肩こり・高血圧への鍼灸症例|鎌ケ谷市在住30代女性

肩こり・高血圧への鍼灸症例

肩こり・高血圧への鍼灸症例・写真1

日々の仕事や家事、育児に追われる中で、気づけば慢性的な肩こりや疲労に悩まされている方は少なくありません。

今回は、肩こりだけでなく、高血圧や緑内障などの複合的なお悩みを抱えた方への鍼灸症例です

この症例を通して、鍼灸治療がどのようにこれらの複合的な不調にアプローチし、身体全体のバランスを整えていくのかをご紹介します。

患者さまについて

年齢性別:
30代女性・鎌ケ谷市在住

鍼灸院に来るまでの経緯:
15年以上にもわたり、首から肩にかけての頑固なこりに悩まされていました。
とくに育児が加わった5年ほど前から、そのこりは一層悪化の一途をたどっていたとのことです。

長年の肩こりは、単なる不快感に留まらず、ひどい時には側頭部に強い頭痛を引き起こし、その頻度は週に1回にも及んでいました。
この頭痛は、市販薬に頼ることも多かったそうですが、根本的な解決には至っていませんでした。

さらに、肩こり以外にも複数の気になる症状を抱えていらっしゃいました。

高血圧(来院時:上140/下100mmHg)。
とくに疲労やストレスが蓄積すると血圧が悪化する傾向があり、これが肩こりとも密接に関連していると感じていたとのことでした。
病院では、すぐに降圧剤を服用する必要はないものの、まずは生活習慣の改善を指導されており、ご自身でも何とかしたいと考えていらっしゃいました。

他にも、初期段階の緑内障を指摘されていたり、生理前にはイライラ感が強くなるPMSの症状、朝起きても疲れが取れない慢性的な疲労感、そして常に手足が冷たいといったお悩みもお持ちでした。

これらの症状は、一つ一つは異なるように見えても、患者さまご自身の中では「なんだか体全体の調子が悪い」「どこか根本がおかしいのではないか」という漠然とした不安に繋がっていたようです。

忙しい毎日の中で、これらの不調の何か改善のきっかけになれば、と鍼灸治療を選ばれました。

東洋医学的考察

東洋医学では、人間の身体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素がバランスを取りながら生命活動を維持していると考えます。

このバランスが崩れると、様々な不調が現れると捉えます。今回の患者さまの症例を東洋医学的な視点から詳しく考察してみましょう。

■気滞血瘀(きたいけつお)
最も顕著な症状である長年の肩こりや頭痛、そして疲労やストレスによる高血圧の悪化は、「気滞瘀血(きたいおけつ)」の状態が強く現れていると考えられます。

「気滞」とは、エネルギーである「気」の流れが滞っている状態です。
気が滞ると、身体のあちこちで痛みやこり、張りが生じやすくなります。特にストレスは気の流れを滞らせる最大の要因の一つです。
仕事や育児による精神的な負担は、まさに気の巡りを悪くし、肩や首といった気の滞りやすい場所にこりや痛みを引き起こしていたと推測されます。

「血瘀」とは、「血(けつ)」、つまり血液循環が悪くなっている状態を指します。
気の滞りが長引くと、血の流れも悪くなり、瘀血が生じやすくなります。

瘀血は、特に古くからの痛みや、刺すような痛み、しこりなどを引き起こしやすいとされます。
長年にわたる頑固な肩こりは、まさに瘀血が関与している可能性が高いと考えられます。

また、高血圧も、西洋医学的には様々な原因がありますが、東洋医学的には血の巡りの悪さ、つまり瘀血と関連付けて考えることがあります。

疲労やストレスで血圧が悪化するのは、気の滞りや消耗(気虚)が血の巡りをさらに悪化させていると考えられます。

■気血両虚(きけつりょうきょ)
仕事や家事、育児による肉体的な疲労や、慢性的な不調による消耗から、「気血両虚(きけつりょうきょ)」の状態も併せ持っていると考えられました。

「気虚」は気が不足している状態、「血虚」は血が不足している状態です。
気血が不足すると、身体全体にエネルギーや栄養が行き渡りにくくなり、疲れやすい、だるい、手足が冷えるといった症状が現れます。

慢性的な疲労感や手足の冷えは、この気血両虚の状態を反映していると言えます。

これらの東洋医学的な考察から、この患者さまの身体では、仕事や育児の負担、慢性的な疲労やストレスによって「気の滞り」と「気や血の不足」が複合的に起こり、それが長年の肩こりや頭痛、高血圧、疲労、冷え、PMSといった全身の様々な症状を引き起こしていると考えられました。

単に肩こりの場所だけを治療するのではなく、全身の気血水のバランスを整えることが、根本的な改善には不可欠であると判断しました。

治療方針

東洋医学的な考察に基づき、この患者さまに対する治療方針を以下のように立てました。

■気血の巡りを改善する
身体の気の流れ、特にストレスや疲労によって滞りやすい部分(首、肩、背中、側頭部など)の気の巡りをスムーズにすることで、こりや痛みの緩和、頭痛の改善を目指します。

また、血の巡りを良くすることで、頑固なこりの改善や、高血圧への間接的なアプローチを行います。

■不足している気血を補う
慢性的な疲労や手足の冷え、だるさといった症状は、気血の不足が原因と考えられます。
消化吸収を助け、気血を生み出す働きを高めるツボや、全身に気血を行き渡らせるツボを使用することで、身体の内側からエネルギーと栄養を補い、疲労回復や冷えの改善を図ります。

これにより、体力や抵抗力が高まり、不調が再発しにくい身体づくりを目指します。

■自律神経のバランスを整える
ストレスや疲労は自律神経の乱れを引き起こし、それが様々な不調に繋がります。
とくに気の滞りは自律神経の緊張と関連が深いです。
鍼灸による心地よい刺激は、副交感神経を優位にし、心身のリラックス効果をもたらします。

これにより、気の巡りが改善されやすくなるだけでなく、ストレスによる血圧の上昇を抑えたり、PMSによるイライラ感を和らげたりといった効果も期待できます。

これらの治療方針に基づき、患者さま一人ひとりのその日の体調や症状の変化を丁寧に見極めながら、使用するツボや手技を調整していく「オーダーメイドの治療」を行います。

治療経過

1回目:
うつ伏せにて、長年のコリが強い首から肩、そして肩甲骨の間の部分を中心に鍼を置きました(置鍼)。
これらの部位は、東洋医学的に気の滞りや瘀血が生じやすい場所であり、局所的なこりを緩めることを目的としました。

さらに、硬さの強い部分には、温熱効果のある点灸を加え、滞りを解消する手助けとしました。
また、持続的な刺激を与えるために円皮鍼(皮膚に貼る小さな鍼)も使用しました。

全身の気血の巡りを促し、身体を温める目的で、背中のツボ(神道、至陽など)には棒温灸を使い、じんわりと温めました。

手足の冷えも強かったため、足先にはホットパックを使用し、リラックス効果も高めました。

仰向けになり、全身のバランスを整えるツボを選びました。
合谷(手の甲)、外関(腕)、足三里(膝下)、陽陵泉(膝の外側)といった、気の巡りを良くし、痛みやこりを和らげる効果が期待できるツボに置鍼しました。

また、お腹にある中脘(みぞおちとおへその間)・関元(おへそ下)といった、消化器系や全身の活力を高めるツボには棒温灸を当て、内臓の働きを整え、気血を生み出す力をサポートしました。

2~10回目(週1~2回のペース):
2回目以降も、基本的に初回の治療内容に準じながら、患者さまのその日の症状や身体の状態に合わせて調整を行いました。

とくに首肩のこりに対しては、より深部の筋肉へのアプローチを目的として、パルス鍼(電気刺激を流す鍼)を導入しました。
パルス鍼は、筋肉の緊張を効果的に緩め、血行を促進するのに有効です。

また、背中の特に硬さの目立つツボには、引き続き点灸を追加し、頑固なこりの解消を図りました。

治療のたびに、患者さまからは「鍼を打った後は肩が楽になる」「頭痛の頻度が少し減った気がする」といった変化のご報告をいただくことが増えました。

とくに、施術当日は肩や首の可動域が広がり、軽さを実感していただけているようでした。

疲労感についても、施術を受けた日はいつもより元気でいられるというお声も聞かれました。

約3ヶ月間の施術を継続した結果、劇的な「完治」とまでは至りませんでしたが、毎回施術を受けることで肩こりや頭痛の症状が軽減されることを実感していただけました。

週に1回あった頭痛の頻度も、施術を継続することで減ってきているようでした。

しかし、患者さまの置かれている状況として、仕事と育児という物理的な負担は依然として大きく、どうしても首肩のこりが蓄積しやすい環境にありました。

また、継続的な施術には費用もかかるため、費用対効果を考慮され、いったんここで施術を終了することとなりました。

15年以上という長い期間にわたる慢性的な首肩こりや、複合的な不調の場合、身体の根本的な体質を変化させるには、ある程度の継続的な治療期間が必要となることが多いです。

今回の症例では、継続期間が限定的であったため、完全な体質改善には至りませんでしたが、鍼灸治療によるその場での症状緩和や、身体が良い状態を保てる期間が少しずつでも延びていくといった効果は確かに感じていただけました。

患者さまが継続の意欲を維持できるよう、治療計画や期間についてもっと丁寧にコミュニケーションを取る必要があったと、私たち自身も反省点として捉えています。
しかし、鍼灸の効果自体には納得していただけたことは、今後の治療に活かしていきたいと考えています。

使用した主なツボとその代表的な効果

以下に、特に使用頻度の高かったツボと、その代表的な効果をご紹介します。

合谷(ごうこく)
手の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前にあるツボです。
「万能のツボ」とも呼ばれ、全身の様々な症状に用いられます。
とくに、顔や頭部の症状(頭痛、歯痛、目の疲れなど)や、肩こり、首のこりに効果的です。
気の巡りを良くし、痛みを和らげる作用があります。

外関(がいかん)
前腕の甲側、手首のシワから指3本分上がった、骨と骨の間にあります。
手の少陽三焦経という経絡上のツボで、身体の外側、特に腕や肩の痛みに有効です。
自律神経のバランスを整える効果も期待でき、リラックス効果もあります。

足三里(あしさんり)
膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみから指4本分下がったところにあります。
胃腸の働きを整え、気血を生み出す力を高める代表的なツボです。
「健脚のツボ」としても知られ、全身の疲労回復や気力の充実、免疫力の向上にも関わります。慢性的な疲労感やだるさ、消化器系の不調に有効です。

陽陵泉(ようりょうせん)
膝の外側、腓骨という骨の出っ張りのすぐ前下方にあります。
「筋会(きんえ)」と呼ばれる、全身の筋肉や筋膜に影響を与えるツボです。
首肩のこりや腰痛など、筋肉の緊張による痛みに特に効果的です。
また、胆(たん)の経絡上のツボであり、気の巡りをスムーズにする働きもあります。

太陽(たいよう)
こめかみからやや後ろにあり、押すとズーンと響くような感覚があることの多いツボです。
側頭部の頭痛に直接的にアプローチするツボとして知られ、目の疲れにも効果があります。
この患者さまの側頭部頭痛に対して効果が期待されました。

神道(しんどう)・至陽(しよう)
背中の中心線上にあり、それぞれ心臓や肺に関連するツボです。
棒温灸で温めることで、身体の内側から温め、気血の巡りを促進し、リラックス効果をもたらします。
とくに神道は精神的な落ち着きにも関わるとされます。

中脘(ちゅうかん)・関元(かんげん)
それぞれみぞおちとおへその間、おへそ下にあるお腹のツボです。
胃腸の働きを整え、気血を生み出す力を高めます。特に中脘は胃の不調に、関元は全身の活力を高め、冷えや生理不順といった婦人科系の症状にも用いられます。
棒温灸で温めることで、内臓を温め、体質改善を促します。

これらのツボは、単独で使うのではなく、患者さまのその時の状態に合わせて組み合わせて使用します。

まとめ

この患者さまのケースのように、全身にわたる様々な不調が複雑に絡み合って現れることが少なくありません。
このような複合的な症状に対して、それぞれの症状に個別の薬で対処するだけでなく、身体全体を一つの有機的なものとして捉え、根本的なバランスの乱れを整えていく東洋医学的な鍼灸治療は、非常に有効なアプローチとなり得ます。

約3ヶ月間の施術で、劇的な症状消失とまでは至りませんでしたが、施術の度に肩こりが和らぎ頭痛が減る、身体が楽になるといった変化を実感していただけました

残念ながら、仕事と育児による負担が大きい状況下での継続的な来院が難しく、一旦治療を終了することとなりましたが、鍼灸治療による症状緩和の効果は確かに感じていただけたことは、継続治療の重要性を改めて痛感する症例となりました。

慢性的な症状や複合的なお悩みは、一朝一夕に改善することは難しい場合が多く、ある程度の期間、根気強く治療を続けることが、身体の根本的な変化には重要となります。

もし、あなたが今回の症例と似たような、長年の肩こりや疲労、あるいは複数の身体の不調にお悩みなら、ぜひ一度、東洋医学的な視点からの鍼灸治療を検討してみてはいかがでしょうか。
一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたの健康で快適な毎日を、鍼灸治療を通じてサポートいたします。

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