鍼刺激の局所鎮痛の研究|アデノシンA1受容体
鍼治療の局所鎮痛の仕組み
鍼治療には痛みを和らげる効果があることが古くから知られています。
しかし、「なぜ鍼を刺すと痛みが軽減するのか?」という疑問に対して、現代医学的なメカニズムが完全に解明されているわけではありません。
かつては、鍼灸師の経験則に基づいて「効果があるから実践されている」という考え方が主流でした。
しかし、近年の研究により、鍼治療がどのように痛みを抑えるのか、その仕組みが徐々に明らかになってきました。
この記事では、鍼の局所鎮痛に関する最新の研究を紹介し、鍼灸治療の科学的な根拠について解説します。
また、当院での施術を通じて、どのように痛みの緩和を目指しているのかについてもお伝えします。
鍼治療による痛みの緩和メカニズム
局所鎮痛とは?
「局所鎮痛」とは、鍼を刺した場所(局所)において痛みが軽減する現象を指します。
これは、皮膚や筋肉に鍼を刺すことで生じる生理的な反応によるものです。
例えば、肩こりや腰痛のある部位に鍼を刺すと、その部位の痛みが和らぐことがあります。
このような局所鎮痛の仕組みについて、近年の研究が新たな発見をもたらしています。
鍼の刺激とアデノシンの関係
2010年に発表された研究論文『鍼刺激による局所鎮痛にアデノシンA1受容体が関与している(Adenosine A1 receptors mediate local anti-nociceptive effects of acupuncture.)』によると、鍼を刺すことで「アデノシン」という物質が放出され、局所の鎮痛効果をもたらすことが分かりました。
https://www.nature.com/articles/nn.2562
アデノシンとは?
アデノシンは、体内で自然に生成される物質で、神経の興奮を抑えたり、血流を調整したりする役割があります。
とくに、アデノシンA1受容体に作用することで、痛みの伝達を抑える働きがあることが知られています。
この研究では、マウスの「足三里」(膝下にあるツボ)に鍼を刺したところ、アデノシンの局所的な濃度が上昇し、鎮痛作用が発揮されることが確認されました。
さらに、アデノシンA1受容体を作動させる薬を注射すると、鍼治療と同じように鎮痛効果が再現されたことから、アデノシンが鍼治療による局所鎮痛の重要な要因であることが示されました。
アデノシンを増やすことで効果が持続?
通常、アデノシンは時間とともに代謝され、効果が薄れていきます。
しかし、研究ではアデノシンの分解を妨げることで、その濃度と鎮痛効果を延長できる可能性が示されました。
つまり、適切な方法で鍼治療を行うことで、鎮痛効果をより長く持続させることができるかもしれません。
鍼の鎮痛メカニズムは局所だけではない
鍼灸治療の効果は、局所の鎮痛だけにとどまりません。
例えば、
遠隔効果:足に鍼をすると胃の調子が良くなる
反射作用:腕に鍼をすると目がすっきりする
…など、体全体に影響を及ぼすことがあります。
これには次のような仕組みが関与していると考えられます。
脊髄反射による鎮痛
鍼の刺激は脊髄を介して信号を伝え、痛みの抑制を引き起こします。
例えば、ある部位を刺激すると、その神経がつながる別の部位の痛みが軽減されることがあります。
自律神経の調整
鍼は交感神経や副交感神経のバランスを整える作用があります。
これにより、血流の改善や内臓機能の向上が期待できます。
脳内の鎮痛物質の分泌
鍼の刺激によって、エンドルフィンやセロトニンなどの鎮痛作用を持つ脳内ホルモンが分泌されることが分かっています。
これらの物質は「幸せホルモン」とも呼ばれ、痛みの軽減とともにリラックス効果ももたらします。
まとめ
まとめです。
近年の研究によって、鍼治療が痛みを和らげる仕組みの一端が解明されつつあります。
■鍼を刺すと「アデノシン」が放出され、局所鎮痛が起こる
■脊髄反射や自律神経調整、脳内ホルモンの分泌も関与
■局所だけでなく、全身の健康改善にもつながる
「鍼治療って本当に効くの?」と疑問に思っている方も、科学的な視点から見てもその効果が明らかになってきています。
あなたの痛みに寄り添い、最適な治療を提供するために、当院での施術をぜひ体験してみてください。
当院では、鍼の局所効果だけでなく、全身のバランスを考えた施術を行っています。
■患者様の状態を丁寧にカウンセリング
■痛みの原因に合わせたツボの選定
■局所だけでなく全身の調整も重視
■リラックスしながら治療を受けられる環境作り
「痛みを何とかしたい」「薬に頼らず改善したい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。