体外受精しない女性にも不妊鍼灸は価値あり
体外受精を受けない女性にも鍼灸は良い
妊活目的の患者さんが鍼灸を試そうと思った理由には、「知人が鍼灸を使って良かったから」というクチコミ的な理由の人もいれば、「何となく良さそう」という雰囲気的な理由から選択する人もいれば、「研究結果で有効性がある」という理由の人まで、多様です。
とくに「研究による証拠」に関しては、たしかにいくつか論文がでています。
(※妊娠に鍼灸が有効であったという論文が少なくないですが、中には無効であったという論文もあります。)
その多くの論文は「体外受精を受ける人に鍼灸が効くかどうか」で語られることが少なくありません。
たしかに、現代医学的な生殖医療の主役は「体外受精」ですし、結果を測定しやすいという意味でも、体外受精が使われるのは妥当でしょう。
ただし、今回は「体外受精を受けない女性」に鍼灸が役立つかどうかを調べた論文をご紹介します。
『生殖補助医療(ART)を受けていない不妊女性に対する鍼治療』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31335705
【研究の背景】
生殖補助医療(ART)により不妊治療の可能性は改善されましたが、成功率は約30%であり、失敗は家族や社会に大きな経済的および心理的負担をもたらす。
西洋医学の限界により、不妊症における補完代替医療(CAM)の人気は世界中で高まっており、鍼治療は特に人気のある選択肢である。
体外受精(IVF)での出生率への鍼の効果の有無を評価するために、長年にわたって多くの体系的な研究が行われてきた。
ただし、ARTを受けない女性への鍼の効果と安全性を示す包括的なメタ分析の証拠はまだ不足している。
この論文は、鍼治療が女性の妊娠にプラスの影響を与えるかどうかを評価することを目的としている。
【参加者の種類】
・20〜40歳の女性。
・正常な質と形の精液を持つ夫。
・不妊症の診断を受けた女性。
・生殖補助医療(ART)を受けていない女性。
【結果】
「鍼治療を行った群(合計827人)」では、「鍼をしない対照群(817人)」と比較して、妊娠率が有意に改善した。
さまざまなタイプの不妊症(多嚢胞性卵巣症候群、卵管障害、排卵障害、およびその他の要因)に有意な改善を示した。
排卵率と子宮内膜の厚さが大幅に増加した。
また、鍼治療には副作用的な悪影響が少ない。
参考にした諸研究には不明確な部分もあり、不妊に対する鍼の有効性に確固たる結論を引き出すのには十分強固ではなかった。
今後、より高品質の研究をさらに行っていくとよい。
当院の考察
「体外受精をしない女性に鍼灸が役立つかどうか」について、似たようなことを調べた複数の論文で何と言っているか調べた結果、鍼灸はやはり妊娠に役立つようだという結論を得ました。
鍼灸師にとってはとても嬉しい結果です(笑)
妊娠率・排卵率・内膜の厚さなどに貢献している結果でした。
当院でも、婦人科系疾患のある不妊の人はいらっしゃいます。
原因不明の不妊も少なくないですが、疾患のある方の方がよりハンデがあると思いますので、そういう人たちにも鍼灸が良いようだ、という結果は勇気づけられます。
当院の鍼灸では、生理周期を4つに分けて考えています。
月経期は「しっかり排出する」ことに努め、卵胞期は「エネルギーを補い」、排卵期は「気のめぐりを強め」、黄体期は「内膜に血流をしっかり注ぐ」ようにします。
そういう作用のツボを多く用いていきます。
足りないものは補い、滞らないように巡らせる、という鍼灸の基本中の基本です。
当院ではそれらを「体質改善」「カラダ作り」と称しています。
短期間での劇的な変化はしないと考え、やはりある程度の回数を治療することで効果や成果が出ると考えます。
鍼灸単独でも、病院との併用でも、「今の自分に何かできることはないか」と思っていらっしゃれば鍼灸をぜひ試してみてください。
お待ちしています。