頚椎症
頚椎症とは
首の骨と骨をつないでいる部分（椎間板）の使い過ぎや老化現象により、首の痛みなどの症状が発現したものを総称して「頚椎症」と呼んでいます。
■首や肩こりなどだけの症状（局所だけ）
■片方の首～肩～腕～手の痛み・しびれ・感覚障害の症状（神経根症）
■両方の手足がしびれたり、動きが悪くなる症状（脊髄症）
以上の3つに大きく分類されます。
仕事中はずっとパソコンと向き合い、それ以外の時間でもはスマホでラインやネット検索。
このような生活リズムが頚椎症を招いてしまう原因になっています。
病院（整形外科）では、腕や手のしびれ・痛みがあるか・顔を上に向けると症状が増強するかなどを診察し、レントゲンやMRIなどの画像の検査もして確認します。
西洋医学的な治療法は、症状が出ないよう（頚椎をうしろへそらせないよう）に生活するよう心がけ、首の牽引や温熱療法。
症状が強いときにはブロック注射や鎮痛薬を使います。
強い痛みで仕事や日常生活が障害されている場合は手術を行う場合もあります。
まずは程度と状況など西洋医学（病院）で検査を受け、出来る治療を受けていただき、それと並行する形で東洋医学（鍼灸）を取り入れることでより効果が高まります。
東洋医学の強み｜自然治癒力を引き出す施術
西洋医学は、「症状を抑えること」が得意です。
例えば、頭痛なら痛み止め、炎症なら抗生剤といった具合に対処します。
一方、東洋医学は「症状の原因となる体質」に着目し、体全体のバランスを整える「体質改善」を目指します。
頭痛ひとつとっても、血流の滞り・冷え・ストレスなど原因はさまざま。
鍼灸は、その人に合ったツボを刺激し、本来の治る力を引き出します。
不調の原因は目に見える症状だけではなく、体の内側のバランスの乱れにあります。
例えるなら、私たちの体は、大河を流れる水のようなもの。
血液や気（エネルギー）が滞りなく巡ることで、健康という豊かな流れが保たれます。
しかし、ストレスや不規則な生活習慣によって、川のどこかに泥や石が溜まり、水の流れが悪くなってしまうことがあります。
それが体の不調として現れるのです。
鍼灸は、川の流れを整える水路の管理人のようなもの。
滞った部分を取り除き、スムーズな流れを取り戻すことで、体全体が元気に機能するように導きます。
東洋医学は、2千年の経験値を持つ体質改善の医学です。
鍼灸では「脈・舌・お腹」を診て、気・血・水の流れを察し、ツボ（経穴）に刺激を与えることで、全身の調和を取り戻します。
頚椎症と鍼灸
頚椎症は、首の骨（頚椎）やその周囲の組織が変性することで痛みやしびれ、可動域の制限などが起こる疾患です。
東洋医学では、頚椎症の原因を「気血の流れの停滞」「腎虚」「風寒湿邪の侵入」などと考え、体質ごとに異なる治療法を用います。
いかにタイプ別の特徴を解説します。
気滞血瘀（きたいけつお）タイプ
■特徴
・精神的ストレスが多く、気の巡りが悪くなる
・首・肩の筋肉が硬直しやすく、動かすと痛む
・痛みが刺すようで、一か所に固定される
・首の可動域が狭く、動かすと痛みが増す
■どのような頚椎症になるか？
気滞により筋肉がこわばり、血瘀が進むと血流が悪くなり頚椎の組織に栄養が届かず、変性が進む。
■効果的なツボ
・太衝（たいしょう）（足の甲、第一・第二中足骨の間）…気の巡りを改善
・合谷（ごうこく）（手の甲、親指と人差し指の間）…気血の巡りを良くする
・肩井（けんせい）（肩の中央）…首・肩の筋緊張を緩和
腎虚（じんきょ）タイプ
■特徴
・50歳以上に多く、加齢とともに発症しやすい
・腰や膝が弱く、疲れやすい
・眩暈や耳鳴り、物忘れが多い
・骨がもろくなりやすく、関節の変形が進みやすい
■どのような頚椎症になるか？
変形性頚椎症。腎の精が不足すると骨や軟骨が弱り、頚椎の変形が進む。
■効果的なツボ
・腎兪（じんゆ）（腰の第二腰椎棘突起の両側）…腎の働きを補う
・太谿（たいけい）（足首内側、くるぶしの後ろ）…腎の気を補い、骨を強くする
・風池（ふうち）（後頭部、髪の生え際）…腎精不足による眩暈や頚椎の痛みを改善
風寒湿邪（ふうかんしつじゃ）タイプ
■特徴
・気温の変化に敏感で、寒いと症状が悪化
・雨の日や湿度の高い日には特に痛みが強くなる
・首がこわばり、動きが鈍くなる
・体が重く、関節のこわばりを感じる
■どのような頚椎症になるか？
寒邪・湿邪が首の経絡を塞ぎ、気血の流れを妨げることで痛みやこわばりを引き起こす。
■効果的なツボ
・風門（ふうもん）（背中の上部、第二胸椎棘突起の両側）…風邪の侵入を防ぐ
・大椎（だいつい）（首の後ろ、最も突出した第七頚椎の下）…寒邪を追い出す
・陽陵泉（ようりょうせん）（膝の外側、腓骨頭の下）…気を巡らし湿邪を排出
気血両虚（きけつりょうきょ）タイプ
■特徴
・貧血気味で、顔色が青白い
・疲れやすく、息切れしやすい
・体が冷えやすく、むくみが出ることもある
・筋力が弱く、長時間の姿勢維持が苦手
■どのような頚椎症になるか？
気血が不足することで首の組織に栄養が届かず、痛みやしびれが起こる。
■効果的なツボ
・足三里（あしさんり）（膝下、脛骨の外側）…気血を補い、体力をつける
・三陰交（さんいんこう）（足の内側、くるぶしの上）…血の巡りを改善
・百会（ひゃくえ）（頭頂部）…気を引き上げ、めまいや疲れを和らげる
以上のように、頚椎症は一つの原因ではなく、体質によって異なる発症メカニズムを持ちます。
そのため、「どのような体質なのか？」を見極め、それに応じた鍼灸による全身調整と、適切なツボの活用で症状の改善が期待できます。
頚部痛への鍼灸の論文・研究
海外の研究でも首の痛みの鍼灸施術の有効性は確かめられています。
■2006年の報告では、効果的な場所への鍼治療群と効果の見込めない場所への鍼治療群の比較の結果、真の鍼治療群で頚部痛が軽減した。
（『頚部疾患のための鍼治療』Acupuncture for neck disorders,Cochrane Database Syst Rev,2006)
■2001年の報告では鍼＋耳鍼治療群とマッサージ治療群との比較、2004年の報告では効果的な場所への鍼通電療法群と効果の見込めない場所への鍼通電療法群の比較、等の結果として真の鍼治療群の方が頚部痛の改善度が高かった。
あなたの頚椎症が少しでも良くなるように最大限の施術をさせていただきます。
頚椎症鍼灸のよくある質問と回答
Q: 頚椎症って本当に鍼灸で治りますか？
A:はい、鍼灸治療は頚椎症の改善に効果があります。
鍼を用いてコリを直接ほぐし、お灸で温めつつ血行を促進し、全身の自律神経の乱れを緩和し血流を整え、コリや痛みや不快感を軽減します。
西洋医学だけでなく東洋医学(鍼灸)との併用が効果的です。
Q: どのくらいの期間続ける必要がありますか？
A: 症状の程度によりますが、通常は数回から3ヶ月の継続的な治療が目安となります。
個別には初回施術後にお伝えします。
治療の効果や経過に応じて、治療の間隔や内容を調整していきます。
Q: どのくらいの頻度で通う必要がありますか？
A: 症状の程度によりますが、通常は週1回が目安になります。
症状が改善されたら、徐々に間隔を開けていきます。
Q: 鍼灸治療の効果を感じるまでに時間がかかりますか？
A: 効果を感じるまでには個人差がありますが、通常は数回の治療後に改善を実感できることがあります。
Q: 鍼灸が頚椎症にどのように役立つのですか？
A: 鍼灸施術はコリの場所に直接的に刺激してコリと痛みの緩和をはかります。
また自律神経の調整とストレス軽減に効果的で、肩の不快感や痛みを改善するのに役立ちます。
Q: 鍼灸治療の効果は一時的なものですか、それとも長期的なものですか？
A: 鍼灸治療の効果は個人によって異なりますが、一時的な効果だけでなく、長期的な効果も期待されます。
定期的な治療を受けることで持続的な改善につながります。
Q: 頚椎症以外にも鍼灸で治療できる症状はありますか？
A: はい、頭痛、腰痛、不眠、婦人科疾患、冷え、ストレスなど多くの症状に対応しています。
Q: 鍼やお灸は痛いですか？
A: いいえ、極力痛みを感じないよう心地よく施術します。鍼は痛くなく、お灸は心地よい温熱感が特徴です。
Q: 鍼灸治療中に他の治療を受けても大丈夫ですか？
A: 他の治療との併用は個別の状況によります。鍼灸師と相談してください。
Q: 鍼灸の安全性はどうですか？
A: 鍼灸は安全で、国家資格を持つ専門家によって提供されます。感染症のリスクはほとんどありません。
Q: 鍼灸治療の副作用はありますか？
A: 通常、副作用はほとんどありません。治療後に軽い疲労感があることがあります。
Q: 鍼灸の治療は妊娠中でも受けられますか？
A: はい。鍼灸治療は妊娠中でも受けられます。
妊娠中はホルモンのバランスや血液の量が変化するため、コリや痛みが出やすくなります。
鍼灸はこれらの症状を緩和するだけでなく、母体の健康にも良い影響を与えます。
ただし妊娠中に鍼灸を受ける場合は、必ず妊娠の有無や週数をお伝えください。
Q: 鍼灸治療は保険が効きますか？
A: 申し訳ございません。当院の鍼灸施術は実費となります。
Q: どのようにして鍼灸の効果を最大限に引き出すことができますか？
A: 鍼灸治療の成功には生活習慣や食事の改善が重要です。鍼灸師がアドバイスします。
頚椎症でお悩みの方へ院長より
首・肩・腕のコリ・痛み・しびれなど、とてもつらいですよね。
患部だけの問題ではおさまらず全身に影響が及ぶこともあります。
場合によっては著しく生活の質を低下させてしまいます。
頚椎症の治療は、患部の施術だけでは不十分で、血行が改善し、自律神経や運動神経、感覚神経など、循環器系・神経系も含めて全身の状態が整わないと、症状の改善が見られないこともあります。
鍼灸では、
血液循環やリンパ流の促進、自律神経やホルモンバランスの調整といった全身状態の改善に貢献することも知られています。
また家庭や職場で多大なストレスを感じており、それが首の痛みという形で表現される方もいらっしゃいます。
この場合に真に悪いところは「首」ではなく「心」が痛いのです。
まずは患者さんのお話を傾聴させていただき、心の重荷をおろしていただくことが大事だと考えます。
このように、
一見すると我慢できない痛みがあるのは「首や肩や腕」のように見えて、じつはその真の原因は単に首が悪いという単純なものではありません。
心が痛かったり、全身の血流が悪かったり、疲れからエネルギー不足になっていたりと複雑に絡み合った結果、長引く痛みになってしまったのです。
東洋医学ではそのような状態を「全身的な体質の乱れ」と呼びます。
つまり体質を改善することが首や腕のつらさを改善することにつながる、ということです。
西洋医学的な治療だけでなく、東洋医学的な鍼灸もぜひ取り入れて健康な体を目指してみてください。
