アルツハイマー病への鍼灸の効果
アルツハイマー病への鍼灸の効果
日本の認知症患者数は2012年で65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されています。
今後、高齢化がさらに進んでいくにつれ、認知症の患者数がさらに膨らんでいくことは確実です。
2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占めるとも見込まれています。
認知症の中で一番多いのが「アルツハイマー型認知症」です。
脳の神経細胞が減って脳が小さく委縮してしまうために、症状が現れます。
最近では生活習慣病との関係性が分かっていますが、原因はまだ不明の部分も多いです。
徐々に進行する病気で、急激に進行したりするものではありません。
このようなアルツハイマー病に鍼治療が役立てるかどうかを調べた研究の記事がありますので紹介します。
【概要】
アルツハイマー病の鍼治療の有効性と、認知症の治療薬であるドネペジルを比較した研究がある。
中国で実施され、BMC補完代替医療誌に掲載された研究。
軽度から中等度のアルツハイマー病患者87人が、無作為に「鍼治療群」と「ドネペジル投与群」に割り当てられ、それぞれの治療を受けた。
鍼治療は、少なくとも6年間の臨床経験を有する9人の登録鍼灸師により、12週間にわたって毎週3回実施された。
ドネペジル群に無作為に割り付けられた患者は、最初の4週間は毎日5mgの薬物を、その後は試験期間中は1日に10mgの薬物を投与した。
結果、鍼治療を受けた患者は、ドネペジルのみを投与した患者と比較して、研究開始から28週間後に認知機能の有意な改善を示した。
しかし、認知機能が16週間で評価された場合、群間に有意差はなかった。
治療後16週および28週の両方で、ドネペジルと比較して、鍼治療群では全体的な臨床状態が有意に改善した。
研究の焦点ではないが、鍼治療を受けた患者は不眠、便秘、および関節炎を含むいくつかの他の症状の改善を報告した。
この研究の結果は、アルツハイマー病の鍼治療が、認知機能および全般的な臨床機能を改善する安全で許容された治療であることを示唆している。
当院の考察
アルツハイマー型に鍼灸が有効である、という研究結果でした。
もちろん、すっきり治ってしまうというものではないと考えられます。
認知機能や行動に少なくとも改善がみられる、というものでしょう。
ただし、現在有効な薬などもないことからも、鍼治療を代替療法として考えてもよさそうです。
薬と鍼灸の併用が一番よさそうだと感じます。
西洋医学的には長期的に悪化していく症状とみられていますので、東洋医学(鍼灸)でも難しい症状だとは言えます。
ただし、改善もしくは維持が叶うのであれば、鍼灸は試す価値があります。
施術自体も安全で、有害な副作用のようなものはほとんどありませんので。
研究では、鍼治療は週3回を4ヶ月間継続しました。
このように、ある程度の継続治療が有効です。
成果が施術完了後3ヶ月たって出たというのも興味深い結果でした。
脳の実体に作用するのに時間がかかるのかもしれませんね(進行もゆっくりですし)。
アルツハイマー型認知症は脳の働きの異常ですから、頭にあるツボも選択肢ですが、同時に背中・お腹・手足なども重要なツボが多いので使います。
その人の体質やそのほかの症状などによっても、ツボが変わってきます。
このようなオーダーメイドの全身的な治療が成果につながりやすいです
病院での薬だけでなく「他に何かできることをしたい」と考えているなら、鍼灸治療をぜひ活用ください。
お待ちしています。