30代の不妊、数回の流産経験がある鍼灸症例
数回の流産経験がある、30代不妊への鍼灸治療
不妊治療は心身ともに大きな負担を伴い、精神的なストレスも少なくありません。
当院では、西洋医学的な治療と並行し、東洋医学の観点から鍼灸治療を行うことで、妊娠しやすい身体づくりをサポートしています。
今回は、30代で数回の流産経験を持つ女性に対し、鍼灸治療が妊娠成功と安定した妊娠継続に貢献した事例をご紹介します。
この症例を通して、鍼灸治療が不妊に悩む方々にとって有効な選択肢であることをご理解いただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
30代女性。
鍼灸院に来るまでの経緯:
7年前から妊活を開始しました。
当初は自分たちでタイミングを試みるも結果が出ませんでした。
3年前に婦人科クリニックを受診します。
とくに問題はないとのことで、排卵誘発剤を用いたタイミング療法を6回行うも妊娠に至らず。
別の病院へ転院しました。
新しい病院で人工授精(AIH)を6回行った結果、一度妊娠するも10週で流産を経験してしまいます。
その後、1年間の治療休止期間を経て治療を再開し、体外受精にステップアップしました。
ここで「AMH値が低い」ことを指摘されました。
その病院では2回の採卵でそれぞれ1個の受精卵を新鮮胚移植するもうまくいきませんでした。
4か月前に転院した新しい病院で「橋本病」を指摘され、チラーヂン服用を開始します。
その後の採卵で2個の胚盤胞を凍結し、1個を移植するも不成功でした。
残りの1個を移植する周期になり、「移植前だけを目的」とした鍼灸を希望し来院されました。
移植時だけの施術だったのでその後は来院されませんでしたが、4ヶ月後に再度来院されました。
前回の移植で妊娠したものの、8週で流産したことを報告され、再度採卵から始めるにあたり、鍼灸治療の併用を希望されました。
肩こり、坐骨神経痛、下半身の冷え、疲れ感などの症状も訴えられていました。
東洋医学的考察
東洋医学では、妊娠は「腎」の機能と密接に関わると考えます。
「腎」は生命の根源的なエネルギーである「精」を貯蔵し、成長・発育・生殖を司ります。
今回の患者様は、年齢に比してAMH値が低いこと、腰痛や坐骨神経痛を訴えていることから、「腎虚(じんきょ)」の状態、つまり腎のエネルギー不足が顕著に見られました。
また、過去の流産経験は「気血(きけつ)」の消耗を招き、子宮の環境を不安定にしている可能性が考えられます。
気血とは、身体を構成し、生命活動を維持するためのエネルギーと血液のことで、その流れが滞ると様々な不調が現れます。
とくに、下半身の冷えは気血の巡りが悪くなっていることを示唆しています。
これらの東洋医学的な所見から、当院では「補腎(ほじん)」、つまり腎のエネルギーを補い、「活血(かっけつ)」、つまり血の巡りを良くすることで、妊娠しやすい身体づくりを目指すことが重要であると判断しました。
治療方針
初回の来院時は、間近に迫った移植に備え、短期的な治療を希望されていたため、骨盤(下半身)の血流改善と全身のエネルギー状態の向上を目的とした治療をメインに行いました。
再来院後は、継続的な治療を見据え、腎のエネルギーを補う治療を重点的に行いながら、気血の滞りを改善する治療を併せて行いました。
また、その時々の体調に合わせ、肩こりや坐骨神経痛などの症状に対する治療も行いました。
治療経過
■初回は、「関元」に棒温灸をし、「肓兪」「曲池」「足三里」「三陰交」「太谿」に置鍼をしました。「肩こりの部位に単刺」「隔兪~次髎」に鍼+温灸+円皮鍼をしました。
※初回来院時は移植前日、2回目は移植4日後に施術を行いました。
■4ヶ月後の再度来院以降の経過。
採卵から移植までの期間、計8回の施術を行いました。
仰向けで、「肓兪」「水分」「合谷」「太衝」「三陰交」に置鍼をしました。「関元」に棒温灸を行いました。
うつ伏せで、「肩コリに単刺」「肝兪」「腰の硬結部分」に鍼をして、腰にはお灸も加えました。
鍼灸開始後の採卵では、1個の8分割胚を凍結することができました。
次の生理周期で移植を行うことになりました。
鍼灸の治療期間中は、低気圧による頭痛や肩こりの悪化、坐骨神経痛などの症状も見られましたが、その都度、症状に合わせた治療を行い、特に腰痛に対してはパルス通電を用いるなど、集中的な施術を行いました。
9回目の治療後に判定日を迎え、無事に陽性反応が出ました。
その後も週1回のペースで治療を継続し、つわり対策などのソフトな治療を行いました。
妊娠10週を超え、不妊専門病院を卒業されたのを機に、鍼灸治療も終了となりました。
使用した主なツボとその代表的な効果
関元(かんげん):
下腹部にあるツボで、腎の気を補い、生殖機能を高める効果があります。温灸を行うことで、身体の深部から温め、エネルギーの活性化を促します。
肓兪(こうゆ):
おへその横にあるツボで、気血の流れを整え、消化器系の働きを助ける効果があります。
曲池(きょくち):
肘の外側にあるツボで、血行促進、肩こりや首のこりの緩和に効果があります。
足三里(あしさんり):
膝の下にあるツボで、胃腸の働きを整え、全身のコンディションを整える効果があります。
三陰交(さんいんこう):
内くるぶしの上にあるツボで、婦人科疾患に効果があり、血行促進、ホルモンバランスの調整に役立ちます。
太谿(たいけい):
内くるぶしとアキレス腱の間にあるツボで、腎の機能を高め、冷えの改善に効果があります。
合谷(ごうこく):
手の甲にあるツボで、全身の気血の流れを整え、痛みの緩和に効果があります。
太衝(たいしょう):
足の甲にあるツボで、肝の機能を整え、精神的な安定をもたらす効果があります。
肝兪(かんゆ):
背中にあるツボで、肝の機能を整え、血行促進、精神安定に効果があります。
これらのツボを組み合わせて使用することで、患者様の症状に合わせた効果的な治療を行うことができました。
まとめ
本症例では、数回の流産経験を持つ30代女性に対し、鍼灸治療が妊娠成功と安定した妊娠継続に貢献した事例をご紹介しました。
採卵前から移植後、妊娠初期まで継続的に鍼灸治療を行うことで、母体のコンディションを良好に保ち、妊娠の維持に繋がったと考えられます。
東洋医学的な観点から、腎のエネルギーを補い、気血の流れを整える治療を行うことで、不妊という深刻な悩みを抱える患者様を力強くサポートできることを改めて示しました。
やはりある程度の継続治療は体質改善には重要と考えます。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なカウンセリングと的確な施術を心掛けております。
不妊でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
「赤ちゃんを授かりたい」という願いを叶えるお手伝いをさせていただきます。
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