過敏性腸症候群(下痢と頻尿への不安感)の鍼灸症例
過敏性腸症候群(下痢と頻尿への不安感)
患者さま
40代 男性
初来院
2018年3月28日
お悩みの症状
過敏性腸症候群(下痢)
初来院までの経過
15年ほど前より「お腹が弱い(下痢しやすい)」ことを自覚するようになる。
数年に1回くらいひどくなり、しばらくすると良くなる、といったような症状に波がある状態を繰り返す。
5年前に病院で「過敏性腸症候群(IBS)」と診断される。
今回は9ヵ月前より始まり、ここ2ヵ月で急に悪化する。
車に乗る仕事なので余計に「いつもトイレを気にしている状態」「便意がいつもある状態」がつらい。
下痢だけでなく尿意(頻尿)もある。
病院でもらう薬と市販薬も併用している。
薬以外にも何かできないかと当院に来院。
治療方針
20歳の時に十二指腸潰瘍を患った経験があり、それ以降も過敏性腸症候群に悩まされていることからも「小腸~大腸」に弱さがあることは明らか。
同時に「不安感」が強いことからも「肝気うつ」の状態も強い。
西洋医学的に言えば自律神経系の乱れということだろう。
脾虚からくる「内湿」もあり、これも滞りを増加させる一因とは推察する。
過敏性腸症候群により心身ともに疲弊しているので「気虚」もある(ただし気滞の方が強い)。
脾胃の虚を補いつつ、肝気の巡りをよくするようなツボを多用することにする。
治療と経過
1回目。
「太衝」「内関」「足三里」「上巨虚」に鍼。「期門」「大巨」に鍼+お灸。足にホットパック。「心兪」「隔兪」「肝兪」「大腸兪」に鍼+お灸。
2~5回目(1週間に1回ペース)
「帯脈」「肓兪」「不容」に鍼。「手三里」「上巨虚」「太衝」に鍼(パルスも適宜使用)。「心兪」「隔兪」「肝兪」「大腸兪」に鍼+お灸。
下痢や頻尿は減ってきたものの不安感と疲労感には大きな改善は見えず。
初回に「3ヶ月ほどの継続治療」を提案したが、1ヶ月でいったん中止となる。
同時に治療した症状
・頻尿
・湿疹
・足の冷え
・疲れ
まとめ
しっかりした成果が出る前に患者さんの方で治療終了を判断されたケース。
症状(下痢や頻尿)そのものは減ったと言っていただけたものの、腹痛や便意に対する「不安感」には変化を出せず、鍼灸を継続することがかなわなかった。
下痢自体には改善がみえていたので、鍼灸でお手伝いできることがあるのは確かだ。
精神的な変化を早期に出すために、脾虚の改善=内湿対策をもっと積極的にした方がよかったのか、と反省する。
気滞が強く見えたことに引きずられてしまったかもしれない。
今後に生かしていきたい。