頚椎症による右腕のしびれへの鍼灸症例
頚椎症による右腕のしびれへの鍼灸治療
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、首や肩に負担のかかる姿勢を続けることが多く、頚椎症に悩む方は増加傾向にあります。
頚椎症は、首の骨の変形や椎間板の突出などが原因で神経が圧迫され、首の痛みや肩こり、腕や手の痺れなどを引き起こす疾患です。
整形外科での治療が一般的ですが、薬物療法やリハビリテーションで十分な効果が得られない場合も少なくありません。
今回は、1ヶ月以上続く右腕から手の痺れに悩まされていた50代男性のケースです。
整形外科で頚椎症と診断され、薬物療法を受けていたものの効果を感じられず、当院の鍼灸治療を選択されました。
結果として、わずか3回の治療で痺れがほぼ消失するという劇的な改善をみせました。
この症例を通して、鍼灸治療が頚椎症に伴う神経症状に有効であること、そして当院の治療の特徴をご紹介いたします。
患者さまについて
年齢・性別:
50代 男性
鍼灸院に来るまでの経緯:
お悩みは右腕から手の痺れです。
1ヶ月前、車の運転中に突然右腕に痺れを感じ始めました。
整形外科を受診し、レントゲン検査で頚椎症と診断される。
「頚椎に骨棘があり、それが神経を圧迫している」と説明を受けました。
痛み止め薬を処方されるも、効果はほとんど感じられませんでした。
首を傾ける動作(特に後方や右側への傾斜)で痺れが増強します。
前屈姿勢で症状が軽減します。
痺れの他に、腕の痺れを庇うことによる肩こりも併発しています。
病院での治療に限界を感じ、鍼灸治療を求めて当院を受診。
東洋医学的考察
東洋医学では、身体を巡るエネルギーの通り道である「経絡(けいらく)」の流れが滞ることで様々な症状が現れると考えます。
今回の患者様の症状を東洋医学的に考察すると、痺れの部位や増悪因子から、手の陽明大腸経(てのようめいだいちょうけい)の気血の流れが阻害されている可能性が高いと判断しました。
手の陽明大腸経は、手の示指から始まり、腕の外側を通って肩、首へと繋がる経絡です。
この経絡の流れが滞ることで、腕や手の痺れ、肩こりなどの症状が現れることがあります。
また、患者様は比較的体力のある方であったため、元々のエネルギーは充実しているようです。
しかし、長びく症状による精神的な疲労も考慮し、五臓(肝・心・脾・肺・腎)のうち、気血生成に関わる脾(ひ)と、精神活動や気のスムーズな流れを司る肝(かん)の働きを補うことも重要であると考えました。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、以下の治療方針を立てました。
手の陽明大腸経の疎通を促し、痺れを改善する。
脾と肝の働きを補い、全身の気血の流れを整える。
肩こりを緩和し、身体全体のバランスを整える。
治療に際しては、患者様の体力に合わせてやや強めの刺激を与えることで、経絡の流れをより効果的に改善することを目指しました。
治療経過
1回目:
痺れの出ている手、腕、首の局所に鍼を施し、鍼に微弱な電流を流すパルス通電を行いました。
これにより、経絡の疎通を促し、痺れの緩和を図りました。
2回目(3週後):
前回の治療後、1ヶ月以上変化のなかった痺れが半分程度に軽減(自覚的な痺れの程度は10段階評価で4~5/10)。
今回は全身治療を行い、経絡の流れをさらに整えることを目指しました。
仰向けで、右「合谷」「曲池」・右「肩髃」辺り、右「足三里 – 陽陵泉」にパルス鍼をしました。「期門」に置鍼。「中脘」に棒温灸。
うつ伏せで、「頚椎の挟脊穴」辺りにパルス鍼+お灸。「肝兪」「脾兪」に置鍼をしました。
3回目(1週間後):
2回目の治療後、痺れはほぼ消失(10段階評価で0~1)。
前回と同様の治療を行い、鍼灸治療は今回で終了としました。
使用した主なツボとその代表的な効果
今回の治療で使用した主なツボとその代表的な効果をご紹介します。
合谷(ごうこく):
手の甲、親指と人差し指の付け根の間にあるツボ。陽明大腸経の原穴であり、鎮痛作用や血行促進作用があります。
曲池(きょくち):
肘を曲げた時にできるシワの外側にあるツボ。陽明大腸経の合穴であり、熱を冷ます作用や血行促進作用があります。
肩髃(けんぐう):
肩峰と上腕骨大結節の間にあるツボ。陽明大腸経のツボであり、肩関節周囲の痛みを緩和する効果があります。
足三里(あしさんり):
膝の下、外側のくぼみから指4本分下にあるツボ。足の陽明胃経の合穴であり、胃腸の働きを整えるだけでなく、全身の気血を補う効果もあります。
陽陵泉(ようりょうせん):
膝の外側、腓骨頭の前下にあるツボ。筋肉や関節の痛みを緩和する効果があります。
期門(きもん):
肝の機能を整える効果があります。
中脘(ちゅうかん):
へそとみぞおちの真ん中にあるツボ。胃腸の働きを整える効果があります。
挟脊穴(きょうせきけつ):
背骨の両側にあるツボ。脊髄神経に近く、各部位に対応するツボに刺激を与えることで、神経機能を調整する効果があります。
肝兪(かんゆ):
第9胸椎棘突起下縁の両側にあるツボ。肝の機能を整える効果があります。
脾兪(ひゆ):
第11胸椎棘突起下縁の両側にあるツボ。脾の機能を整える効果があります。
まとめ
今回の症例では、1ヶ月以上続く頚椎症による右腕の痺れに対し、3回の鍼灸治療で劇的な改善が見られました。
これは、東洋医学的な視点から症状の原因を捉え、適切な経絡とツボを選択し、患者様の状態に合わせた治療を行った結果と言えます。
当院では、患者様一人ひとりの症状を丁寧に問診し、東洋医学に基づいた的確な診断と治療を行っております。
薬物療法などで十分な効果が得られない痛みや痺れでお悩みの方は、ぜひ一度当院の鍼灸治療をお試しください。
今回の症例のように、鍼灸治療が皆様の健康のお役に立てることを心より願っております。
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