マタニティブルー(不安・息苦しさ)の症例

マタニティブルー(不安・息苦しさ)

マタニティーブルー(不安・息苦しさ)

患者さま

40代 女性

初来院

2018年6月3日

お悩みの症状

出産後から始まった不安・息苦しさ・ストレス

初来院までの経過

妊活の鍼灸ではじめて当院にいらっしゃり、無事ご懐妊された。
妊娠後は順当に経過していた時点で鍼灸施術は終了となる。
その後、妊娠後期に逆子になり、そのまま帝王切開での出産となったとのこと。
出産時には出血が多かったとのこと。
出産の翌日より、傷の痛みなどと共に、体が熱い・圧迫感・不安感・息苦しさが出現。
とくに夜になると発作のように急に強まるので眠れない。
医師からは「出産によるホルモンバランスの変化が原因だろう」と言われる。
入院中は不安な気持ちを看護師に話を聞いてもらうなどしてしのぐ。
退院して実家(里帰り)に戻るも、症状が消えずつらく、鍼灸で何とかならないかと、出産から10日後(退院から3日後)に来院。

治療方針

元々ストレスを抱え込みやすく心血虚+肝気うつ傾向はあったので、出産・育児開始などの生活上の大きな変化に不安感が昂じているのだろうと推測する。
出産時の失血とも併せて考えると「心陰虚」が「上実」=「陰虚火旺」となり急激な症状を出したとみる。
清熱と補陰と行気を心がける。
ベッドに横にすらなれない(=横になると不安や息苦しさが発作のように出るから)など現れている症状は強いが、刺激は弱めで行うこととする。

治療と経過

1回目。
座った姿勢で、「心兪」から「肝兪」間の反応穴にお灸。「百会」「肩井」に単刺。「行間」「郄門」「肩井」に円皮鍼。
2回目(3日後)。
1回目の施術後からだいぶ良い。ここ3日間はまだモヤモヤと奥の方ではあるが発作のような息苦しさはでない。
座った姿勢で「百会」「関衝」「隠白」に刺絡。「肩井」に単刺。「心兪」から「肝兪」間の反応穴にお灸。
3~5回目(3日おきペース)
発作のようなものは出ない。安心して眠れる時間がとれる。育児の大変さはあるが全体的に改善。
座った姿勢で、「内関」「足三里」「肩井」辺りをローラー鍼。「手足の井穴」をてい鍼で数秒刺激。
うつ伏せになれるようになったので、うつ伏せで「心兪」から「肝兪」間の反応穴にお灸+ローラー鍼。
5回が終わった時点で、最初の激しい症状はほぼ収まったので、施術は終了とする。

まとめ

出産を契機に、体のバランスの乱れが生じ、それが心身症的な症状になったケース。
マタニティーブルーと言って良いだろう。
陰虚火旺は明らかで、そこへの施術に集中する。
なるべく話も聞くようにしつつ、手早く体の負担にならないような施術を心がけた。
急激な症状だったが急激に収まっていったので、火旺の方が比率は大きかったようだ。
施術を手早く、簡潔にしたのも負担を減じる意味はあった。

通常、妊娠~出産~産後は、嬉しい・めでたい・病気でない普通のこととして扱われる。
私自身も基本的には同意であるが、やはり母体にはかなりに負担がかかる変化である。
とくに産後は、体の修復と同時に育児が始まるので、負担は肉体的・精神的にかなり大きい。
決して無理をすることなく、心身の安寧をまずは第一に過ごしてもらいたいと思う。
鍼灸もそれを応援できるひとつの方法である。