頚椎症での腕痛と手しびれの鍼灸症例
頚椎ヘルニアの痛みしびれへの鍼灸治療
現代社会において、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、首に負担のかかる姿勢を続けることが多く、頚椎ヘルニアをはじめとする首の不調を訴える方は増加傾向にあります。
頚椎ヘルニアは、首の骨と骨の間にある椎間板が変性し、神経を圧迫することで首や肩、腕にかけての痛みや痺れを引き起こす疾患です。
病院での治療は、鎮痛薬の処方やストレッチ指導が一般的ですが、症状が改善しない場合や、薬に頼りたくないという方も少なくありません。
当院では、このような頚椎ヘルニアによる症状に対し、東洋医学に基づいた鍼灸治療を提供しています。
鍼灸治療は、身体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで症状の緩和を目指します。
今回は、頚椎ヘルニアによる腕の痛みと痺れに苦しんでいた患者様の症例を通して、当院の鍼灸治療の効果と、東洋医学的なアプローチについてご紹介いたします。
同じような症状でお悩みの方々に、鍼灸治療という選択肢を知っていただき、少しでもお役に立てれば幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
50代 男性
鍼灸院にくるまでの経緯:
19年前より白血病の分子標的薬治療継続中、慢性腰痛もある。
主訴は、左背中から腕にかけての痛み、手指の痺れがつらい。
3年前にゴルフのスイングを右打ちから左打ちに変更後、軽度の痛みが出現したとのこと。
放置していたところ、1ヶ月前にゴルフをきっかけに症状が悪化してしまいました。
整形外科を受診し、ストレートネックと軽度の頚椎ヘルニアと診断されました。
鎮痛薬とストレッチを指示されるも、症状に改善が見られず、鍼灸を試したいと考え当院にいらっしゃいました。
首の痛みで箸を持つことさえ困難な状態(力が入らない)。
痛みを10段階で表すといまが10。
この患者様は、3年前から軽度の症状があったものの、放置していたことが症状悪化の一因と考えられます。
また、白血病の治療中であること、慢性腰痛を抱えていることなど、身体全体の状態も考慮する必要がありました。
東洋医学的考察
東洋医学では、痛みや痺れは「気血の巡り」の滞りによって引き起こされると考えます。
気は生命エネルギー、血は西洋医学でいう血液でありかつ体を養う素を意味し、これらがスムーズに体内を巡ることで健康が維持されます。
頚椎ヘルニアの場合、首の経絡(気の通り道)の流れが滞り、気血が不足することで痛みや痺れが生じると考えられます。
この患者様の場合、長年の慢性腰痛に加え、白血病の治療による身体への負担も考慮する必要がありました。
東洋医学では、腎は生命の根本的なエネルギーを蓄える臓器と考えられており、慢性的な疾患や疲労によって腎の機能が低下すると、全身の気血の流れが悪化し、痛みや痺れなどの症状が現れやすくなります。
また、肝は気血の流れをコントロールする役割を担っており、ストレスや疲労によって肝の機能が低下すると、気の流れが滞り、痛みや痺れが増強することがあります。
これらの東洋医学的な視点から、この患者様の症状は、首の経絡の滞りに加え、腎や肝の機能低下も関与していると考えられました。
治療方針
この患者様に対しては、以下の点を重視した治療を行うこととしました。
首周辺の気血の巡りを改善:
鍼灸治療によって首の経絡の流れをスムーズにし、痛みや痺れを緩和します。
腎と肝の機能を補う:
全身の気血の流れを改善し、身体の根本的な活力を高めます。
心身のリラックスを促す:
白血病の治療による精神的な負担も考慮し、リラックス効果の高い施術を行います。
治療経過
1回目:
首の局所(夾脊穴)に鍼と灸を用いて治療を行いました。
鍼は響かせるように刺し、一定時間置鍼した後、点灸を施しました。
2回目(4日後):
1ヶ月間「10」だった痛みが「2~3」に大幅に軽減されました。
とくに痛みの改善が著しく、痺れはまだ残存していました。
今回は全身治療を行い、経絡の流れを整えるとともに、腎と肝の機能を補うツボを中心に施術を行いました。
仰向けで、「合谷」「外関」「陽陵泉」「太衝」「太谿」のツボに置鍼を施しました。
うつ伏せで、肩から背中のコリ部分には単刺、「膈兪」「肝兪」「大腸兪」に置鍼を行いました。
また、頚椎の挟脊穴周辺に灸を施しました。
2回の治療で著しい改善が見られたため、治療は一旦終了としました。
患者様は、首の痛みで困難だった箸の使用も問題なく行えるようになり、日常生活に支障がない状態まで回復しました。
使用した主なツボとその代表的な効果
夾脊穴(きょうせきけつ):
背骨の両脇に位置するツボで、脊髄神経に直接作用し、首や肩、背中の痛みや痺れに効果があります。
合谷(ごうこく):
手の甲にあるツボで、鎮痛作用や血行促進作用があり、首や肩の痛みに効果があります。
外関(がいかん):
手首にあるツボで、気の流れを整え、痛みや痺れを緩和する効果があります。
陽陵泉(ようりょうせん):
足にあるツボで、筋肉の緊張を緩和し、痛みや痺れに効果があります。
太衝(たいしょう):
足にあるツボで、肝の機能を整え、気の流れをスムーズにする効果があります。
太谿(たいけい):
足にあるツボで、腎の機能を補い、身体の根本的な活力を高める効果があります。
膈兪(かくゆ)、肝兪(かんゆ)、大腸兪(だいちょうゆ):
背部にあるツボで、それぞれ横隔膜、肝臓、大腸と関連しており、内臓機能を整え、全身の気血の流れを改善する効果があります。
まとめ
この症例は、頚椎ヘルニアによる腕の痛みと痺れに対し、鍼灸治療が著しい効果を発揮した典型的な例と言えます。
とくに、鎮痛薬などの西洋医学的な治療で改善が見られなかった症状に対し、鍼灸治療が有効であったことは注目に値します。
当院では、患者様の症状だけでなく、体質や生活習慣、精神的な状態なども考慮し、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療を提供しています。
今回の症例を通して、首の痛みや痺れでお悩みの方々に、鍼灸治療という選択肢を知っていただき、当院の治療にご興味を持っていただければ幸いです。
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