陽陵泉穴への鍼刺激はパーキンソン病に関する脳神経を活性化する
陽陵泉穴への鍼刺激はパーキンソン病に関する脳神経を活性化する
我々が活動すること(手足を動かす・食べたものを胃腸で消化するなど)は、すべて脳からの指令で行われています。
この脳からの指令は「神経伝達物質」という物質を介して体の各部分へ伝えられています。
パーキンソン病の患者さんは、脳の中で神経伝達物質のドパミンが不足することで、指令がうまく伝えられなくなっています。
このドパミンは脳(中脳)の「黒質」という部分の神経細胞で作られています。
パーキンソン病の患者さんの脳では、黒質細胞が減り、ドパミンの作られる量が少なくなっているのです。
なぜ黒質の神経細胞が減少するのかは、まだよくは分かっていません。
今回は、鍼灸で使うツボの「陽陵泉」穴を使い、パーキンソン病患者さんの脳神経がどう反応するかを調べた研究を紹介します。
『陽陵泉穴への鍼刺激はパーキンソン病に関する神経を活性化する』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22943145
【概要】
パーキンソン病は、脳にある「黒質」の障害によって引き起こされる。
多くの研究は、陽陵泉GB34の鍼治療が、パーキンソン病患者に有意な改善をもたらすことを報告している。
fMRIで見ると、(健康な者より)パーキンソン病患者は、被殻・視床など広範な脳領域において神経の働きが低いことがわかっている。
この研究では、ツボ(陽陵泉)への鍼治療前後で、パーキンソン病患者の脳神経の働きを調べてみた。
結果。
鍼刺激は、脳の「黒質」「尾状部」「視床」および「被殻」を含む領域における神経の働きを増加させた。
結論。
パーキンソン病に関連する脳神経領域は、陽陵泉穴の鍼刺激によって活性化された。
これは、陽陵泉穴の鍼治療がパーキンソン病の症状改善に有効である可能性があることを示している。
ひいては、パーキンソン病治療に鍼治療は有用であることを示している。
当院の考察
陽陵泉穴に鍼をすると、パーキンソン病関連の脳神経の働きが活性化される、という結果でした。
「陽陵泉」は普段の鍼灸でもよく使われる重要なツボのひとつです。
少し専門的な話になりますが、陽陵泉は「足の少陽胆経」というルート上にあり「合土」穴です。
また八会穴のひとつで「筋会」。足太陽膀胱経の「下合穴」でもあります。
ようするに、いろいろと役職(肩書き)を持ったツボ、ということです。
東洋医学の長い歴史で使われ続けた結果、「重要なツボ」というお墨付きを得ているわけです。
効果が期待できることは以下です。
・コリや痛みなど全般。
・動きに関係すること全般。
・関節の動きが悪い。
・場所的には膝・股関節・肩・側頭部・目等の症状に。
このように「動き」に関して強いツボ=パーキンソン病対策とマッチしてきます。
そのために今回も陽陵泉が研究に使われたのだと思います。
結果は「パーキンソン病に有効(の可能性がある)」ということでした。
ただし、実際の鍼灸施術の際には陽陵泉1穴だけで施術をすることはありません。
鍼灸の良さは「全身のツボを組み合わせて効果・効能を高めること」です。
当院で言う全身治療です。
パーキンソン病といっても、症状の出方も体質もみな違います。
カラダが冷えているか、熱いか、疲れやすいか、コリが強いか、ストレスが強いか…など。
そういった体質的な要素を見定めて「その人に相応しいツボの組み合わせ」にたどり着きます。
たしかにそこに陽陵泉が含まれることは多いですが、チームの一員という感じです。
また、鍼灸施術の回数も大事です。
パーキンソン病という大きな病気に対し、1回2回の鍼灸を受けて大きく改善するものでもありません。
やはりある程度の継続治療が効果につながります。
当院では「週1回の施術を3ヶ月間」を一つのタームとしてお伝えしています。
当然、病院での治療を併用してください。
東洋と西洋の医学をうまく活用して欲しいです。
病院の治療(薬が主でしょう)以外に何かできることはないか、と考えられた際には鍼灸をお勧めいたします。
まずは試してみてください。
お待ちしています。