30年近く続く頭痛の鍼灸症例

慢性頭痛への鍼灸治療

頭痛症例

長年、頭痛に悩まされている方は少なくありません。
それは単なる不快感を超え、日常生活の質を著しく低下させる深刻な問題です。

鎮痛薬で一時的に痛みを抑えることはできても、根本的な解決には至らないケースも多く見られます。

当院では、東洋医学の視点から原因を探り、お一人おひとりの体質や症状に合わせた鍼灸治療を行うことで、長年苦しんできた頭痛からの解放を目指しています。

今回ご紹介する症例は、30年近く頭痛に悩まされていた40代女性のケースです
彼女がどのように頭痛から解放されていったのか、その過程を詳細にご紹介することで、同じような症状でお悩みの方々に希望と当院の治療への理解を深めていただければ幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
40代女性

鍼灸院に来るまでの経緯:
中学生の頃から約30年間、ほぼ毎日頭痛に悩まされてきたとのことでした。

とくに過去10年間はその症状が悪化し、日常生活に支障をきたすほどになっていました。
頭痛の場所は後頭部が中心でしたが、時には側頭部にも現れるとのことでした。

病院では「慢性片頭痛と緊張型頭痛の混合型」と診断され、鎮痛薬を処方されていましたが、効果がある時とない時があり、効果がない時は横になって痛みが過ぎるのを待つしかない状態でした。

また、ストレスによって頭痛が悪化する傾向があり、目の乾きやしょぼしょぼするような痛みも訴えていました。

生理周期は40日程度とやや長めで、最近では生理時の出血がダラダラと続くことも気になっていました。
これらの症状は彼女の生活の質を著しく低下させ、精神的な負担にもなっていました。

東洋医学的考察

東洋医学では、頭痛は単に頭部の問題として捉えるのではなく、全身のバランスの崩れから生じると考えます。

この患者さまの場合、問診と脈診、舌診などの東洋医学的な診察を通して、「血虚(けっきょ)」とそれに伴う「血行不良」が頭痛の根本原因であると判断しました。

「血虚」とは、血液の量や質が不足した状態を指し、めまい、立ちくらみ、顔色不良、皮膚の乾燥、生理不順などの症状を伴うことがあります。
この患者さまの場合、目の乾きや長めの生理周期、最近の生理時の出血の状態などから血虚の傾向が強く見られました。

また、ストレスで頭痛が悪化することから、「気滞(きたい)」、つまり気の巡りが滞っている状態も併発していると考えられました。

さらに、冷えのぼせのような症状も見られたことから、自律神経系の乱れも考慮する必要がありました。

これらの要因が複雑に絡み合い、長年の頭痛を引き起こしていると判断しました。

治療方針

上記の東洋医学的考察に基づき、治療方針は以下の3点を柱としました。

補血(ほけつ):
血(けつ)を補い、身体を滋養することで、血虚を改善し、血液の質と量を高める。

疏肝理気(そかんりき):
肝(かん)の機能を整え、気の巡りをスムーズにすることで、ストレスによる症状の悪化を防ぐ。

自律神経の調整:
自律神経系のバランスを整え、冷えのぼせなどの症状を改善する。

これらの治療方針に基づき、鍼とお灸で治療を行い、全身のバランスを整えることを目指しました。

また、患者さまの体質が刺激に敏感なタイプであったため、鍼灸ともにソフトな刺激を心がけ、安心して治療を受けていただけるように配慮しました。

治療経過

1回目:
仰向けで、「合谷」「外関」「陽陵泉」「太衝」「丘墟」に浅めの置鍼をしました。
うつ伏せで、「心兪」「肝兪」「脾兪」「天柱」「風池」、そして「肩こりの局所」への浅めの鍼治療を行いました。
これらのツボは、血行促進、鎮痛、自律神経調整などの効果が期待できます。

2回目の治療(1週間後):
頭痛や目の乾きに大きな変化は見られませんでしたが、生理時の出血が改善していました。
これは、治療が体に良い影響を与え始めている兆候と考えられました。

この日は、鍼治療に加え、「中脘」「関元」への棒温灸と足へのホットパックによる保温を行いました。

3回目の治療(1週間後):
頭痛と目の乾きにわずかな改善が見られました。

4~10回目(10日1回ペース):
頭痛の頻度と程度が徐々に軽減し、鎮痛薬の服用量も減っていきました。
片頭痛のような激しい痛みは改善し、緊張型の鈍い痛みが残る状態となりました。

11回目から20回目(2週間に1回ペース):
頭痛のない時間が増え、痛み自体もさらに軽減していきました。
患者さま自身も身体の変化を実感し、積極的に首や肩のストレッチなどのセルフケアを行うようになりました。

この段階で、患者さまは自身の状態を管理できるようになったと判断し、一旦治療を終了としました。

使用した主なツボとその代表的な効果

合谷(ごうこく):
鎮痛作用、血行促進作用、自律神経調整作用などがあります。
とくに頭痛、肩こり、目の疲れなどに効果的です。

外関(がいかん):
気の巡りを整え、ストレスによる症状を緩和する効果があります。

陽陵泉(ようりょうせん):
筋肉の緊張を緩和し、痛みを和らげる効果があります。

太衝(たいしょう):
肝の機能を整え、気の巡りを改善する効果があります。

丘墟(きゅうきょ):
胆のうの機能を整え、自律神経のバランスを調整する効果があります。

心兪(しんゆ)・肝兪(かんゆ)・脾兪(ひゆ):
背中にあるツボで、それぞれ心、肝、脾の機能を整え、全身のバランスを調整する効果があります。

天柱(てんちゅう)・風池(ふうち):
首の後ろにあるツボで、頭痛、肩こり、目の疲れなどに効果があります。

中脘(ちゅうかん)・関元(かんげん):
お腹にあるツボで、身体の中心を温め、気を補う効果があります。

これらのツボは、単独で効果を発揮するだけでなく、組み合わせて使用することで相乗効果を生み出します。

まとめ

この症例を通して、長年続く頭痛であっても、東洋医学に基づく鍼灸治療が有効であることを示せたと考えています

今回の治療では、頭痛という症状だけでなく、患者さまの全身の状態を考慮し、根本原因にアプローチすることで、症状の改善だけでなく、患者さま自身の自己管理能力を高めることにもつながりました。

当院では、患者さま一人ひとりの状態に合わせた丁寧な問診と東洋医学的な診察を行い、最適な治療を提供しています。

長年の頭痛でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。きっとお力になれると信じています。

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