コロナ後遺症(倦怠感)への鍼灸治療の症例報告
コロナ後遺症の倦怠感と腰痛に対する鍼灸治療
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症は、感染後も長期間にわたり様々な症状を引き起こすことが知られています。
倦怠感、呼吸困難、集中力低下(ブレインフォグ)、味覚・嗅覚障害など、その症状は多岐にわたり、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。
とくに、倦怠感は多くの患者様が訴える症状であり、仕事や家事などの日常生活を送る上で大きな妨げとなります。
当院では、このようなコロナ後遺症に苦しむ患者様に対して、東洋医学に基づく鍼灸治療を行っております。
今回は、倦怠感と腰痛を主訴とする患者様の症例を通して、当院の鍼灸治療がどのように症状の改善に貢献できるのかを具体的にご紹介いたします。
患者さまについて
患者:
50代 男性
主訴:
コロナ後遺症(倦怠感、腰痛、ブレインフォグ)
既往歴:
不眠症、緑内障
生活背景:
仕事の疲労とストレスが多い
発症から初来院までの経緯
患者さまは6ヶ月前に新型コロナウイルスに感染。
喉の痛み、発熱、倦怠感などの症状が出現し、約10日間で症状は一旦改善しました。
しかし、その後も倦怠感が残り、背中から腰にかけての痛みが徐々に強まってきました。
その倦怠感と痛みは日常生活に支障をきたすほどになり、3ヶ月間の休職を余儀なくされました。
その後、コロナ後遺症を専門に診察するクリニックを受診し、週1回のペースでBスポット療法を受け始めました(鍼灸院に来た時には5回受けていた)。
休職による休息とBスポット療法の効果もあり、起き上がれないほどの倦怠感や痛みは軽減したものの、背中から腰にかけての痛みは依然として残っていました。
そこで、鍼灸治療を併用することで更なる改善を期待し、当院を受診されました。
問診などから上記の症状に加え、足先や腰の冷え、ストレスも自覚されており、全体的に心身の疲労が蓄積している状態でした。
東洋医学的考察
東洋医学では、病気は身体のエネルギーである「気(き)」、血液である「血(けつ)」、体液である「すい(すい)」のバランスの乱れによって引き起こされると考えます。
今回の患者さまの場合、コロナ感染によって「気」が著しく消耗している状態、とくに「肺(はい)」と「腎(じん)」の気の虚弱が顕著でした。
【肺とは】
呼吸を司り、全身に気を巡らせる役割を持つ。
肺の気が不足すると、倦怠感、息切れ、免疫力低下などが起こりやすくなります。
【腎とは】
生命の根本的なエネルギーを蓄える場所。
腎の気が不足すると、腰痛、足腰の冷え、不眠、疲労感などが現れやすくなります。
また、長引く痛みや倦怠感は、血の巡りの停滞(瘀血(おけつ))を引き起こし、症状を慢性化させる要因となります。
今回の患者さまは、長期間のストレスや疲労に加え、コロナ感染という大きな負担が加わったことで、これらのバランスが大きく崩れてしまったと考えられます。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
補気(ほき):
とくに肺と腎の気を補い、全身のエネルギーレベルを高める。
活血(かっけつ):
気血の巡りを改善し、痛みを緩和する。
温経散寒(おんけいさんかん):
身体を温め、冷えによる症状を改善する。
精神安定:
ストレスを緩和し、心身のリラックスを促す。
これらの治療方針に基づき、鍼とお灸を組み合わせて施術を行いました。
治療経過
1回目:
「関元」「中脘」に棒温灸。
「合谷」「足三里」「太谿」に浅く置鍼。
腹部(「関元」「中脘」「天枢」)にお灸。
「膏肓」「肺兪」「心兪」「脾兪」に浅く置鍼。
「腰の痛む局所」にお灸。
「筋縮」「命門」に棒温灸。
初診時は、全身の気の虚弱が目立ちました。
施術後、体が温まり、少し楽になったとのことでした。
2回目(1週間後):
休職を終え、仕事に復帰されたため、1週間分の疲れが溜まっていました。
腰の痛みは若干改善が見られました。
前回に準じた施術に加え、首肩の凝りに対してお灸を追加しました。
3~5回目:
週1回のペースで施術を継続。
腰の痛みは仕事の状況によって変動するものの、全体的に改善傾向にありました。
3ヶ月後:
腰の痛みをほとんど訴えなくなり、仕事も以前と比べてスムーズにこなせるようになったと喜んでおられました。
以前の体とは全く違うと実感されており、鍼灸治療の継続を希望されました。
5ヶ月後:
状態が安定してきたため、施術間隔を2週間に1回に変更。
現在も良好な状態を維持されています。
治療期間中、腰痛だけでなく、不眠やストレスといった症状も同時に改善していきました。
使用した主なツボとその代表的な効果
関元(かんげん):
気を補い、体を温める効果があります。
中脘(ちゅうかん):
胃腸の働きを整え、消化吸収を助けます。
合谷(ごうこく):
全身の気の巡りを改善し、痛みを緩和する効果があります。
足三里(あしさんり):
胃腸の働きを整え、全身の活力を高めます。
太谿(たいけい):
腎の気を補い、足腰の冷えを改善します。
膏肓(こうこう):
呼吸器系の機能を高め、免疫力を向上させます。
肺兪(はいゆ):
肺の機能を高め、呼吸を楽にします。
心兪(しんゆ):
精神を安定させ、不眠を改善します。
脾兪(ひゆ):
消化機能を高め、倦怠感を改善します。
筋縮(きんしゅく):
筋肉の緊張を緩め、腰痛を緩和します。
命門(めいもん):
腎の気を補い、腰痛や冷えを改善します。
これらのツボに鍼やお灸を施すことで、患者さまの身体が本来持っている自然治癒力を引き出し、症状の改善を促しました。
まとめ
今回の症例を通して、コロナ後遺症による倦怠感や腰痛に対して、東洋医学に基づく鍼灸治療が有効であることが示されました。
当院では、患者様一人ひとりの症状や体質に合わせた丁寧な施術を心掛けております。
コロナ後遺症でお悩みの方は、是非一度当院にご相談ください。
皆様の健康をサポートできるよう、誠心誠意対応させていただきます。
当院の鍼灸治療が、皆様の健康を取り戻すための一助となれば幸いです。