抗がん剤副作用のしびれに日本式鍼治療が有効という研究

抗がん剤副作用のしびれに日本式鍼治療が有効という研究

抗がん剤とてい鍼・写真1
抗がん剤(化学療法)の種類によっては、副作用として末梢神経障害(手足のしびれ)が起こります。

そのしびれに鍼治療のなかでも「接触鍼」と呼ばれる皮膚に当てるだけの優しい鍼が効果を出したという研究結果をご紹介します。

抗がん剤(化学療法)でしびれがどうして起きるのかは、じつは理由が明らかになっていません。
神経細胞が直接ダメージを受けるから、神経伝達の一部が障害されるから、などの説がありますが、まったくメカニズムのわからないしびれもあります。

具体的な症状は以下のようなものです。
・手足のしびれ
・物がうまくつかめない
・転びやすい
・冷たさに過敏になる

このような症状が出ることで、患者さんの「生活の質」は低下します。
また症状がひどい場合には、抗がん剤治療自体が続けられなくなることもあります。

化学療法副作用のしびれに鍼治療が有効との研究内容

抗がん剤とてい鍼・写真2
中国大陸の鍼は、太くて長く、しっかりした刺激(強い響き感など)を与えることを特徴としているのに対して、伝統的に日本では軽い刺激の鍼灸治療が用いられてきました。
「接触針療法」は伝統的な日本の鍼治療法の1つです。

接触鍼とは、書いて字のごとく、鍼を刺すことなく皮膚に当てるだけの施術法です。
刺さらない先の丸い棒(テイ鍼と呼びます)をツボに当て刺激します。
点状に押されるような感覚です。

『抗がん剤の副作用(末梢性神経障害)に軽い刺激の鍼治療が有効』

【目的と経緯】
しびれへの「接触鍼療法」は経験的に有効と考えられてきたが、客観的な評価は困難であった。
そこでこの研究では、患者の自主的な症状スコア以外に「酸素飽和度」に焦点を当てた。
皮膚の酸素飽和度は、組織がどの程度ダメージを受けているのかや血流状態を反映するからである。
4人の末梢神経障害のある患者を接触鍼で治療した。
その際に、右足先端の酸素飽和度とヘモグロビン濃度を測定した。

【結果】
接触鍼治療後のヘモグロビン濃度は、ニセ接触鍼治療をした患者より有意に改善された。
酸素飽和度も改善した。
接触鍼治療は、末梢神経障害の安全かつ効果的な代替治療法と考えられる。

当院の考察

抗がん剤とてい鍼・写真3
抗がん剤の副作用のしびれに、鍼灸が有効だというのは、今までも様々な研究でも言われてきました。
ただ今回は、その鍼灸の中でも「接触鍼」の効果についてだったので、これは珍しいです。

論文でも書かれている通り、軽い刺激(皮膚に当てる程度)での効果を客観的に測るのが難しいからです。
(今回は皮膚の酸素飽和度をその指標にしたことで効果を測れたわけですが、具体的にはどのような施術だったのかはよくわかりませんね。)

少なくとも「軽い刺激で効果が出ると分かった」のは、日本式鍼灸師として嬉しいですし、実際に施術を受けられる患者さんにとっても良い報告でしょう。

鍼灸がしびれに効果的なのは、血流を良くする作用のためです。
それはある程度しっかり刺激をしても、軽い刺激でも引き起こせます。

ただし、全身からアプローチしていく必要があります。
手先足先「だけ」の血流が悪いのではなく、全身の血流の悪化がある為に、一番血流が弱くなる手先足先に起こっているとみることです。

そう考えての全身的な鍼灸が最適です。
お腹や背中にも血流促進のためのツボがあります。

この辺はその人の体質に関わってくる判断ですので、鍼灸師におまかせください。
しびれに鍼灸はおススメです。

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