めまいと吐き気への鍼灸症例

めまいと吐き気への鍼灸治療

めまい症例1:フワフワ回転性のめまい

現代社会において、めまいや吐き気といった症状に悩まされる方は少なくありません。
とくに、自律神経の乱れからくるこれらの症状は、日常生活に大きな支障をきたし、心身ともにツラいものです。

今回は、長年自律神経失調症に悩まされ、めまいと吐き気に苦しんでいた30代女性の症例です

当院の鍼灸治療を通して、症状の改善だけでなく、心身のバランスを取り戻し、より快適な生活を送れるようになった過程を詳しくご紹介いたします。

この記事を通して、同じような症状でお悩みの方々に、鍼灸治療の可能性と当院の治療に対する理解を深めていただければ幸いです。

患者さまについて

年齢・性別:
30代女性

鍼灸院に来るまでの経緯:
3週間前から始まった「めまい」と「吐き気」を主訴に来院されました。

めまいはフワフワとした回転性のもので、日常生活に支障をきたすほどでした。

詳しくお話を伺うと、小学5年生の頃(11歳)から自律神経失調症と診断されており、めまいも度々経験していたとのことでした。
しかし、ここ10年ほどは比較的症状が落ち着いていたにもかかわらず、急に3週間前からめまいが再発したとのことでした。

病院では「自律神経失調症」と診断され、めまい止め・吐き気止めの薬と漢方薬を処方されていましたが、根本的な改善には至っていませんでした。

その他の症状として、めまいに連動するように首肩のコリが強くなっており、冷えのぼせ、疲れ、便秘といった症状も抱えていました。
生理周期も25日から30日と安定していませんでした。

これらの症状は、単にめまいや吐き気を抑えるだけでなく、根本的な体質改善が必要であることを示唆していました。

東洋医学的考察

東洋医学では、身体のエネルギーである「気」と血液である「血」のバランスが崩れることで様々な症状が現れると考えます。
この患者様の場合、もともとのエネルギー不足(気血両虚)に加え、寒熱のコントロールがうまくできていない状態でした。

この状態が、頭部に熱がこもりめまいを引き起こし、食道から胃部の巡りが逆流して吐き気を引き起こしていると判断しました。

また、自律神経の乱れは、肝(かん)の機能失調と密接に関係していると考えます。
肝は血を貯蔵し、全身に気を巡らせる役割を担っていますが、ストレスや不規則な生活などで肝の機能が低下すると、気の流れが滞り、自律神経のバランスが崩れてしまいます。

この患者様の場合、長年の自律神経失調症の既往歴からも、肝の機能低下が根本的な原因の一つであると考えられました。

治療方針

上記の東洋医学的考察に基づき、当院では以下の治療方針を立てました。

不足している気血を補い、身体の根本的なエネルギーを高めること(滋養作用)。
滞っている気血の巡りを改善し、身体全体のバランスを整えること。
肝の機能を整え、自律神経のバランスを正常に戻すこと。

刺激に敏感なタイプであるため、鍼灸ともにソフトな刺激を心がけ、身体への負担を最小限に抑えながら、効果的な治療を行うことを重視しました。

治療経過

1回目:
仰向けで、「不容(ふよう)」「関元(かんげん)」にお灸を行い、足先にはホットパックで温めました。
「内関(ないかん)(+円皮鍼)」「曲池(きょくち)」「陽陵泉(ようりょうせん)」「太渓(たいけい)」「丘墟(きゅうきょ)」に浅く置鍼をしました。
うつ伏せで、「心兪(しんゆ)」~「腎兪(じんゆ)」のコリのある部位に浅めの軽い鍼を施しました。
「身柱(しんちゅう)」から「筋縮(きんしゅく)」の圧痛点にお灸を行いました。

2回目(1週間後):
ツラさに変化が見られなかったため、「不容」を「中脘(ちゅうかん)」に変更し、「三陰交(さんいんこう)」の鍼を追加しました。
その他の鍼は同様に行いました。

3回目(1週間後):
わずかながら変化の兆しが見られたため、基本的には同様の治療を継続しました。

4回目から10回目(1週間に1回ペース):
めまいや吐き気は多少の波はあるものの、かなり改善していきました。
治療が進むにつれて、今まで目立たなかった腰痛などが気になるようになったとのことでした。

これは、身体全体のバランスが整ってきたことで、今まで隠れていた症状が表面化したと考えられます。

本来はこの状態をより改善もしくは維持するために、2~3週に1回の治療が勧められますが、主訴が落ち着いてきたことを理由に患者様のご希望で一旦治療を終了することとなりました。

使用した主なツボとその代表的な効果

不容(ふよう):
胃の不調や消化不良、食欲不振などに効果があります。

関元(かんげん):
身体の根本的なエネルギーを高め、冷えや生理不順などに効果があります。

中脘(ちゅうかん):
胃腸の働きを整え、消化不良や胃痛などに効果があります。

内関(ないかん):
吐き気や動悸、精神的な不安などに効果があります。

曲池(きょくち):
肩こりや皮膚疾患、便秘などに効果があります。

陽陵泉(ようりょうせん):
筋肉の緊張を緩め、腰痛や坐骨神経痛などに効果があります。

太谿(たいけい):
腎の機能を高め、冷えや足のむくみなどに効果があります。

丘墟(きゅうきょ):
足首の痛みやめまいなどに効果があります。

心兪(しんゆ):
精神的な安定や動悸などに効果があります。

腎兪(じんゆ):
腎の機能を高め、腰痛や冷えなどに効果があります。

身柱(しんちゅう):
体の抵抗力を高め、風邪の予防などに効果があります。

筋縮(きんしゅく):
背中の緊張を緩め、腰痛などに効果があります。

三陰交(さんいんこう):
脾経、肝経、腎経の交会するツボで、女性特有の症状(生理不順、冷えなど)に効果があります。

これらのツボを組み合わせることで、患者様の症状に合わせたオーダーメイドの治療を行うことができました。

まとめ

この症例では、長年自律神経失調症に悩まされていた30代女性に対し、鍼灸治療を行うことで、めまいと吐き気の早期改善が見られました。

その他の愁訴(肩こり・便秘・胃の不快感など)は一進一退でしたが、身体全体のバランスが整うにつれて、徐々に改善していく兆しが見られました。

この経験を通して、鍼灸治療は単に症状を抑えるだけでなく、身体の根本的なバランスを整え、自然治癒力を高める効果があることを改めて認識しました。

当院では、患者様一人ひとりの症状に合わせた丁寧なカウンセリングと東洋医学に基づいた的確な診断を行い、最適な治療を提供しています。
長年の症状でお悩みの方、病院での治療でなかなか改善が見られない方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
皆様の健康を心よりサポートさせていただきます。

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