自律神経失調症(虚弱・ノドのつまり)の鍼灸症例
自律神経失調症(虚弱・ノドのつまり)への鍼灸治療
多くの女性が仕事や家庭、人間関係など、さまざまなストレスにさらされ、心身のバランスを崩しがちです。
とくに40代は、更年期に向けた身体の変化も重なり、これまで感じなかった不調を抱える方も少なくありません。
今回は、チョコレート嚢胞という婦人科疾患に加え、虚弱体質、肩こり、のどのつまり、バセドー病といった複数の症状に悩まされていた40代女性の症例です。
この記事を通して、同じような悩みを抱える方々に、鍼灸治療がもたらす可能性を感じていただければ幸いです。
患者さまについて
年齢・性別:
40代女性。
鍼灸院に来るまでの経緯:
2年半前に婦人科検診でチョコレート嚢胞を指摘されましたが、とくに自覚症状がなかったため経過観察となっていました。
しかし、仕事の忙しさから1年ぶりに検査を受けたところ、嚢胞が大きくなっていることが判明し、医師から手術を勧められる状態でした。
手術による卵巣への影響を懸念された彼女は、他にできることはないかと模索する中で、当院の鍼灸治療を選ばれました。
チョコレート嚢胞以外にも、彼女は長年にわたり様々な不調を抱えていました。
5年前からバセドー病を患っており、常に疲労感(ぐったりする)を感じていました。
また、首や肩のこり、のどのつまり感、胃のむかつき、耳管開放症による声のこもりなど、多くの不定愁訴に悩まされていました。
多忙な仕事と複数の疾患が重なり、心身ともに疲弊している状態でした。
東洋医学的考察
東洋医学では、身体は「気・血・水(き・けつ・すい)」という3つの要素で構成されていると考えます。
これらのバランスが崩れることで、様々な不調が現れるとされています。
この患者様の場合、問診や脈診、腹診などの結果から、「脾腎両虚(ひじんりょうきょ)」と「肝気うつ(かんきうつ)」の状態が顕著でした。
「脾腎両虚」とは、消化器系と泌尿生殖器系の機能低下を意味し、全身の倦怠感、食欲不振、冷え、腰痛などを引き起こします。
彼女の常に疲れている状態は、まさにこの脾腎両虚によるものと考えられました。
また、「肝気うつ」は、精神的なストレスや抑うつ状態により、気の流れが滞っている状態を指します。
のどのつまり感や胃のむかつきなどは、この肝気うつが関与していると考えられました。
さらに、虚弱体質が長引いたことで血の巡りも悪くなり、肩こりなどの症状を引き起こしている状態でした。
東洋医学では、このような状態を「瘀血(おけつ)」と呼びます。
治療方針
上記の東洋医学的考察に基づき、治療は以下の点を重視して行いました。
脾腎の機能を補う(補脾腎):
全身のエネルギー不足を改善し、疲労感を軽減します。
肝気の流れをスムーズにする(疏肝理気):
ストレスによる気の滞りを解消し、のどのつまりや胃のむかつきを改善します。
血の巡りを改善する(活血化瘀):
肩こりなどの血行不良による症状を改善します。
治療は、虚弱体質を改善することを最優先とし、身体への負担を考慮して鍼とお灸を組み合わせて行いました。
治療経過
1回目:
仰向けで、「肓兪」「太谿」「足三里」「三陰交」「合谷」に置鍼をしました。「関元」には棒温灸を行いました。
うつ伏せで、「風池」「心兪」「膈兪」「肝兪」「腎兪」に置鍼をし、コリのある場所に円皮鍼を施しました。
初めての治療後、「体が軽くなった」という感想をいただきました。
2回目~8回目(1週間に1回ペース)b:
仕事や気候の変化で体調を崩すこともありましたが、全体的には改善傾向が見られました。
「鍼灸に来るのが楽しみ」という嬉しい言葉もいただきました。
この期間は、1回目の施術を基本としつつ、患者様の状態に合わせて鍼とお灸のバランスを調整しました。
とくに、身体を温め、気を補う効果の高いお灸を積極的に使用しました。
9回目以降:
自覚症状は大幅に改善し、「体調が良い」と仰るようになりました。
当初の目的の一つであったチョコレート嚢胞については、生理痛などの自覚症状がなかったため、体力面や自律神経の調整をメインに行ってきました。
この頃から、以前ほど肩や腰のこりを感じなくなったとのことでした。
現在は、週1回のペースでメンテナンス治療を継続されています。
治療を通して、患者様の表情が明るくなり、以前のような疲労感もほとんど見られなくなりました。
当初はチョコレート嚢胞の改善と並行して妊活も考えていらっしゃいましたが、体調が整ったことで、前向きに妊活に取り組むことができるようになりました。
使用した主なツボとその代表的な効果
治療で使用した主なツボとその代表的な効果は以下の通りです。
肓兪(こうゆ):
脾の働きを助け、消化器系の不調を改善します。
太谿(たいけい):
腎の機能を高め、全身のエネルギーを補います。
足三里(あしさんり):
胃腸の働きを整え、体力を増進します。
三陰交(さんいんこう):
女性特有の症状に効果があり、血行を促進します。
合谷(ごうこく):
気の流れを整え、痛みを緩和します。
関元(かんげん):
全身のエネルギーを高め、免疫力を向上させます。
風池(ふうち):
首や肩のこりを和らげ、頭痛を緩和します。
心兪(しんゆ):
心の安定を促し、精神的なストレスを緩和します。
膈兪(かくゆ):
血行を促進し、消化器系の不調を改善します。
肝兪(かんゆ):
肝の機能を整え、気の流れをスムーズにします。
腎兪(じんゆ):
腎の機能を高め、腰痛や冷えを改善します。
これらのツボに鍼やお灸をすることで、身体の内側からバランスを整え、自然治癒力を高める効果が期待できます。
まとめ
この症例を通して、虚弱体質や自律神経の乱れからの不定愁訴、婦人科疾患など、複数の症状に悩む女性にとって、鍼灸治療が有効な手段であることを改めて実感しました。
とくに、虚弱体質を根本から改善することで、他の症状も自然と改善していくケースが多く見られます。
今回の患者様は、鍼灸治療を通して心身の健康を取り戻し、以前よりも活動的で充実した日々を送られています。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なカウンセリングと施術を心掛けております。
心身の不調でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
皆様の健康と笑顔のために、全力でサポートさせていただきます。
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