慢性頭痛の治療に鍼灸を加えるメリット
慢性頭痛の治療に鍼灸を加えるメリット
慢性頭痛への治療は、β遮断薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などの予防薬の組み合わせや、頭痛発作が出た場合はトリプタンや非ステロイド性抗炎症薬などを使って継続的に治療することが必要な場合が少なくありません。
ただし、必ずしもすべての頭痛が薬でコントロールできるわけではありません。
診断が不完全であったり間違っていたりなどの理由で薬物療法が不十分であったり、その他の要因で投薬治療が失敗することもあります。
クスリ以外の治療手段を増やすのは有効と考えられます。
鍼治療は、頭痛を含む多くの「痛みの治療」において長い歴史を有しています。
その有効性は、主に頭痛(とくに片頭痛および緊張型頭痛)において研究されています。
鍼治療は、投薬の必要性を減らし・頭痛を減らすとコリをほぐし・脳内鎮痛物質を増やし・自律神経を整え・ストレスを緩和をもたらすと結論付けられています。
今回は、慢性頭痛に鍼灸が役立つかどうかを調べた研究を紹介します。
『慢性頭痛の補助療法としての鍼治療の有効性』
https://www.jams-kpi.com/article/S2005-2901(17)30061-4/fulltext
【概要】
慢性頭痛治療の補助としての鍼治療の有効性を評価する。
慢性頭痛の34人の患者を『真の鍼治療グループ』と『偽の鍼治療グループ』の2つのグループに分類する。
偽の鍼とは、真の鍼グループと同じツボで、鍼が皮膚には刺さらない細工をした施術。
治療開始から1ヶ月後と2ヶ月後の自覚された頭痛の度合い・頭痛回数・飲んだ鎮痛薬の数・生活の質などで比較した。
結果として真の鍼治療群は(偽の鍼群に比べ)慢性頭痛の改善により効果的であった。
結論。鍼治療は慢性頭痛の程度・使用される鎮痛薬の量・および生活の質を改善するので、慢性頭痛の補助治療に適している。
「施術方法」
真の鍼治療群で使ったツボは、頭痛に適した局所取穴と経絡を使った遠隔取穴を行った。
使用されたツボは、合谷LI4、内庭ST44、外関TE5、足臨泣GB41、太衝LR3、内関PC6、神門HT7、列欠LU7、印堂Yintang、太陽Taiyang、卒谷GB8、陽白GB14、風池GB20などを使用。
施術は得気を感じるような刺鍼で1回当たり25分ていどの施術。
それを週2回(2ヶ月間)で計16回行った。
※論文でのニセの鍼とは(下の写真参照)
台座灸のようなもぐさをツボにセットしそこに鍼をする(=鍼は刺さらない)。
当院の考察
慢性頭痛に対して、鍼灸は効果あるから西洋医学との併用が好ましい、という結果でした。
慢性頭痛に対しては、鎮痛薬や(頭痛のタイプによっては)予防薬などの西洋医学的なクスリの治療が第一選択肢であります。
それでうまくコントロールできればそれでもいいのですが、あまりにも頭痛の頻度が多かったり、薬を飲む回数が多くなったり、薬が効いていないと感じられるようでしたら、鍼灸を試す価値があります。
鍼灸はクスリの効果を妨げることはありません。
また、西洋医学とは別の視点が身体をみています。
たとえば、「カラダ全体が健康になれば頭痛は起きづらくなる」とみて全身のコンディションを底上げしていく施術をします。
冷えやすい人は温かく・疲れやすい人は元気よく・イライラしやすい人は穏やかになるような変化を鍼灸で出し、結果的に頭痛がおさめていくと考えます。
西洋医学の身体の見方とは全然違います。
ただし、慢性頭痛に対しての鍼灸は、やはり1回でどうこうなるものではないです。
論文でも、週2回の施術を2ヶ月行っています。
このように、ある程度の継続施術が効き目になってきます。
以上、東西両方の視点で手当てしていくことで、より早く慢性的な頭痛も改善していきます。
クスリだけでなく、他に何かできることはないかと考えたら、鍼灸を試してみてください。
お待ちしています。