膠原病への鍼灸を使った研究
膠原病への鍼灸
「膠原病」は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症など、が含まれる総称です。
膠原病は、免疫系の異常によって自分の体を攻撃してしまう病気です。
西洋医学的には原因はまだはっきり分かっておらず、多くが西洋医学的な治療法がなく、症状に苦しむ患者さんも少なくありません。
膠原病の症状
膠原病の症状は、種類によって異なりますが、一般的には以下のようなものが挙げられます。
- 関節の痛みや腫れ
- 皮膚の炎症や発疹
- 発熱
- 倦怠感
- 筋肉痛
- レイノー現象(寒さやストレスで手足の指が白くなる)
これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたし、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させます。
西洋医学での膠原病の治療
膠原病の治療は、ステロイド薬や免疫抑制薬などを用いて、免疫系の過剰な働きを抑え、症状を緩和することを目的とします。
しかし、これらの薬には副作用も多く、長期的な服用が必要となる場合もあります。
膠原病への鍼灸
西洋医学による治療と並行して、近年注目されているのが東洋医学(鍼灸治療)です。
鍼灸は、東洋医学の考え方に基づき、体のツボ(経穴)を刺激することで、気血の流れを整え、免疫力を高める効果が期待できます。
「鍼灸が膠原病に影響を与えられるのか」を調べた論文がありますので紹介します。
『血管病変に対する鍼灸治療の臨床的効果』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/53/1/53_1_43/_pdf/-char/ja
【要約】
- レイノー症状に対する鍼灸治療は、血管攣縮による発作頻度を減少させることが、臨床比較試験により明らかになった。
- 膠原病患者への鍼刺激で、手指皮膚温の上昇、末梢血流量の増加が認められ、その作用機序として局所あるいは中枢を介して交感神経機能に影響を及ぼすことが考えられた。
- 膠原病の強皮症患者への鍼治療により、皮膚硬化、潰瘍、冷感、痺痛などの自覚症状に改善が認められる。
- 振動障害についても自律神経を介しての末梢循環改善作用が示唆される。
- 閉塞性動脈硬化に対する鍼治療は、末梢循環の改善とともに、冷感、しびれ感、チアノーゼ、間欠肢行などの臨床症状の改善が認められた。
- バージャー病及び大動脈炎症候群については、症例報告であり、今後の臨床研究の進展が待たれる。
鍼灸治療のメリット
鍼灸治療には、以下のようなメリットが考えられます。
- 副作用が少ない
- 薬に頼らずに症状を緩和できる可能性がある
- 全身のバランスを整え、免疫力を高める効果が期待できる
- 精神的な安定にもつながる
当院の膠原病に対する鍼灸治療
当院では、膠原病の患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて、オーダーメイドの鍼灸治療を提供しています。
時間をかけて丁寧にお話を伺い、脈・舌・お腹などを診る東洋医学的な検査を行い、体の状態を詳しく把握します。
その上で、最適なツボを選び、痛くない鍼と心地よいお灸で、全身からアプローチしていきます。
当院の鍼灸治療は、症状の緩和だけでなく、体質改善を目指しています。
当院の考察:膠原病と鍼灸
当院では、膠原病の治療において、西洋医学と併用することで効果が期待できる選択肢として鍼灸をお勧めします。
例えば、膠原病のひとつである「関節リウマチ」は鍼灸の保険適応になっています。
保険が使えるということは、厚生労働省が「リウマチには鍼灸が効果を出す」と認めている事になります。
単純に敷衍してはいけませんが、他の膠原病にも鍼灸は試す価値のある治療法だと考えられます。
東洋医学(鍼灸)は、症状を追うのではなく体質を追います。
たとえばレイノー症状で言えば、手足の冷えを改善するために「冷えを生む体質」であることの方に注目します。
温める力が足りないのであればその力が充実していくような鍼灸をし、血流が悪くて手足だけが冷えてしまうのであれば巡りを整える鍼灸をする、という考え方です。
使うツボは「手足の冷え感」に対しても「全身」のツボを使います。
今回の論文は膠原病と鍼灸についての他の研究を集めた内容になっています。
1つ1つはさほど詳細ではないので、鍼灸の具体的な施術方法は分からない部分もあります。
しかし鍼灸の可能性を知っていただければ結構かと思います。
まずは病院での検査・治療・経過確認を行うのは大切なことです。
それに加える意味で鍼灸を試していてはいかがでしょうか?