、健康という豊かな流れが保たれます。
しかし、ストレスや不規則な生活習慣によって、川のどこかに泥や石が溜まり、水の流れが悪くなってしまうことがあります。
それが体の不調として現れるのです。
鍼灸は、川の流れを整える水路の管理人のようなもの。
滞った部分を取り除き、スムーズな流れを取り戻すことで、体全体が元気に機能するように導きます。
東洋医学は、2千年の経験値を持つ体質改善の医学です。
鍼灸では「脈・舌・お腹」を診て、気・血・水の流れを察し、ツボ（経穴）に刺激を与えることで、全身の調和を取り戻します。
つわりを東洋医学(鍼灸)ではどうみるか
東洋医学(鍼灸)では、妊婦さんの元からの体質やつわりの症状などから以下の「3つのタイプ」に分けて治療方針を決めています。
東洋医学では「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の量と巡りが上手くいっていると健康でいられ、気血水の過不足やめぐりの失調があると何かしらの症状(病気)になると考えています。
気滞（気のめぐりが乱れる）タイプ
妊娠の早い段階から出ます。
ベースに「気の滞り」があります。
もう少し詳しく言うと「肝鬱気滞(かんうつきたい)からの胃気不調」と言います。
【症状】
ストレスに弱いような体質がある人が「ノド～胸の辺りがつまる」「吐き気」「上腹部の張った感じ（気体がたまった感じ）」「ゲップが多い」「口が苦い」「臭いに敏感」などの症状を出している場合です。
自律神経失調症のような経験をされてきた人も少なくありません。
痰湿（水の滞りや水過剰）タイプ
妊娠の早い段階から出ます。
これは「過剰な水分が溜まっている」ことで起きます。
「痰湿(たんしつ)」と呼ばれます。
【症状】
「食べたくない（食べられない）」「みぞおちに何かが固まっている感じ（チャポチャポ音がする）」「口の中がねばつく」「舌にべっとりと苔がついている」などがあります。
気血水の「水の過剰」の問題で、脾胃の弱さが「水」の停滞を生んでいるケースです。
脾胃虚（胃腸の働きが弱い）タイプ
妊娠初期よりも少し遅れて始まり、一日中弱くいつでもあるように続きます。
これは「気の不足」とくに「消化吸収の気の力の不足」がベースにあります。
「脾胃虚(ひいきょ)」と呼びます。
2番目の痰湿との違いは、気血水のうち「気の不足」の方が強いことです。
【症状】
「食べると吐く」「臭いに弱い」「ダルい」「便がゆるい」「寝ても眠い」などがあります。
「よだれつわり」などもこれが原因で起こることもあります。
よだれつわりは、体をコントロールするエネルギー不足で、水分の吸収が上手くできないために起こると考えられます。
鍼灸治療をするうえでは、
以上の3つのパターン（もちろん複合的なものもあります） から、つわりの東洋医学的な原因をみつけて、それを解消するためのツボを体全身から選んでいきます。
当鍼灸院では、“身体のバランスが崩れたり、不調になってきていて結果、あなたの体質として弱い部分に「つわり」というサインを出した”とみます。
ですので、「胃や食道」はつらさが出ている場所であり結果であって、原因はもっと他にあるかもしれないということがいえます。
この『原因』を導き出し、解決していくこと。これが体質改善であり、つわりの改善です。
