癌治療中に起こる疲労・ダルさに鍼灸が効果ありとする研究
がん関連疲労とは
がんの治療中や治療後に疲労や倦怠感を感じる人は少なくありません。
【よくある症状】
・力が出ない
・体が重だるい
・ヘトヘトだ
・やる気が起きない
・横になっていたい
休息をとることでは回復しない疲れが長く継続し、日常生活に影響を及ぼすことも少なくありません。
このような疲労を「がん関連疲労」と言います。
なぜこの疲労が起こるかの明確なメカニズムはよくわかっていませんが、いくつか原因は考えられています。
・がん治療そのもの(手術・抗がん剤・放射線治療・免疫療法…)が原因になることが知られています。
つまり「治療の副作用」の一種です。
・痛みや吐き気などによる疲労が蓄積することが原因とも考えられます。
・闘病の不安、ストレス、気分の落ち込みなどが心身のエネルギーを消耗することが原因とも。
…などです。
これらがん関連疲労には、
病院での対応や日常生活の改善などで対処することになります。
ただしさらに、
「がん関連疲労に対して鍼灸はどうか?」という研究がありますのでご紹介します。
『がん関連疲労に対する鍼治療の効果』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29128952
この研究は「がん関連疲労(CRF)」に対する鍼治療の影響を批判的に評価するために行われた。
無作為化比較試験(RCT)のために、7つのデータベースを系統的に2016年11月にレビューした。
結果。
1327人の患者(鍼治療群733人、対照群(ニセ鍼治療群や無治療群)594人)を含む10のRCTが同定された。
鍼治療は、抗がん剤治療中の乳がん患者にもかかわらず、疲労に顕著な効果を示した。
鍼治療がニセ鍼治療または西洋医学単独治療と比較して疲労感を有意に緩和できることを示した。
週3回の治療を2~3週間(毎回30分程度)、週2回の治療を2週間、週1回の治療を6週間で比較。
週1回の治療を6週間行ったケースでは、疲労感に大きく影響を与えた。
結論。
鍼治療はがん関連の疲労感に有効であり、疲労感のある患者(特に乳がん患者および現在抗癌剤治療を受けている患者)のための有益な代替療法として推奨されるべきである。
当院の考察
がん関連疲労に鍼灸は有効である、という結果でした。
また研究では一番長い治療期間のケース(6週間)が有効であったと言います。
これは、東洋医学で言う「虚(エネルギー不足)」は補うのに時間がかかるため、と考えられます。
同時に、たくさん治療すれば効果がメキメキ出るものではありませんので、週1回程度の治療でも十分です。
週3回の治療よりも、週1回の治療で良いので、少し長く継続(2ヶ月~3ヶ月間)した方が効果が出ます。
そもそも刺激も優しい鍼灸が適している(強い負担は不可)ので、細く長く型の治療がベストです。
「生命力」や「食べたものの栄養」をしっかり供給できるカラダを作る、というような考え方は、まさに東洋医学の考え方です。
病院での身体の見方とは少し違うと思います。
ですので、「疲れ」や「何となくの不調感」のようなものは、病院ではなかなか改善できず鍼灸が適しています。
当院では、エネルギーアップできるツボを全身から選んで使う「全身鍼灸」というスタイルで治療しています。
もちろん、鍼灸「だけ」で疲れが劇的に良くなる、などとは考えません。
生活の中ででできることや病院でもできることがありますので、そういう総合的なチームの一員に鍼灸がいて、出来ることがあると考えています。
がんの闘病中の方で、疲れがある方には鍼灸を試していただければと考えます。